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第二百四十三話
しおりを挟む空間の捩れを感じ取ったサリーとルビーは、耳をぴょこんと立てると、慌てて屋敷の外へと飛びでた。
「ルビー!」
サリーの声に、ルビーはうなずく。
サリーは頭にかぶっていたシルクハットの帽子から取り出したピンク色の布をルビーへと向かって広げ、それを受け取ったルビーはぴんと布を張った。
「来ますよ!」
「分かってる!」
二人は衝撃に備えて布を張る。
次の瞬間、突然空中にアルル、アロン、レオの三人が姿を現し、サリーとルビーの広げる布の上へと落ちてきた。
「わぁぁ!」
「おおぅ!」
「きゃぁ!」
三人の声はピンう色の布の中へと飲み込まれ、サリーとルビーはゆっくりと布を降ろすと、寝転がる三人の顔を覗き込んだ。
「おかえりなさいませ。」
「空から降って来るなんて、楽しそうだったねぇ。」
にっこりと笑う二人につられて三人も苦笑を浮かべた。
どうにか帰ってこられたものの、到着する位置までは固定が出来ず、サリーとルビーの機転に感謝した。
「あれ?お父さん、元に戻ってる。」
「あぁ。魔法がきれたのじゃな。ほほほ。やはり大人の体の方がしっくりくるわい。」
「えぇー。ちょっと残念。」
「けどアルル。やっぱりアロン先生は大人の姿の方が威厳があるよ?」
「まぁ・・・たしかに。」
二人の言葉にアロンは笑うと、立ち上がりサリーを呼んだ。
「サリー。話がある。」
「どうかなさいましたか?」
「あぁ。」
アロンはこれまでの経緯をサリーに話した。
「城からは異変があったなど連絡は来ていません。それに、王城の魔法の警備状況にも問題はないと思いますが。」
「あぁ。わしがかけている守護魔法も異常はない。とにかくわしらは一度王城へと行く。サリーはそちらを頼めるか?」
「はい。」
サリーは頷き、ルビーの方を向くと言った。
「ルビー。私は音楽の民の元へと行ってきます。その間、屋敷を任せても構いませんか?」
「うん。大丈夫だよ。行ってらっしゃい。」
サリーはうなずくとすぐにその場から姿を消し、音楽の民の元へと向かった。
「よし、わしらは王城の方へと向かうぞ。」
アロンの言葉にアルルとレオはうなずいたが、それをルビーが止めた。
「ちょーっと待って。」
三人がきょとんとした顔をルビーに向けると、ルビーはにっこりと笑って言った。
「僕だって見習い執事だからね。ここでサリーの言うセリフが分かるから、代わりに言ってあげる。」
首を傾げる三人に、ルビーは指をぱちんと鳴らして言った。
「さぁさぁ、まずは落ち着いてから。腹が減っては戦は出来ませんよー。」
三人の目の前に、机にお茶のセット、それに焼きたてのにんじんケーキが姿を現した。
鼻をくすぐる甘い香りに、三人のお腹が盛大に鳴った。
「さぁ、まずは食べて、元気を取り戻してね。」
三人は視線を交わしあうと、我先にと、にんじんけーきの皿に手を伸ばしたのであった。
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