魔法使いアルル

かのん

文字の大きさ
上 下
30 / 76

第百九十八話

しおりを挟む
 アルルとレオとキースは地図をもとに歩き始めた。

「俺は父がいるであろう、秘密の部屋を研究室と呼んでいるんだ。仕事が終わった後はどこにあるかもわからないその研究室で、おそらく父は母を蘇らせようとしているんじゃないかと考えている。」

「そうなんだ。あ、次の廊下を左に曲がるよ。さっき曲がる個所には目印を付けたから、ほら、ここ。」

 アルルは地図を見ながら廊下を指差すと、その道順に沿って進んでいく。

 三人はどんどんと廊下を進み、そして気が付けば地下へと降りてきていた。

 地下はじっとりとしていて、薄暗く、明かりも転々としかなくてアルルはレオの手をぎゅっと握りしめ直した。

 それを見ていたキースは、アルルのもう片方の手を握った。

「っひゃぁ!」

 突然の事にアルルは驚いて声を上げたが、キースは手をにっこりと笑って握りしめていった。

「こっちは俺が繋いでいてやるよ。」

 その言葉に、アルルは何となく素直にうなずけず、パッと手を振り払い、すっとレオの後ろへと隠れた。

「キースの事は嫌いじゃないけど、なんか嫌。」

 キースはその言葉にショックを受けたようにむっとしたが、それを見ていたレオは嬉しそうににっこりと笑って言った。

「キース。怖いなら僕と手を繋ぐ?」

「繋がねぇよ!」

「遠慮しなくていいよ。ほら。」

 レオに手を差し伸べられて、キースは悔しそうにその手を取った。

「レオが怖いみたいだから繋いでやるよ!」

「僕は怖くないけどね。さ、進むよ。」

 暗い地下を進んでいくと、キースは言った。

「この地下は、かなり広範囲に広がっているんだ。何のために作られたかは謎だけれどな。」

 アルルは苔のはびこる石造りの地下の道を歩きながら呟いた。

「でも、しっかりと作られているね。ドワーフの住んでいるトンネルみたいなところとは大違いだ。」

「そりゃそうだろう。あ、アルル、次の道を右に進むみたいだよ。」

「うん。右ね。」

 そう思って三人が一歩進んだ時であった。

「え?」

「あれ?」

「お?」

 進んだ先に、地面は無く、三人の足は空を切る。

「お。」

「お。」

「落ちるー!」

 三人は声を上げ、暗い穴の中をどんどんと落下していった。

 アルルとレオは慌てて魔法の箒を出すとそれに跨り、レオはキースを自分の箒の後ろへと引き上げた。

 三人は心臓がバクバクとなる中、どうにか呼吸を整えると真っ暗な穴を見つめた。

「何突然!」

「いきなり地面が無くなるなんて、驚いた。」

「俺も、、、まさか、、、落ちるとは思わなかった。」

 その瞬間であった。

 頭上からまるで三人を押し付けるようにして風が吹き、三人は一気に下へと押し付けられ、落とされていく。

「な、何この風!」

「これは、ただの風じゃない!」

「うわぁぁぁ!」

 三人の体は風に押しやられて、どんどんと真っ暗闇の中へと落とされていったのであった。

しおりを挟む
感想 116

あなたにおすすめの小説

理想の王妃様

青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。 王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。 王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題! で、そんな二人がどーなったか? ざまぁ?ありです。 お気楽にお読みください。

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

悪女の死んだ国

神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。 悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか......... 2話完結 1/14に2話の内容を増やしました

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

太郎ちゃん

ドスケベニート
児童書・童話
きれいな石ころを拾った太郎ちゃん。 それをお母さんに届けるために帰路を急ぐ。 しかし、立ちはだかる困難に苦戦を強いられる太郎ちゃん。 太郎ちゃんは無事お家へ帰ることはできるのか!? 何気ない日常に潜む危険に奮闘する、涙と愛のドタバタコメディー。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

処理中です...