魔法使いアルル

かのん

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第二百二十三話

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 その教師の名はロッテンベイマーと言い、担任のニーンが今別の学校へと研修に行っているという事で臨時にクラス担任となっているらしい。

 アルルはロッテンベイマーからの説教の後、学校が終わったのを見計らってミーガン合流したアルルは、共に学校の裏手にある泉まで来て詳しい話を聞いていた。

「ロッテンベイマー先生は本当に怖いし、説教が長いし、それに、私達が言い返そうとするとすぐにパシンって、机をたたくのよ。」

「あれは、怖いね。」

 アルルは先ほどのロッテンベイマーの怒る姿を思い出して背筋が寒くなった。

 授業が始まったベルが聞こえたのにもかかわらずロッテンベイマーはアルルを叱り続け、そしてやっとのことで終わったかと思うと、アルルを外へと放りだしたのである。

 最後に睨みつけられ、アルルは久しぶりに大人が怖いと思った。

「ロッテンベイマー先生って私、とっても理不尽だと思うの。」

「確かに。」

「でしょう?それでね、アルルに協力してほしいのよ。」

 ミーガンはにっこりと笑うとアルルの手を取った。

「子どもだって、ちゃんと自分の意思があるんだぞってことをロッテンベイマー先生に教えてやりたいのよ。協力してくれるでしょう?」

 アルルはその言葉に笑みを返すとうなずいた。

「もちろん。あんな理不尽な怒られ方はしたくないものね!」

「本当によ!ニーン先生とは大違い。はぁ・・・早くニーン先生帰ってこないかしら。」

「ニーン先生はいつ帰って来るの?」

「来月には帰って来ると聞いたけど・・・それまで私、絶対に我慢できないわ。」

 ミーガンはそう言うと、笑顔を消して唇を尖らせると言った。

「うちのクラスの子で、学校来なくなった子がいるの。」

「え?」

「覚えているかな・・・あの、レオとペアになったことのあるカリーっていう子。」

「あぁ。カリー。え?学校に来なくなっちゃったの?」

 ミーガンはうなずき、小さな声で言った。

「私、カリーがロッテンベイマー先生に怒られているのを見たのに、自分も巻き添えになるのが怖くって、黙って、助けなかったの。そしたら、次の日からカリー来なくなっちゃった。」

「ロッテンベイマー先生は、何て?」

 そうアルルが尋ねた瞬間、ミーガンは目を見開き、アルルを見るとその瞳からポロポロと大粒の涙を流しながら言った。

「『何て弱い子なのかしら』って。『私の指導についてこられないなんて、魔法使いになる素質はない』って。そんなの、ロッテンベイマー先生が決める事じゃないのに。」

 ミーガンはそう言うと、嗚咽を漏らしながら泣いた。

「私自分が許せないの。友達を見捨てた。私は・・・うぅ。」

 アルルはそんなミーガンの背を優しく撫でると、自分はそんなにかかわったこともないのにもかかわらず、ロッテンベイマーに腹が立った。

 でも、とアルルは思う。

 本当に、このままミーガンの言葉だけでロッテンベイマーを嫌いになり、腹を立てて、本当にそれだけでいいのだろうか。

 アルルは、一回深呼吸をすると、ミーガンに言った。

「ねぇミーガン。私はまだロッテンベイマー先生がどんな先生なのか、ちょっとしか知らないの。だから、まずは自分の目でどんな先生見て、その上で協力してもいい?」

 その言葉に、ミーガンは少し驚いたように目を丸くしてから、涙をぬぐって言った。

「もちろんよ。そうじゃなきゃ、ロッテンベイマー先生に公平じゃないものね。」

「ふふ。ありがとうミーガン。」

「でも、協力はしてね?」

「もちろん。でもまずは知ってからね。」

 アルルとミーガンはにっこりと笑いあうと手を取った。






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