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後日談③
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「な………外にいた私の私兵達はなにをしているのだ!!」
動揺しているオルガル宰相とは対照的にマリアンヌは落ち着いた様子で語る
「ルナ様のご命令により…貴方の私兵は全て…外で気絶して頂いています、そのぽってりとした身体の割に几帳面に大勢配置していたせいで時間がかかってしまいましたが」
「な、全員だと!?何人いたと思っている!?」
「もう今のあなたには関係ないでしょうね」
「!?」
目にも止まらない速さで間合いを詰めたマリアンヌは冷たい表情でオルガルに脚をかける
すっころぶ彼に向けて剣を首元に当てた
「その薄汚い瞳、二度とルナ様に見せたくなかった」
そう言ってオルガルの短剣さえも奪い取り、二本の剣をオルガルの両腕に突き刺す
剣は易々と腕を貫通して骨を砕き、床に突き刺さる
オルガルの声にならない悲鳴と、血が流れ、飛び散る
深々と突き刺さる剣はもう自力で取ることはできないだろう
「お前は…私の主君に剣を向けた事を後悔しろ」
マリアンヌはそう言って腰に差したもう一本の剣を抜き取り
目に見えない速度で振り抜いた
一閃、横薙ぎに払われた剣はオルガル宰相の両目を切り裂いた
「がぁぁぁぁぁぁ!!!!!が、だ、だれがぁぁぁ!!!」
「もう二度と、ルナ様にその目を向けるな……その下品な口も裂いてやる…」
マリアンヌは再び剣を構えたが
「マリアンヌ!もう充分です!」
私の声でマリアンヌの動きはピタリと止まり
剣を鞘に戻した
「申し訳ありません、ルナ様…つい感情的に…」
「いえ、あなたは本当によくやってくれました、ですが……彼を裁くのは私達ではありません、この国で罰を受けるべきなのです」
マリアンヌはニコリと私に向けて笑みを見せた
そこには先ほどまでの怖さはもうない
「ルナ様は本当に優しいお方です。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
こうして、騒ぎを聞きつけた貴族達によってこの場は収まった
衰弱していたクラティア王はすぐさま国一番の医者によって治療を行われた
だが毒に身体を蝕まれた王はこの先長くはないと医者の方は言っていた
回復するかどうかも分からないのだ
クラティア王は衰弱しながらも事情を説明してくれたようで
オルガル・モアネス宰相はその場で拘束
マリアンヌが刺した剣は男性が五人がかりでようやく抜いていた
その間、宰相は地獄のような痛みを味わっただろう…
宰相の私兵達も次々と拘束されていった
後悔しても罪は消えない、彼らは然るべき罰を受けるだろう
それを私達が口出しするわけにはいかない
私達は豪華な客室で数日過ごす事となった
「しかし、ルナ…君には驚かされたよ、まさか君のメイドのマリアンヌがあのような手練れな方とは」
「ええ、私も知っていましたがまさかここまでとは…」
「おほめに頂き光栄です、オスカー様…ルナ様」
「マリアンヌ…いやマリアンヌさん、良ければ俺に剣の稽古を付けてくださいませんか」
「残念ですがオスカー様、それはお断りいたします」
マリアンヌは丁寧に断った
普段は断ることなどないはずなのに、私は不思議に思い聞いた
「何か理由があるのマリアンヌ?」
「ええ、本来ならオスカー様やルナ様は危険な場所に立つべきではなかった…あなた達の手は武器を握るためにあるのではなく、民を導き、人々を繋ぐ手です」
「マリアンヌ…」
「武器を握るのは私達の役目です、ルナ様もおっしゃていました…信念を持ち、あなた達を守って見せます…もう二度と剣を握ることのない世界をお二人なら作ってくださると信じておりますので」
オスカー様はその言葉を聞いて立ち上がる
「君の言う通りだ、きっと平和な世にして見せる」
オスカー様の瞳に決意が満ちた
そして私にも、それが王の役目であると思いだしたからだ
