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九話 王子矯正
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第一王子殿下の婚約者を選定する、令嬢たちを集められた舞踏会が、今夜開かれる。
十三歳以下の令嬢たちが集められた舞踏会の会場は、かわいらし雰囲気のカラフルな色とりどりの花で飾り付けられており、食事、菓子などが机の上には並べられている。
立食できるようなスペースと、雑談できるスペース、そしてダンスフロアと別れており、王子に話しかけられた令嬢は会話が許されるが、話しかけられない令嬢は、王子の目に留まるように立ち位置を気を付けるほかない。
令嬢からアピールすることははしたないとされており、待つしかないのだ。
そんな中、シャルロッテはその場の雰囲気などそっちのけで、机に並べられている料理を物色しながら、目をきらりと光らせた。
彼女が選ぶのは、肉。
もちろん肉のほかにも気持ち程度にサラダも皿にのせるが、大多数が肉である。
それをシャルロッテは座って優雅に食べれるように、ソファを確保すると、料理をおいしそうにほおばっていく。
もちろん食べ方は優雅である。
執事によって香り豊かな紅茶を一口飲んでは、またおいしい料理を楽しむ。
おそらくは彼女を集中してみていないものは気づかないだろう。だが集中してみていれば、彼女がお代わりをすでに三回しているという事実に驚かざるをえない。
そんな彼女の元に第一王子ルーク・スヴェリア・エラが現れたのは彼が舞台上で挨拶をしてから三十分以上過ぎたころのことであった。
「シャルロッテ嬢、よければ一曲お相手願えますか?」
シャルロッテはしきたりに倣って立ち上がると一例をして手を指し伸ばす。
「よろこんでお受けいたします」
広いホールへと出ると、弦楽器の美しい音色が響き始め、シャルロッテとルークは踊り始める。
それは、見事なダンスであった。
見た者たちが見惚れる見事なダンスではあったが、ルークはこのダンスの間にシャルロッテ言った言葉はかなり失礼極まりないものであった。
「お前、あれだけ食べれば太るぞ。というか、あれだけ食べてよく踊れるな。胃袋どうなっているのだ?」
失礼な言いようであった。
おそらくこれまでルークは第一王子ということもあって、傲慢な態度をとっても許されてきたのだろう。
前の時間軸でも、それは見事な俺様であり、シャルロッテは今世も健在なのだなと思いながらも、このまま成長してもらうわけにはいかないと思っている。
前の時間軸はそのまま俺様に育ち、シャルロッテが苦言を呈せば、不敬だと怒るような人だった。
メリー令嬢はそんな性格をうまく操り、ルークをメロメロにしていたが、シャルロッテはそんなことをするつもりはない。
ただ、その傲慢な性格は矯正してやろうと思っている。
「あら、なんて失礼なのでしょう。殿下は紳士ではありませんのね?」
その言葉に、ルークは顔を引きつらせると言った。
「なんだと? ふ」
「不敬ではありませんわ。殿下の失礼な言葉を、注意しただけですわ」
先手を打たれてそういわれ、ルークは唇をかむ。
ダンスが終わり、ルークはその場から離れるかと思いきや、シャルロッテと手をつなぐと、引っ張り、庭の方へ連れて行くと、大きな声で言った。
「お前、生意気だぞ! 俺の婚約者に選んでやろうと思っていたが、選ばなくてもいいのか!?」
シャルロッテは微笑みを浮かべると言った。
「婚約者にしていただかなくて結構です」
「なっ!?」
「私、頭の良い方が好きなので……バカは嫌いです」
「お前は頭がいいのかよ!」
「え? 殿下よりは」
シャルロッテは前の時間軸ではよくルークに頭が悪いと言われたが、ルークこそが頭が足りていなかった。だからこそ、あんな女狐に騙されるのである。
シャルロッテはだからこそ決めている。
バカを矯正してやろうと。
