【完結】婚約破棄され処刑された私は人生をやり直す ~女狐に騙される男共を強制的に矯正してやる~

かのん

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十九話 メリーの狂気

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「なんで!? なんで信じてくれないのよ!」

 突然メリーは苛立ったように叫び始めると、近くにおいてあった料理や飲み物のグラスを次々に床に向かって投げつけた。

 そして、唇を噛みシャルロッテを睨みつけると割れたワイングラスを拾い上げ、握りしめた。

「私はヒロインなのよ? 悪役令嬢が何をでしゃばってるのよ」

 シャルロッテの前にいたオリバーらルークと目くばせをしてうなずき合うと、もう一歩前へと歩みでた。

  メリーはにやりと笑みを浮かべると言った。

「ふふ、ははは! ばっかみたい。あんたたちなんか私に惚れるしかないキャラクターのくせに!」

 その言葉に、シャルロッテは小首をかしげた。

「どういうことです?」

 メリーは声を荒げる。

「この世界は私のための世界なのよ! ルークもオリバーもグレイもリラトも、全て私に惚れるキャラクターにすぎないのよ! そしてあんたは悪役令嬢! 断罪されて、処刑される運命なのよ!」

 息継ぎもなくそこまで言い切ったメリーの言葉に、何を言っているのだと会場内はざわめく。

 シャルロッテはそんな中、静かに考えると、メリーの前へと進み出た。

「あなたが、ヒロインで、私が悪役令嬢?」

「えぇそうよ! 四人は全員私のものなのよ!」

 その言葉にシャルロッテは眉間にしわを寄せるとメリーに尋ねた。

「四人の男性をどうやって自分のものにするのです? しかも、ルーク様は王子ですよ? もしも、仮にもしもあなたが妃になったとしたら、オリバー様やお兄様、リラト様には会えなくなると思いますが……」

「なっ!? 理屈なんてどうでもいいのよ! ハーレムルートなら、四人は私のものなのよ!」

「ハーレムって……あなた……貞操観念どうなっていらっしゃるの?」

「て、貞操観念?」

 そこになってメリーは動きを止めると、顔を真っ赤にして怒鳴り声をあげた。

「あなた、ふしだらね!」

「いえ、あなたのことなのだけれど……」

 シャルロッテはメリーを見つめながら内心大きくため息をついた。

 これまでの間、メリーはあの手この手を使ってシャルロッテを陥れようとしてきた。そして、シャルロッテが得た情報によれば、自作自演を偽って、男たちを雇い誘拐まがいのことをさせ、そしてシャルロッテに罪を着せるためにこうして目の前に、哀れな姿で現れた。

 しかし、シャルロッテに罪を着せることができるような証拠は何一つない。

 拍手を送ろうと思っていたシャルロッテだが、このあまりにお粗末な作戦にはため息をつきたくなる。

 こんな女に、自分は前の時間軸で殺されたのである。

 何故?

 それは、彼女が有能だからではない。

 彼女に魅了され、操られ、シャルロッテのすべてを否定し、死に追いやった本当の原因は、今シャルロッテをかばいだてしている、三人の男たちである。

 それをシャルロッテは改めて気づかされ、唇をかむ。

 自分を世界の中心だと思い込んでいるような、ハーレムを作ろうとしているような頭のいかれた女に自分は負けたのかと思うと、それが悔しくてたまらなかった。
 

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