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第百八十六話
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魔術師とは何か。
アルルは以前サリーから教えてもらった魔術師について思い出していた。
『いいですか?魔法使いには体の中に魔法を操る力が流れています。その魔力を利用し、魔法使いは魔法を使う。これに対し魔術師は体の中に魔力を持たないが、外的力を用いて魔法を使うものを魔術師と呼びます。』
『外的力?』
『ええ。まだそれが何なのか本当の意味で解明はされていませんが、外的力、それを人は【悪魔】と呼びます。【悪魔】と契約を果たし魔法を使うものを、魔術師と呼ぶのです。』
そんな事を思い出してアルルが思ったのは、きっとシュリレと契約をした悪魔は、今のシュリレのように鬼のような顔をしているのだろうなぁとぼんやりと思っていた。
「我が国は闇への防御力を誇ると言うのに、なんという闇の力か。」
口惜しげにシュリレはそう言うと、アルルの髪を引っ張り、顔を上にあげさせると言った。
「お前は闇にも好かれているのだね。そうか、、、ふふ、、、なら、絶望し闇に染まった暁にはお前を求める闇の元へと落としてやろうねぇ。」
にやにやと笑うシュリレに、アルルは今は体に自由がきくことを思い出して言った。
「私は闇には落ちない。それに、絶対にここから逃げてみせる。」
口答えされた事にシュリレは眉間にしわを寄せると言った。
「あぁ、今は魔術を解いているのだったねぇ。ねえ、なんで魔術を掛ける時間と解く時間があるか分かる?」
アルルはドキリとした。
何故か。
それはアルルも疑問に思っていた。
わざわざ魔術を解かなくてもずっと操ればいい。
わざわざ魔術を解く理由。
「それはねぇ、ずっと魔術をかけ続けるとすぐに人形は壊れてしまうからよ。ここには、子どもしかいないでしょう?ふふふ。大人になる前に、壊れちゃうの。だから、少しでも壊れるのが遅れるように、私は優しいから夜の間だけは魔術を解いてあげるのよ。」
にやぁっとした笑みを浮かべたシュリレに、アルルはぞっとした。
けれどそれでもアルルはシュリレに挑むように見つめると言った。
「私は壊れないし、それに、私は絶対にここから逃げてみせる。」
「あらそぉ。じゃあ壊れないように、明日は特に気をつけなきゃねぇ。だって、お前にとっての絶望が明日来るのだもの。楽しみね。」
「ええ。楽しみ。お父さんもレオも絶対に私を忘れてないもの!」
その声に、シュリレは憎々しげにふんと息をつくとその場から姿を消した。
アルルは大きく息をつき、しゃがみこむと周りの子ども達に視線を移す。
二人の会話を聞いていた子ども達は、自分たちの行く末を聞いて感情のない顔でぼーっと床を見つめている。
アルルはその様子を見て、もう一度立ち上がると子ども達に言った。
「ねぇ、本当に貴方達はこのままでいいの?」
子ども達の顔が上がり、そしてアルルを見つめる。
「本当に、ここにいることが、幸せ?」
少年は立ち上がると言った。
「ここより前いたところの方が地獄みたいなところだった。ここはごはんもくれるし、眠ることもできる。」
その言葉に、アルルは胸が痛くなった。
けれど、アルルは思う。
「あのね、、、私ね、今の家族に会って自分で洋服とか選ぶようになってね、自分で選べるってとっても楽しいんだって知ったの。前は、、朝起きて、働いて、その日雨風のない所で眠れるだけでも幸せだって、自分に言い聞かせていた。でも、、、そんなの嘘だって、知ってた。ねえ、本当にこれでいいの?」
子ども達は黙り込み、顔をうつむかせる。
本当は、これではダメだと皆分かっている。
アルルはにっこりと笑みを浮かべると言った。
「ねえ、だから一緒に逃げようよ。」
「そんなの、無理だよ。」
アルルは首を横に振って両手を広げた。
「出来るよ!明日私のお父さんと友達がこの国に来る。シュリレはお前の事など忘れているっていうけれど、絶対に覚えている。そして、きっと助けてくれる。けど、ただ助けを待っているだけじゃダメなの。」
子ども達に真っ直ぐに視線を向けてアルルは言った。
「だから、力を貸してほしい。」