「君たちなら…それも夢ではないのだろうな…」
しわがれた声が聞こえ、客室の扉が開いた
そこには杖をついたクラティア王がいた、よろよろと歩いてくる姿をみて私は駆け出して歩行の補助を行った
「クラティア王!わざわざ出向いてくださらなくてもこちらから!」
「よい、よい…ワシが無理言ってきたんじゃ…ははは」
クラティア王が椅子に腰掛けると補助していた私を見つめる
「ルナ王妃、おぬしにはワシの王としての信念を思い出させてもらった…あの時兵士達を止めた声、かつてワシに檄を飛ばしていた亡き妻にそっくりであったわ…信念か…諦めていた気持ちをあの言葉で振るい立たせてもらったよ、ありがとう」
「クラティア王、私にはすぎたお言葉です!」
「いやいや…年長者の言葉は素直に受け取りなさい…ははは」
クラティア王は次にマリアンヌを見る
「マリアンヌ、かつてのギリシア王国の王宮直属近衛騎士出会ったお主は、若くして前線を離れ…メイドとなったと聞いていたが…やはりルナ王妃のメイドであったか」
「はい、今はメイドにてお世話になっております。」
「では、マリアンヌよ、そなたはギリシア王国の騎士団に戻るのだ」
「!…………理由をお聞きしても?」
「王と王妃を守る剣は必要である、だがそれと同時に民を守る剣もまた必要だ、一人では不可能だ…騎士団に戻り剣を育てよ、その剣は民を守り王と王妃を守る事にも繋がる…民を守り国を守る剣があれば、王と王妃が敵国に出向くことはなかった…そうであろう?」
「そ、その通り…です」
芯を突いた言葉にマリアンヌも納得していた
そして最後にクラティア王はオスカー様に目を向けた
「オスカー王よ、偉そうな事を言ったが今回の出来事はワシの責任だ、謝罪をさせてほしい」
クラティア王は頭を下げた
「そんな!クラティア王!あなたはオルガル宰相に騙されただけで!」
「いや、人を見る目も王には必要だ、奴は優秀ではあったがその野心を見抜けなかった…ワシの責任だ、当然ではあるが宣戦布告は取り消す」
クラティア王は言葉を続けた
「こんな事を言える立場ではないが、君たちの剣を握らなくて済む世界…その夢にわしも参加させてくれんか?」
「それは、どういったように?」
「このクラティア国とギリシア国で同盟を結んでくれないだろうか、お互いに協力し、平和な世を実現しよう」
「クラティア王、私も…あなたから学ぶ事は多くあります、王として、同じ世を目指す同志として同盟を結んで頂きたい」
二人は固い握手を行った
共に進む同志として
「オスカー様!!やりました!!」
「ル、ルナ!クラティア王もいるのだし、ここで抱きつくのは」
「!…すいません…」
思わず嬉しくてオスカー様に抱きついてしまった
クラティア王は豪快に笑う
「よいよい!!ワシの妻もそのように元気であった、それに王と王妃には子が必要だ!」
「子…!?」
「…///…」
オスカー様と私は顔を真っ赤にしてしまう
クラティア王は意外そうな顔で話す
「お主達………まさか夜伽はまだしていないのか?」
「………」
「………」
「…ワシの死ぬまでに子を見られるかの………」
そう言って豪快に笑うクラティア王と
顔を真っ赤に染めるオスカー様と私
そして澄ました顔ではあるが騎士となる決意をしたマリアンヌ
和やかな雰囲気で同盟は結ばれた
ギリシア王国とクラティア王国の同盟は各国に衝撃を与えた
軍国主義とも言われたクラティア王国に王と王妃が向かい同盟を結んだのだ
ギリシア王の敏腕によるものと言われているが、王妃とその従者も大きく関わっていると知る者も少なくはなかった
この同盟をきっかけにより各国から次々と同盟の申し出を受けた
平和を目指した国々は繋がっていく事となる
クラティア王は同盟を結んだ数年後に亡くなってしまった
しかしこれは奇跡であったのだ、オルガル宰相の毒によって寿命は半年もないと言われたが
クラティア王は最後まで立ち続けて国と同盟を導いた
そして彼は最後にギリシア王国に生まれた、オスカー王とルナ王妃の子供を見て
笑顔でこの世を去ったという
平和な世を信じて
