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第十四話 父親の恐怖の夜

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「路子。おい!路子!っくそ。、、、連れて行かれたんだったか?あー。くそ。殺しておけば良かった。」

 路子と結婚した時、勇太がついて来てはっきり言えば邪魔だった。

 だが、最初は路子がいない時に殴って泣きわめく姿をまた殴るのが、凄くすっきりとして、躾っていう使い勝手のいい言葉でその行為を続けた。

 路子にバレて、泣いてやめてと懇願された夜、路子も一緒に殴ると、またすっきりとした。

 あー。

 いい。

 俺は働いて稼いで、お前たちに飯を食わして、屋根のある所で生活させてやっているんだ。

 俺にこのくらい見返りをくれてもいいだろう?

 俺はお前たちの為に働いてるんだから、俺の事をお前たちも満足させろ。

 路子が妊娠して殴れなくなった時は、精神的に路子を躾けてやった。

 俺がいなきゃお前は生きていけない。

 逃げられない。

 逃げれば勇太を殺す。お前も腹の子も殺す。

 家の中は俺の理想郷だった。

 こいつらは俺がいなきゃ生きられないクズだから、俺の物だからどんな事をしてもいい。

 路子が出産して娘を抱いた時は流石に感動した。

 俺の奴隷がまた増えたんだから喜ばしい事だろう。だが、血がつながっているからか可愛く見えた。

 そうだよ。

 子どもは可愛くなくちゃな。

 勇太は可愛くない。

 だから、勇太だけを殴って二人には見せつけて躾をしてやる。

 お前らが悪い事をすれば勇太を殴る。

 そう言うだけで従うんだから可愛いなぁ。


「クソ!俺の理想郷を壊しやがって。」

 その時、背筋が寒くなり振り返ると、窓が空いていた。

 立ち上がるのも面倒くさいが、仕方がないと重たい体を持ち上げて窓を閉める。

 そしてまた座ろうとすると、押入れのに少しの隙間が出来ている事に気が付いた。

 そこに、何かが見える。

「なんだ?」

 眉間にシワを寄せて、その隙間を見つめると、そこに光る眼が見えた。

 そして、それは数を増やしていく。

「っヒィ!」

 思わず尻もちをつくと、なにかに足を掴まれて引きずられる。

「な、、な、な、な、やめ!」

 押入れの中に引きずり込まれ、出ようと襖を引っ張るが、開かない。

 暗闇の中で恐怖が広がっていく。

 異臭がして思わず吐きそうになるがそれを堪えると、襖を開けようと何度も引っ掻いた。

「クソクソクソクソ!」

 その時、襖が何かに勢いよく蹴られる音がした。

「ひぃ!な、、なんだ。誰かいるのか?」

『真っ暗って、、、怖いでしょ?』

 耳元で声が聞こえて、鳥肌が立った。

「え?え?え?ゆ、、勇太?」

 何故かそう呟いてしまった。

『お父さん。暗いの、怖いでしょ?』

「な、何言ってんだ。怖くなんて。」

 ダンッ!

「ひぃ!」

 襖が、連続的に何かに蹴られる。

 ダンドンダンドンダンダンダンダンッ!

「や、、やめ、、」

『僕も何度も、お願いしたよ。』

「たの、、む、、許して。」

『僕も何度も、許してって言ったよ。』

 耳素で囁かれる肥に、耳を何度も自分の指で引っ掻いた。

 血が出ているのが分かるがヤメラレナイ。

 断続的に襖は蹴られ続ける。

 襖を開けようとして爪が剥がれてしまい、うまく掴めない。

 その時、音がやんだ。

 目を開けると、床いっぱいに眼があった。

『怖いでしょ?』

「やぁぁぉぉぁぁあぁぁぉぁぁぉ!!!」



 桜子はにこりと微笑みを浮かべると実行部隊に言った。

「何日間もつかしら?極限まで頑張ってもらいましょう。」

 ほら、罪は自分のみを持って償わないとね?
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