アルルの勇気の宿るその瞳に、子ども達の瞳は光を取り戻した。
アルルは以前サリーから教えてもらった魔術師について思い出していた。
『いいですか?魔法使いには体の中に魔法を操る力が流れています。その魔力を利用し、魔法使いは魔法を使う。これに対し魔術師は体の中に魔力を持たないが、外的力を用いて魔法を使うものを魔術師と呼びます。』
『外的力?』
『ええ。まだそれが何なのか本当の意味で解明はされていませんが、外的力、それを人は【悪魔】と呼びます。【悪魔】と契約を果たし魔法を使うものを、魔術師と呼ぶのです。』
そんな事を思い出してアルルが思ったのは、きっとシュリレと契約をした悪魔は、今のシュリレのように鬼のような顔をしているのだろうなぁとぼんやりと思っていた。
「我が国は闇への防御力を誇ると言うのに、なんという闇の力か。」
口惜しげにシュリレはそう言うと、アルルの髪を引っ張り、顔を上にあげさせると言った。
「お前は闇にも好かれているのだね。そうか、、、ふふ、、、なら、絶望し闇に染まった暁にはお前を求める闇の元へと落としてやろうねぇ。」
にやにやと笑うシュリレに、アルルは今は体に自由がきくことを思い出して言った。
「私は闇には落ちない。それに、絶対にここから逃げてみせる。」
口答えされた事にシュリレは眉間にしわを寄せると言った。
「あぁ、今は魔術を解いているのだったねぇ。ねえ、なんで魔術を掛ける時間と解く時間があるか分かる?」
アルルはドキリとした。
何故か。
それはアルルも疑問に思っていた。
わざわざ魔術を解かなくてもずっと操ればいい。
わざわざ魔術を解く理由。
「それはねぇ、ずっと魔術をかけ続けるとすぐに人形は壊れてしまうからよ。ここには、子どもしかいないでしょう?ふふふ。大人になる前に、壊れちゃうの。だから、少しでも壊れるのが遅れるように、私は優しいから夜の間だけは魔術を解いてあげるのよ。」
にやぁっとした笑みを浮かべたシュリレに、アルルはぞっとした。
けれどそれでもアルルはシュリレに挑むように見つめると言った。
「私は壊れないし、それに、私は絶対にここから逃げてみせる。」
「あらそぉ。じゃあ壊れないように、明日は特に気をつけなきゃねぇ。だって、お前にとっての絶望が明日来るのだもの。楽しみね。」
「ええ。楽しみ。お父さんもレオも絶対に私を忘れてないもの!」
その声に、シュリレは憎々しげにふんと息をつくとその場から姿を消した。
アルルは大きく息をつき、しゃがみこむと周りの子ども達に視線を移す。
二人の会話を聞いていた子ども達は、自分たちの行く末を聞いて感情のない顔でぼーっと床を見つめている。
アルルはその様子を見て、もう一度立ち上がると子ども達に言った。
「ねぇ、本当に貴方達はこのままでいいの?」
子ども達の顔が上がり、そしてアルルを見つめる。
「本当に、ここにいることが、幸せ?」
少年は立ち上がると言った。
「ここより前いたところの方が地獄みたいなところだった。ここはごはんもくれるし、眠ることもできる。」
その言葉に、アルルは胸が痛くなった。
けれど、アルルは思う。
「あのね、、、私ね、今の家族に会って自分で洋服とか選ぶようになってね、自分で選べるってとっても楽しいんだって知ったの。前は、、朝起きて、働いて、その日雨風のない所で眠れるだけでも幸せだって、自分に言い聞かせていた。でも、、、そんなの嘘だって、知ってた。ねえ、本当にこれでいいの?」
子ども達は黙り込み、顔をうつむかせる。
本当は、これではダメだと皆分かっている。
アルルはにっこりと笑みを浮かべると言った。
「ねえ、だから一緒に逃げようよ。」
「そんなの、無理だよ。」
アルルは首を横に振って両手を広げた。
「出来るよ!明日私のお父さんと友達がこの国に来る。シュリレはお前の事など忘れているっていうけれど、絶対に覚えている。そして、きっと助けてくれる。けど、ただ助けを待っているだけじゃダメなの。」
子ども達に真っ直ぐに視線を向けてアルルは言った。
「だから、力を貸してほしい。」
アルルの勇気の宿るその瞳に、子ども達の瞳は光を取り戻した。
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