そして物語は
オスカー王とルナ王妃の間に第一子である
ウィリアム王子が生まれて6年後の物語へ
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「ルナ様のご命令により…貴方の私兵は全て…外で気絶して頂いています、そのぽってりとした身体の割に几帳面に大勢配置していたせいで時間がかかってしまいましたが」
「な、全員だと!?何人いたと思っている!?」
「もう今のあなたには関係ないでしょうね」
「!?」
目にも止まらない速さで間合いを詰めたマリアンヌは冷たい表情でオルガルに脚をかける
すっころぶ彼に向けて剣を首元に当てた
「その薄汚い瞳、二度とルナ様に見せたくなかった」
そう言ってオルガルの短剣さえも奪い取り、二本の剣をオルガルの両腕に突き刺す
剣は易々と腕を貫通して骨を砕き、床に突き刺さる
オルガルの声にならない悲鳴と、血が流れ、飛び散る
深々と突き刺さる剣はもう自力で取ることはできないだろう
「お前は…私の主君に剣を向けた事を後悔しろ」
マリアンヌはそう言って腰に差したもう一本の剣を抜き取り
目に見えない速度で振り抜いた
一閃、横薙ぎに払われた剣はオルガル宰相の両目を切り裂いた
「がぁぁぁぁぁぁ!!!!!が、だ、だれがぁぁぁ!!!」
「もう二度と、ルナ様にその目を向けるな……その下品な口も裂いてやる…」
マリアンヌは再び剣を構えたが
「マリアンヌ!もう充分です!」
私の声でマリアンヌの動きはピタリと止まり
剣を鞘に戻した
「申し訳ありません、ルナ様…つい感情的に…」
「いえ、あなたは本当によくやってくれました、ですが……彼を裁くのは私達ではありません、この国で罰を受けるべきなのです」
マリアンヌはニコリと私に向けて笑みを見せた
そこには先ほどまでの怖さはもうない
「ルナ様は本当に優しいお方です。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
こうして、騒ぎを聞きつけた貴族達によってこの場は収まった
衰弱していたクラティア王はすぐさま国一番の医者によって治療を行われた
だが毒に身体を蝕まれた王はこの先長くはないと医者の方は言っていた
回復するかどうかも分からないのだ
クラティア王は衰弱しながらも事情を説明してくれたようで
オルガル・モアネス宰相はその場で拘束
マリアンヌが刺した剣は男性が五人がかりでようやく抜いていた
その間、宰相は地獄のような痛みを味わっただろう…
宰相の私兵達も次々と拘束されていった
後悔しても罪は消えない、彼らは然るべき罰を受けるだろう
それを私達が口出しするわけにはいかない
私達は豪華な客室で数日過ごす事となった
「しかし、ルナ…君には驚かされたよ、まさか君のメイドのマリアンヌがあのような手練れな方とは」
「ええ、私も知っていましたがまさかここまでとは…」
「おほめに頂き光栄です、オスカー様…ルナ様」
「マリアンヌ…いやマリアンヌさん、良ければ俺に剣の稽古を付けてくださいませんか」
「残念ですがオスカー様、それはお断りいたします」
マリアンヌは丁寧に断った
普段は断ることなどないはずなのに、私は不思議に思い聞いた
「何か理由があるのマリアンヌ?」
「ええ、本来ならオスカー様やルナ様は危険な場所に立つべきではなかった…あなた達の手は武器を握るためにあるのではなく、民を導き、人々を繋ぐ手です」
「マリアンヌ…」
「武器を握るのは私達の役目です、ルナ様もおっしゃていました…信念を持ち、あなた達を守って見せます…もう二度と剣を握ることのない世界をお二人なら作ってくださると信じておりますので」
オスカー様はその言葉を聞いて立ち上がる
「君の言う通りだ、きっと平和な世にして見せる」
オスカー様の瞳に決意が満ちた
そして私にも、それが王の役目であると思いだしたからだ
「君たちなら…それも夢ではないのだろうな…」
しわがれた声が聞こえ、客室の扉が開いた
そこには杖をついたクラティア王がいた、よろよろと歩いてくる姿をみて私は駆け出して歩行の補助を行った
