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第二百十八話
しおりを挟む必要なのは発想の転換。
魔法陣を発動させないようにするのではなく、ここで発動させなければいいのだ。
五人は背中合わせに魔法、そして魔術の力を発動させていくと、力を込めていく。
この国全土を覆うほどの巨大な魔法陣である。
大きければ大きいほどに魔力を必要とするのは当たり前であり、五人の力はごっそりと一気に持って行かれる。
キースは耐えながらも片膝をついたが、アルルとレオが片手をキースの背へと当て、魔力を分けていく。
「アルル!レオ!」
二人から流れてくる大量の魔力にキースは目を丸くした。
二人は杖を振るいながらも笑みを浮かべて言った。
「私とレオの魔力は多いから。」
「キース、踏ん張れよ。」
二人に励まされ、キースはもう一度立ち上がると力を込める。
悪魔ゼロに命じられた他の悪魔達は、自分の付く人間達の周りに結界を張り、こちらの力の干渉から逃れられるようにしてもらう。
万が一にでもこちらの魔力を邪魔されたり、流れを変えられてしまえば上手くはいかないだろう。
そうならないためには、悪魔全員の協力が必要だった。
「悪魔達は上手くいっているようじゃの。」
アロンはそう呟くと、こちらの力に呼応し始めた魔法陣を見た。
「よし、力が満ちたな!ころあいじゃ、さぁぁぁ、ひと踏ん張りじゃぞぉおぉ!」
バチバチと魔力の火花が散り、五人の周りに線香花火のような光が舞う。
次の瞬間、その線香花火の光が地面に描かれていた魔法陣へと引火するようにして広がり、魔法陣は色を変えると地面からはがれ始めた。
「さぁぁぁぁっ!持ち上げるぞぉぉぉぉ!」
アロンの言葉に息を合わせ、魔法陣を上空へと持ち上げるためにさらに魔力を込めていく。
魔法陣はゆっくりと持ち上がり始め、そして魔術の国の上空へと浮かび上がったのであった。
「アルル!レオ!まだ魔力は残っているかの!?」
「もちろん!」
「大丈夫!」
ヴィンセントとキースは顔を青ざめさせてその場にへたり込んでいる。
あれほどの巨大な魔法陣を空へと地上からはがして持ち上げたのだから仕方のない事だろう。
おかしいのは、アルルとレオとアロンの魔力の量の方だ。
三人は杖を合わせると、魔法陣に向かって魔法を放つ。
次の瞬間、巨大な魔法陣の周りに結界が張られ、そしてその瞬間に上空の魔法陣が発動し青い光を放った。
皆がそれに眩しげに目を背ける中、アルル、レオ、アロンの三人はその魔法陣を真っ直ぐに見つめたまま、結界に魔力を注いで維持させた。
ゆっくりと、役目を果たした魔法陣は空気に溶けるかのように消えていった。
アルルとレオは大きく息を吐くとその場にへたり込んで笑った。
「ふふふ!上手くいった!」
「やったね!」
キースはふらつきながらも二人に抱き着くと、瞳いっぱいに涙をためて言った。
「ありがとう!ありがとう!」
アルルもレオも、嬉しそうに言った。
「グリコに勝ってキース良かったね!」
「そうじゃなかったら、一大事だったね。」
二人のその言いように、キースは一瞬きょとんとした後に、大爆笑したのであった。
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