8 / 24
八話 騎士矯正
しおりを挟むシャルロッテはくるりと空中で回転すると、踵落としで弦に食らわせ、オリバーの剣を取り返すと、それをくるりと持ち替えて、勢いよく振り上げる。
ザシュッと、とても気着心地の良い音がする。
魔法で軽く付与を加え、シャルロッテはオリバーの体をお姫様抱っこをして救い出すと、地上へとトンと、降りた。
「オリバー様。大丈夫ですか?」
「はっはい」
オリバーはシャルロッテの腕の中で彼女の顔を見上げ、頬を赤らめていた。
オリバー・ランドルフ。生まれて十一年、初めて女の子に救われ、お姫様だっこをされた瞬間である。
その日、オリバーの心の中に、乙女心という一つの花が咲いたことを誰も知らない。
シャルロッテはオリバーをその場に降ろすと、うねりをあげる植物をいとも簡単に剣で切り刻み、そして見事に倒してしまう。
リラトは乙女のようにシャルロッテの姿に瞳を輝かせて見つめるオリバーの姿に腹を抱えて笑っている。
「鋼の剣士が、鋼の剣士がぁぁぁ。くそ。笑いでお腹がねじれる。くぅぅぅ」
オリバーの耳にはそんなリラトのうめき声など届かない。
シャルロッテはきれいに倒し終わると、オリバーの元へと戻る。
「オリバー様、大丈夫でしたか? すみません。無茶なお願いをしてしまって」
その言葉にオリバーは首をブンブンと横に振ると、手をもじもじと組みながら言った。
「いえ、あの、シャルロッテお嬢様が守ってくださったので……かっこよかったです」
「え?」
「あっ! 何でもないです!」
もじもじとオリバーはそういい、リラトは地面でのたうち回りながら笑い続けていた。
その後、リラトは植物の後片付けをして、シャルロッテとオリバーは稽古場へと戻った。
ちょうどグレイが返ってきた時であり、グレイは不満げに言った。
「父上は僕を呼んでいなかったよ?」
リラトは頭を下げて言った。
「すみません。私の勘違いだったようです」
いけしゃあしゃあとそういってのけたリラトにグレイは頭をかいてため息をつき、そしてオリバーの方へ視線を向けてぎょっとした。
「オリバー? 何かあったのか?」
「え? い、いや。何もないよ」
指をいじいじとしながらそうオリバーは呟き、ちらちらとシャルロッテに熱い視線を送る。
その光景に、グレイはシャルロッテを後ろにかばって言った。
「シャルは僕の妹だよ。オリバー。変な目で見ないでくれ」
「へっ! 変な目でなんて見てない! ただ、その、シャルロッテお嬢様が、かっこよくて、その……」
「かっこいい? 僕のシャルは可愛いけれど?」
かみ合っていない二人の会話に、リラトは笑いをこらえ、シャルロッテは少しばかり違った矯正となったがまあいいかと肩をすくめて見せた。
17
お気に入りに追加
2,235
あなたにおすすめの小説

従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです
hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。
ルイーズは伯爵家。
「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」
と言われてしまう。
その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。
そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。

婚約破棄ですか? 理由は魔法のできない義妹の方が素直で可愛いから♡だそうです。
hikari
恋愛
わたくしリンダはスミス公爵ご令息エイブラハムに婚約破棄を告げられました。何でも魔法ができるわたくしより、魔法のできない義理の妹の方が素直で可愛いみたいです。
義理の妹は義理の母の連れ子。実父は愛する妻の子だから……と義理の妹の味方をします。わたくしは侍女と共に家を追い出されてしまいました。追い出された先は漁師町でした。
そして出会ったのが漁師一家でした。漁師一家はパーシヴァルとポリー夫婦と一人息子のクリス。しかし、クリスはただの漁師ではありませんでした。
そんな中、隣国からパーシヴァル一家へ突如兵士が訪問してきました。
一方、婚約破棄を迫ってきたエイブラハムは実はねずみ講をやっていて……そして、ざまあ。
ざまあの回には★がついています。


婚約破棄されたのたが、兄上がチートでツラい。
藤宮
恋愛
「ローズ。貴様のティルナシア・カーターに対する数々の嫌がらせは既に明白。そのようなことをするものを国母と迎え入れるわけにはいかぬ。よってここにアロー皇国皇子イヴァン・カイ・アローとローザリア公爵家ローズ・ロレーヌ・ローザリアの婚約を破棄する。そして、私、アロー皇国第二皇子イヴァン・カイ・アローは真に王妃に相応しき、このカーター男爵家令嬢、ティルナシア・カーターとの婚約を宣言する」
婚約破棄モノ実験中。名前は使い回しで←
うっかり2年ほど放置していた事実に、今驚愕。

王太子が悪役令嬢ののろけ話ばかりするのでヒロインは困惑した
葉柚
恋愛
とある乙女ゲームの世界に転生してしまった乙女ゲームのヒロイン、アリーチェ。
メインヒーローの王太子を攻略しようとするんだけど………。
なんかこの王太子おかしい。
婚約者である悪役令嬢ののろけ話しかしないんだけど。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

婚約破棄なら慰謝料をお支払いします
編端みどり
恋愛
婚約破棄の慰謝料ってどちらが払います?
普通、破棄する方、または責任がある方が払いますよね。
私は、相手から婚約破棄を突きつけられました。
私は、全く悪くありません。
だけど、私が慰謝料を払います。
高額な、国家予算並み(来年の国家予算)の慰謝料を。
傲慢な王子と婚約破棄できるなら安いものですからね。
そのあと、この国がどうなるかなんて知ったこっちゃありません。
いつもより短めです。短編かショートショートで悩みましたが、短編にしました。
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる