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第三十話 迷える子羊(野宮 清子)
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あー。外の世界は楽しいわ。
清子ってば、やーっと全部を私にくれた。
清子の誘拐の為をする練習で捕まえた三人も警察に助けられたみたい。
死んでもよかったけれど、USBがちゃんとあの人の家に届いたのね。
ふふふ。
幽霊が見えるお嬢様。
いいわよねぇ。全部勝ち組で。
でも、今回は私の勝ち。
だって、私は自由だもの。
前にインターネットで幽霊が見えるお嬢様の情報について知ってまさかと思ったけれど、本当みたいね。だって、私の家までくるんだもの。
ふふ。
お母さんに協力してもらって、やっと清子をこの体から追い出すことが出来たわ。
良かった。
そうだ。今日は何を食べようかしら。
ふふ。今まで好き勝手出来なかった分、今日からは好き勝手に生きてやるわ。
「みーつーけた。」
「え?」
振り返ると、小さな少女が目の前にいた。
いつか、どこかで見たことのある少女に、背筋が寒くなる。
「お姉ちゃんの体、どこに持っていくの?」
「な、な、な。なんで?」
少女はにこにこと笑っていた。
「清子ちゃんが探しているの。返してあげて。」
「い、、いや!」
必死に走り、路地を曲がり、そして交差点に差し掛かり足を止める。
ここは。
「あら、ごきげんよう。清子さん。いえ、倫子さんもどき、かしら?」
その声に、びくりと肩を震わせて振り返ると、そこには冷たい笑みを携えた桜子が立っていた。
「あ、あんた、なんで。」
「ふふ。貴方を見つける事なんて、簡単ですよ。それで、倫子さんもどきは、どこへ行くのかしら?」
「もどきって、、、私は倫子よ!」
「え?違うよ。だって倫子はここにいるもの。」
そう言って桜子の横に現れたのは、少女でありその横に学が立っている。
「倫子さんはここにいますよ。なら、貴方は、誰なのかしら?」
その言葉に体が震えた。
どうして分かった?
どうして見つかった。
くそくそくそくそ。
「貴方は、一体誰なの?」
桜子が尋ねると、その女はにやりと笑った。
「何言っているの?私は、清子よ。この体は私の物。だって、あの女私を自由にしてくれないんだもの!私だって自由に動きたいわ!」
その言葉に桜子は眉間にしわを寄せると言った。
「貴方はもう一人の清子さんって事かしら?」
「そうね。二重人格っていうやつよ。」
桜子は額を抑えると、どうしたものかと考え出した。
「ねぇ、清子さんは今ここにいるのよ。二重人格だとして、もっと穏便には出来ないかしら?」
「え?」
「だって、どうせ貴方このままだと誘拐・監禁容疑で捕まって終わりよ。また、どうせ閉じ込められる日々だわ。一人で閉じ込められたい?」
「え?一人で、、、。」
「そう。もう一度清子さんと話をしてみて。それで決めたらどう?」
「清子と?」
「ええ。どうする?」
やっと自由になれたと思ったのに。
また檻の中。
一人。
「一人は、、、嫌だわ。でも、、、」
「清子さんも貴方と話がしたいって。ね?」
「、、、分かった。」
静かに清子が目を閉じ、そして気を失うようにして倒れてしまった。
「大丈夫ですか?」
学が抱き起すが、清子は眠っているようであった。
「今、話でもしているんじゃないかしら。それにしても、こんな事初めてで驚いたわ。」
「そう、ですねぇ。取りあえず、清子さんは警察に連れて行きます。それで、その倫子ちゃんは?」
すると倫子と呼ばれた少女は学を見てにっこりと笑うと、ウィッグを取り、そして桜子に言った。
「桜子お嬢様、私はこれで失礼してもよろしいですか?」
「ええ。英玲奈ちゃん。今日は協力ありがとう。」
「いいえ。では、失礼いたします。」
「え?え?英玲奈?え?」
学が動揺すると、桜子はにっこりと笑って言った。
「あぁ、あの子は英玲奈ちゃん。良の孫です。時々協力してくれるの。」
「うわぁお。倫子ちゃんだって信じたのに。くっそぉ。騙された。」
「ふふ。はぁ。疲れたわね。さぁ、屋敷に戻ってお茶でも飲みましょう。」
「自分は清子さんを署へ連れて行きますね。」