「クラティア王!わざわざ出向いてくださらなくてもこちらから!」
「よい、よい…ワシが無理言ってきたんじゃ…ははは」
クラティア王が椅子に腰掛けると補助していた私を見つめる
「ルナ王妃、おぬしにはワシの王としての信念を思い出させてもらった…あの時兵士達を止めた声、かつてワシに檄を飛ばしていた亡き妻にそっくりであったわ…信念か…諦めていた気持ちをあの言葉で振るい立たせてもらったよ、ありがとう」
「クラティア王、私にはすぎたお言葉です!」
「いやいや…年長者の言葉は素直に受け取りなさい…ははは」
クラティア王は次にマリアンヌを見る
「マリアンヌ、かつてのギリシア王国の王宮直属近衛騎士出会ったお主は、若くして前線を離れ…メイドとなったと聞いていたが…やはりルナ王妃のメイドであったか」
「はい、今はメイドにてお世話になっております。」
「では、マリアンヌよ、そなたはギリシア王国の騎士団に戻るのだ」
「!…………理由をお聞きしても?」
「王と王妃を守る剣は必要である、だがそれと同時に民を守る剣もまた必要だ、一人では不可能だ…騎士団に戻り剣を育てよ、その剣は民を守り王と王妃を守る事にも繋がる…民を守り国を守る剣があれば、王と王妃が敵国に出向くことはなかった…そうであろう?」
「そ、その通り…です」
芯を突いた言葉にマリアンヌも納得していた
そして最後にクラティア王はオスカー様に目を向けた
「オスカー王よ、偉そうな事を言ったが今回の出来事はワシの責任だ、謝罪をさせてほしい」
クラティア王は頭を下げた
「そんな!クラティア王!あなたはオルガル宰相に騙されただけで!」
「いや、人を見る目も王には必要だ、奴は優秀ではあったがその野心を見抜けなかった…ワシの責任だ、当然ではあるが宣戦布告は取り消す」
クラティア王は言葉を続けた
「こんな事を言える立場ではないが、君たちの剣を握らなくて済む世界…その夢にわしも参加させてくれんか?」
「それは、どういったように?」
「このクラティア国とギリシア国で同盟を結んでくれないだろうか、お互いに協力し、平和な世を実現しよう」
「クラティア王、私も…あなたから学ぶ事は多くあります、王として、同じ世を目指す同志として同盟を結んで頂きたい」
二人は固い握手を行った
共に進む同志として
「オスカー様!!やりました!!」
「ル、ルナ!クラティア王もいるのだし、ここで抱きつくのは」
「!…すいません…」
思わず嬉しくてオスカー様に抱きついてしまった
クラティア王は豪快に笑う
「よいよい!!ワシの妻もそのように元気であった、それに王と王妃には子が必要だ!」
「子…!?」
「…///…」
オスカー様と私は顔を真っ赤にしてしまう
クラティア王は意外そうな顔で話す
「お主達………まさか夜伽はまだしていないのか?」
「………」
「………」
「…ワシの死ぬまでに子を見られるかの………」
そう言って豪快に笑うクラティア王と
顔を真っ赤に染めるオスカー様と私
そして澄ました顔ではあるが騎士となる決意をしたマリアンヌ
和やかな雰囲気で同盟は結ばれた
ギリシア王国とクラティア王国の同盟は各国に衝撃を与えた
軍国主義とも言われたクラティア王国に王と王妃が向かい同盟を結んだのだ
ギリシア王の敏腕によるものと言われているが、王妃とその従者も大きく関わっていると知る者も少なくはなかった
この同盟をきっかけにより各国から次々と同盟の申し出を受けた
平和を目指した国々は繋がっていく事となる
クラティア王は同盟を結んだ数年後に亡くなってしまった
しかしこれは奇跡であったのだ、オルガル宰相の毒によって寿命は半年もないと言われたが
クラティア王は最後まで立ち続けて国と同盟を導いた
そして彼は最後にギリシア王国に生まれた、オスカー王とルナ王妃の子供を見て
笑顔でこの世を去ったという
平和な世を信じて
そして物語は
オスカー王とルナ王妃の間に第一子である
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