魔法使いアルル

かのん

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第百七十四話

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 ドルフは、大きく息を吐くとゆっくりと吸い、そしてはっきりとした声で言った。

「ここに、魔法石の民、ドワーフの王、そして怪物がそろった。これで最低限揃った事になる。じゃが、ここからが大変じゃ。」

 ドルフは話はじめ、そして、おおまかな所が話し終わったことには皆の顔には緊張感が走っていた。

 ユンゲルは自分の準備を始め、道具を並べている。

 アロンは言った。

「アルルとレオはわしと共に周りに魔法を張るぞ。ルビーはこの空間が壊れないように維持を頼む。」

 頷き返し、アルルはハルを見た。

 ハルは少し落ち着きを取り戻し、ルルに話しかけていた。

 久しぶり会えた事を心から喜んでいることがよく伝わってくる。

 ドルフに視線を向けると、ドザザクと何かを話している様子であり、二人ともぎこちなくはありながらも喜んでいるような雰囲気が伝わってくる。

 アルルはそれが嬉しかった。

 すると横にレオがやってきてにっこりと笑った。

「おじいさん、王様と仲直りできるといいね。」

「うん。そうだね。」

「準備できたよー。」

 ユンゲルの声が聞こえ、皆が大きく息をつくと自分の持ち場へと進んでいく。

 アロン、アルル、レオの三人は三角形に鳥籠の周りに立ち、魔法で防御壁とルルへ守護魔法を掛けていく。

 ルビーは雲を練り、空間を覆うように広げていった。

 ハルとドザザクは共に立ち、ドザザクは胸についた斧のブローチを取りそれに息を吹きかけると巨大化した。そしてそれを構える。

 ユンゲルはルビーに出してもらった魔法石の書を開き、細かな道具を腰のベルトに刺して構えている。

 まるで五芒星の形のように立った六人は、頷きあうと呼吸を一つに合わせた。

「では、魔法石の民ハルよ、いくぞ。」

「あぁ。よろしく頼む。」

 ハルは自身の中にある魔法石へと魔力を送り、それを通してドザザクへとその力を流した。

 ドザザクはハルの魔力を身にまとうと、斧へとその力を集めて勢いよく斧を振り上げた。

 鳥籠に向けて斧を振り下ろすと、鳥籠に触れた部分から眩しい光が散り、稲光のようにして鳥籠全体が光り、それに伴い電流のように駆け巡る。

 アロン、アルル、レオはそれを外へと漏らさないよう魔法壁で押さえつける。

 弾き返されそうになるのを、ハルとドザザクは必死で堪えるが、力の反発がすさまじく押し返されそうになる。

「ほれ!頑張れ!」

 そんな二人の背をドルフが支える。

「すまん。」

「ほう、兄の謝るセリフを初めて聞いたわい!さぁ、ひと踏ん張りだ!」

 三人とは反対側にいたユンゲルの目の前の鳥籠が、少しずつ歪み、ユンゲルが一人通れるくらいの道が出来ると、ユンゲルは勢いをつけてその鳥籠の中へと飛び込んだ。

「ユン、、ゲル!」

 ルルは目の前に来たユンゲルの名を呼び、ユンゲルはそれににっこりと笑みを返すと、ベルトからいくつかの道具を取り出して水晶化しているルルの足元を調べ始めた。

「性質は光、、、純度は、、、硬度は、、、」

 ユンゲルはぺらぺらと魔法石の書をめくり何かを調べながら水晶化した部分を調べていく。

 その間にも鳥籠の周りの電流は勢いをまし、三人の魔法使いをもってしても抑えるのが難しくなり始める。

 そして、反発する魔力は空間を歪めていく。

「こっちも危ないよぉ!」

 ルビーは雲を必死で作り穴が開いたところを埋めていくが、貴方がいくつも開いていく。

「ユンゲル!頑張って!」

 アルルは叫び、ユンゲルは震える手で必死に調べ、そして、目を見開いた。

「見つけた!」

 ユンゲルの服の内側にはいくつもの魔法石がフラスコに入れられて入り備え付けられており、その中からユンゲルは三つを取り出すと、それを打ち合わせ、混ぜ合わせ、そしてルルの足へと振りかけた。

 するとルルの足の水晶はまるで水に変わったかのように溶け始めた。

「ルル!行こう!」

 ユンゲルはルルを支え、どうにか先ほど入ってきた歪みへと進もうとした。

 だが、電流が勢いを増しており、そこはまるで電流、雷撃の嵐のようになっていた。

 二人の表情に緊張が走るが、ここで止まっていれば出口が閉まってしまう。

「ルル。」

「ユンゲル。」

 二人は覚悟を決めると雷撃の中に飛び込んだ。







 
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