「殿下が頭がいいというならば、私に勉強を教えてくださいませ」
その言葉に、ルークは頬をひきつらせた。
十三歳以下の令嬢たちが集められた舞踏会の会場は、かわいらし雰囲気のカラフルな色とりどりの花で飾り付けられており、食事、菓子などが机の上には並べられている。
立食できるようなスペースと、雑談できるスペース、そしてダンスフロアと別れており、王子に話しかけられた令嬢は会話が許されるが、話しかけられない令嬢は、王子の目に留まるように立ち位置を気を付けるほかない。
令嬢からアピールすることははしたないとされており、待つしかないのだ。
そんな中、シャルロッテはその場の雰囲気などそっちのけで、机に並べられている料理を物色しながら、目をきらりと光らせた。
彼女が選ぶのは、肉。
もちろん肉のほかにも気持ち程度にサラダも皿にのせるが、大多数が肉である。
それをシャルロッテは座って優雅に食べれるように、ソファを確保すると、料理をおいしそうにほおばっていく。
もちろん食べ方は優雅である。
執事によって香り豊かな紅茶を一口飲んでは、またおいしい料理を楽しむ。
おそらくは彼女を集中してみていないものは気づかないだろう。だが集中してみていれば、彼女がお代わりをすでに三回しているという事実に驚かざるをえない。
そんな彼女の元に第一王子ルーク・スヴェリア・エラが現れたのは彼が舞台上で挨拶をしてから三十分以上過ぎたころのことであった。
「シャルロッテ嬢、よければ一曲お相手願えますか?」
シャルロッテはしきたりに倣って立ち上がると一例をして手を指し伸ばす。
「よろこんでお受けいたします」
広いホールへと出ると、弦楽器の美しい音色が響き始め、シャルロッテとルークは踊り始める。
それは、見事なダンスであった。
見た者たちが見惚れる見事なダンスではあったが、ルークはこのダンスの間にシャルロッテ言った言葉はかなり失礼極まりないものであった。
「お前、あれだけ食べれば太るぞ。というか、あれだけ食べてよく踊れるな。胃袋どうなっているのだ?」
失礼な言いようであった。
おそらくこれまでルークは第一王子ということもあって、傲慢な態度をとっても許されてきたのだろう。
前の時間軸でも、それは見事な俺様であり、シャルロッテは今世も健在なのだなと思いながらも、このまま成長してもらうわけにはいかないと思っている。
前の時間軸はそのまま俺様に育ち、シャルロッテが苦言を呈せば、不敬だと怒るような人だった。
メリー令嬢はそんな性格をうまく操り、ルークをメロメロにしていたが、シャルロッテはそんなことをするつもりはない。
ただ、その傲慢な性格は矯正してやろうと思っている。
「あら、なんて失礼なのでしょう。殿下は紳士ではありませんのね?」
その言葉に、ルークは顔を引きつらせると言った。
「なんだと? ふ」
「不敬ではありませんわ。殿下の失礼な言葉を、注意しただけですわ」
先手を打たれてそういわれ、ルークは唇をかむ。
ダンスが終わり、ルークはその場から離れるかと思いきや、シャルロッテと手をつなぐと、引っ張り、庭の方へ連れて行くと、大きな声で言った。
「お前、生意気だぞ! 俺の婚約者に選んでやろうと思っていたが、選ばなくてもいいのか!?」
シャルロッテは微笑みを浮かべると言った。
「婚約者にしていただかなくて結構です」
「なっ!?」
「私、頭の良い方が好きなので……バカは嫌いです」
「お前は頭がいいのかよ!」
「え? 殿下よりは」
シャルロッテは前の時間軸ではよくルークに頭が悪いと言われたが、ルークこそが頭が足りていなかった。だからこそ、あんな女狐に騙されるのである。
シャルロッテはだからこそ決めている。
バカを矯正してやろうと。
「殿下が頭がいいというならば、私に勉強を教えてくださいませ」
その言葉に、ルークは頬をひきつらせた。
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