「ええ。では、またね。」
桜子はこんな事件初めてであり、大きく息を吐いた。
清子ってば、やーっと全部を私にくれた。
清子の誘拐の為をする練習で捕まえた三人も警察に助けられたみたい。
死んでもよかったけれど、USBがちゃんとあの人の家に届いたのね。
ふふふ。
幽霊が見えるお嬢様。
いいわよねぇ。全部勝ち組で。
でも、今回は私の勝ち。
だって、私は自由だもの。
前にインターネットで幽霊が見えるお嬢様の情報について知ってまさかと思ったけれど、本当みたいね。だって、私の家までくるんだもの。
ふふ。
お母さんに協力してもらって、やっと清子をこの体から追い出すことが出来たわ。
良かった。
そうだ。今日は何を食べようかしら。
ふふ。今まで好き勝手出来なかった分、今日からは好き勝手に生きてやるわ。
「みーつーけた。」
「え?」
振り返ると、小さな少女が目の前にいた。
いつか、どこかで見たことのある少女に、背筋が寒くなる。
「お姉ちゃんの体、どこに持っていくの?」
「な、な、な。なんで?」
少女はにこにこと笑っていた。
「清子ちゃんが探しているの。返してあげて。」
「い、、いや!」
必死に走り、路地を曲がり、そして交差点に差し掛かり足を止める。
ここは。
「あら、ごきげんよう。清子さん。いえ、倫子さんもどき、かしら?」
その声に、びくりと肩を震わせて振り返ると、そこには冷たい笑みを携えた桜子が立っていた。
「あ、あんた、なんで。」
「ふふ。貴方を見つける事なんて、簡単ですよ。それで、倫子さんもどきは、どこへ行くのかしら?」
「もどきって、、、私は倫子よ!」
「え?違うよ。だって倫子はここにいるもの。」
そう言って桜子の横に現れたのは、少女でありその横に学が立っている。
「倫子さんはここにいますよ。なら、貴方は、誰なのかしら?」
その言葉に体が震えた。
どうして分かった?
どうして見つかった。
くそくそくそくそ。
「貴方は、一体誰なの?」
桜子が尋ねると、その女はにやりと笑った。
「何言っているの?私は、清子よ。この体は私の物。だって、あの女私を自由にしてくれないんだもの!私だって自由に動きたいわ!」
その言葉に桜子は眉間にしわを寄せると言った。
「貴方はもう一人の清子さんって事かしら?」
「そうね。二重人格っていうやつよ。」
桜子は額を抑えると、どうしたものかと考え出した。
「ねぇ、清子さんは今ここにいるのよ。二重人格だとして、もっと穏便には出来ないかしら?」
「え?」
「だって、どうせ貴方このままだと誘拐・監禁容疑で捕まって終わりよ。また、どうせ閉じ込められる日々だわ。一人で閉じ込められたい?」
「え?一人で、、、。」
「そう。もう一度清子さんと話をしてみて。それで決めたらどう?」
「清子と?」
「ええ。どうする?」
やっと自由になれたと思ったのに。
また檻の中。
一人。
「一人は、、、嫌だわ。でも、、、」
「清子さんも貴方と話がしたいって。ね?」
「、、、分かった。」
静かに清子が目を閉じ、そして気を失うようにして倒れてしまった。
「大丈夫ですか?」
学が抱き起すが、清子は眠っているようであった。
「今、話でもしているんじゃないかしら。それにしても、こんな事初めてで驚いたわ。」
「そう、ですねぇ。取りあえず、清子さんは警察に連れて行きます。それで、その倫子ちゃんは?」
すると倫子と呼ばれた少女は学を見てにっこりと笑うと、ウィッグを取り、そして桜子に言った。
「桜子お嬢様、私はこれで失礼してもよろしいですか?」
「ええ。英玲奈ちゃん。今日は協力ありがとう。」
「いいえ。では、失礼いたします。」
「え?え?英玲奈?え?」
学が動揺すると、桜子はにっこりと笑って言った。
「あぁ、あの子は英玲奈ちゃん。良の孫です。時々協力してくれるの。」
「うわぁお。倫子ちゃんだって信じたのに。くっそぉ。騙された。」
「ふふ。はぁ。疲れたわね。さぁ、屋敷に戻ってお茶でも飲みましょう。」
「自分は清子さんを署へ連れて行きますね。」
「ええ。では、またね。」
桜子はこんな事件初めてであり、大きく息を吐いた。
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