上 下
11 / 17

十一話 男の逆恨み

しおりを挟む

「父上!母上!話を聞いて下さい!」

 リックは父親に引きずられながら必死に両親に声を掛けるが、二人とも怒りの形相でリックを見下ろすと、屋敷の地下牢へとリックを放り込み、ガチャリと格子に鍵をかけた。

「お前は・・・お前は!自分が何をしたのか分かっているのか!」

「このままでは、うちは悪くいけば没落・・・あぁぁぁもう、これからどうなるのか・・・」

 リックは自分を怒鳴りつける事などなかった両親の怒りに燃える表情に声を上げた。

「す、全てあの女が悪いんです!俺は悪くない!」

「お前は馬鹿か!あぁぁっ・・・くそ・・・お前の教育をどこで間違えたのか。」

「あぁぁぁ・・そうですよ。はぁぁぁ・・・・それに私・・貴方が妊娠しないのはラナ嬢のせいだと言うから・・酷い事ばかり言ってしまったし・・・あぁっぁぁこれからうちは・・どうなるのでしょうか・・・」

 母親が項垂れるように父親に寄りかかり、それを父親は支えながら大きくため息をついた。

「とにかく、弁護士を通して話をするしかない。お前はそこで反省していろ!」

「父上!母上!ちょ、ちょっと待ってください!ミリアーナは!?ミリアーナはどこです!?」

「お前は黙っていろ!ミリアーナ嬢は別室にいる!男爵家とも話をせねばならんだろう・・・あぁっ!!!」

 両親が足早にその場から立ち去っていくのを見送ったリックは、床を殴りつけると、牢の中で暴れ回った。

 ズボンは未だに濡れたままで気持ちが悪く、頭の中は焼け付くような痛みが走る。

「あの女のせいだ・・あの女のせいだ!それに、そもそもは父上が俺とミリアーナの結婚を許してくれなかったせいでもある!俺のせいじゃない!皆が悪い!くそくそくそ!」

 簡易ベッドの枕を破り、床を蹴って地団太を踏み、ベッドの上でのたうちまわったリックは、獣のような雄叫びを上げると怒りに燃えながら唇を噛んだ。

「くそくそくそ!絶対に、許さない。絶対にあの女を・・許さない!!!!」

 逆恨みもいい所である。だがリックは悪いのは全てラナであると自分の中で思い込むと、ぎりぎりと奥歯をかみしめながら強く拳を握りしめた。

「愛しいミリアーナを取り戻すためには・・・あの女をどうにかするしかない・・・」

 頭の狂い始めたリックは、静かに頭の中で考え始める。

 それは冷静であればしない行動。だが、すでにリックの感情は怒りに支配されていた。

「絶対に・・・絶対に俺は・・・このままでは終わらないぞ・・・」

 ぐらぐらと煮えたぎるような瞳が、ラナを狙っていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたに嘘を一つ、つきました

小蝶
恋愛
 ユカリナは夫ディランと政略結婚して5年がたつ。まだまだ戦乱の世にあるこの国の騎士である夫は、今日も戦地で命をかけて戦っているはずだった。彼が戦地に赴いて3年。まだ戦争は終わっていないが、勝利と言う戦況が見えてきたと噂される頃、夫は帰って来た。隣に可愛らしい女性をつれて。そして私には何も告げぬまま、3日後には結婚式を挙げた。第2夫人となったシェリーを寵愛する夫。だから、私は愛するあなたに嘘を一つ、つきました…  最後の方にしか主人公目線がない迷作となりました。読みづらかったらご指摘ください。今さらどうにもなりませんが、努力します(`・ω・́)ゞ

選ばれたのは私でした

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉様は、私が王太子妃になるのを横で指を咥えて見てるといいわ」 妹の趣味、姉を虐める事……。 姉アレクシアは、妹エルヴィーラの自尊心を満たす為だけに、侍女として付き添う事に。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 侯爵令嬢のアレクシアには、エルヴィーラという妹がいる。 「お姉様に、私が劣るなんてあり得ない」 妹の口癖だ。 妹は優秀で美しく、姉アレクシアは平凡で普通だと周囲からは言われた。 だが、それには秘密がある。 両親から溺愛される妹より優秀である事は許されいアレクシア。 妹よりも上手くダンスを踊れば、折檻される。妹よりもヴァイオリンを上手く弾けば、折檻された。 アレクシアはその為に、全てにおいて妹より劣って見えるように振る舞ってきた。 そんなある日、この国の王太子の妃を選ぶと伝令が出される。 妹は、王太子妃候補に選ばれ城へと赴く事になったのだが。その前夜アレクシアは、両親から衝撃の話をされる。 「エルヴィーラの侍女として、貴女も城へ行きなさい」 やがて、どうしても王太子妃になりたい妹は自滅して破滅の道を辿り、それに反するように姉アレクシアは、沢山の人望を集めて人々から愛されるようになり……。

【完結】愛に裏切られた私と、愛を諦めなかった元夫

紫崎 藍華
恋愛
政略結婚だったにも関わらず、スティーヴンはイルマに浮気し、妻のミシェルを捨てた。 スティーヴンは政略結婚の重要性を理解できていなかった。 そのような男の愛が許されるはずないのだが、彼は愛を貫いた。 捨てられたミシェルも貴族という立場に翻弄されつつも、一つの答えを見出した。

ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~

柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。 その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!  この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!? ※シリアス展開もわりとあります。

【完結】夫もメイドも嘘ばかり

横居花琉
恋愛
真夜中に使用人の部屋から男女の睦み合うような声が聞こえていた。 サブリナはそのことを気に留めないようにしたが、ふと夫が浮気していたのではないかという疑念に駆られる。 そしてメイドから衝撃的なことを打ち明けられた。 夫のアランが無理矢理関係を迫ったというものだった。

【完結】美しい人。

❄️冬は つとめて
恋愛
「あなたが、ウイリアム兄様の婚約者? 」 「わたくし、カミーユと言いますの。ねえ、あなたがウイリアム兄様の婚約者で、間違いないかしら。」 「ねえ、返事は。」 「はい。私、ウイリアム様と婚約しています ナンシー。ナンシー・ヘルシンキ伯爵令嬢です。」 彼女の前に現れたのは、とても美しい人でした。

好きな人と友人が付き合い始め、しかも嫌われたのですが

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ナターシャは以前から恋の相談をしていた友人が、自分の想い人ディーンと秘かに付き合うようになっていてショックを受ける。しかし諦めて二人の恋を応援しようと決める。だがディーンから「二度と僕達に話しかけないでくれ」とまで言われ、嫌われていたことにまたまたショック。どうしてこんなに嫌われてしまったのか?卒業パーティーのパートナーも決まっていないし、どうしたらいいの?

聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。

ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」  出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。  だがアーリンは考える間もなく、 「──お断りします」  と、きっぱりと告げたのだった。

処理中です...