魔法使いアルル

かのん

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第二百三十二話 音楽の民篇

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 アルルは屋敷の図書室でレオと一緒に勉強していたのだが、不意に手を止めると言った。

「ねぇレオ。」

「なぁに?アルル。」

「レオは音楽の民って知っている?」

「音楽の民?」

「うん。あの、この前のロッテンベイマー先生の件の時にね、ロドロ先生にオルゴールをもらったの。とっても素敵なオルゴールで、音楽の民が作ったんだって。」

「へぇ。音楽の民のオルゴールかぁ。僕もあまり詳しくはないけれど、音楽の民は妖精のような姿でとっても楽しい事が好きらしいよ。多分、音楽の民についての本もあったはず。たしかこっちに。」

「え?本当に?」

 アルルとレオは本棚の奥の方へと移動していくと、一番端の方に会った古い本を手に取った。

 表紙には【音楽の民~誇りをもった仕事~】というタイトルが付けられていた。

「これだ。」

「うん。でも・・・なんだかおもしろくなさそうだね。」

「うん。」

 二人はしばらく本の表紙を見つめていたのだが、とにかく一度中を見てみようと椅子に座ると、最初のページを開いた。

『え?』

 二人は静かに本を閉じると大きくため息をついてから、サリーを呼び出すベルをゆっくりと鳴らした。

「はいはい。およびですか?」

 ちょうどお菓子休憩の時間だったらしく、サリーはお茶とお菓子を乗せたトレーをもって現れた。

「あれ?ルビーは?」

「ご主人様にお菓子とお茶を持って行っていますよ。」

「そっか。」

「それで、どうかされましたか?」

 サリーの言葉に、アルルとレオは本をサリーに見せると言った。

「これね、表紙は読めるんだけど。」

「中を開いたら、読めない文字なんだ。どうして?」

 あぁなるほどと本を受け取ったサリーはにっこりと笑うと言った。

「これは、音楽の民の手引書のようなものでして、音楽の民にしか読めないのですよ。」

「え? そんな本があるの?」

「はい。そうなんです。それにしても何故音楽の民にしついて調べていたのですか?」

 アルルがロドロから音楽の民が作ったというオルゴールをもらったことを話すと、サリーは少し考えてから一冊の本を本棚から取り出して二人に差し出した。

「こちらの本に、簡単にではありますが音楽の民について載っていますよ。読みますか?」

 二人はうなずくとお菓子休憩をした後に本を夢中で読んだ。

 本には音楽の民について挿絵付きで描かれていた。

 身長は人の子どもくらいの大きさで、背中には空を自由に飛ぶ蜂のような羽がついている。その瞳は大きく口は小さく、可愛らしい顔立ちをしている。

「かわいいね。ねぇアルル、僕もそのオルゴール見てみたい。見せて?」

「いいよ。部屋に置いてあるから行こう!」

 アルルとレオは手を繋いで部屋へと戻ると、ベッドの上でオルゴールを開いた。

 その時であった。

『パンパカパーン!おめでとうございます!お客様は見事音楽の民スペシャル企画イベントに当選いたしました!よって!』

「え?」

「わっ!」

 ベッドの下に突然巨大なト音記号のマークが浮かび上がると、渦のようにしてぐるぐるとまわり、ベッドごとアルルとレオを飲み込んでいく。

「何これ!」

「アルル!」

 二人はファンファーレと共に吸い込まれていったのであった。



 
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