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第一章
ルーナの婚約者 111
しおりを挟むアイデール王国からフィーリタ王国に皆が帰り、そしてルーナは久しぶりに自分の屋敷に帰りほっと息を吐いた。
ルーナは、ハロルドのこの間の発言について思い悩んでいた。
ウィリアムとの婚約は、もう破棄したい。
だが、だからと言って、ハロルドと婚約など考えたことも無かった。
確かに、ウィリアムとの婚約が破棄されるならばだれか他に婚約者を見つけなければならない。だが、ルーナはアイデールの姫の血を引いているがゆえに、あまり低い地位の者とは婚約出来ない。
だからと言って、ハロルドか。
ルーナはハロルドの言葉を思い出して顔を赤く染めた。
あんな、甘い言葉を囁かれたのは初めてで、どうしたらいいのかが分からない。
そんな悩むルーナの元に城から手紙が届いたのは数日後の事であった。
ルーナは、青いドレスを身に纏い、気合を入れて王城へと向かった。
揺れる馬車の中で何度もハロルドの姿が繰り返し思い出される。
そうこうしている間に、王城へつき、ルーナは応接間へと通された。
そこにいたのは、国王、王妃、ウィリアム、ハロルドとそうそうたるメンバーであり、ルーナは美しくカテーシーをすると挨拶を述べた。
そして席に着くよう言われ、ソファに腰掛ける。
国王は、ルーナを見つめると優しい声で言った。
「今回、ルーナ嬢にはウィリアムが迷惑をかけたようだね。ハロルドから話は聞いた。ルーナ嬢とウィリアムの婚約は君の希望通り破棄して構わない。」
その言葉に、ルーナは頭を下げた。
「ありがとうございます。」
ウィリアムはそんなルーナに言った。
「本当にすまなかった。だが、あれは私の本心ではなかった事だけは分かってくれ。」
その言葉に、ルーナは目を瞬かせると、ころころと笑う。
「はい。分かっております。ですが、私の事をウィリアム殿下が好いていなかった事も分かっておりました。」
ルーナの言葉に、ウィリアムか固まる。
「い、、、いや、そんな事は。」
「私はお慕いしておりました。」
ウィリアムは顔を上げルーナを見る。
ルーナは真っ直ぐに澄んだ瞳をウィリアムに向ける。
「私はちゃんと、王子としてではなく、ウィリアム殿下をお慕いしておりました。」
本心ではなかったと、ウィリアムは言った。
では本心ではどう思っていたのだ?
ちゃんと、私を見ていた?
婚約者として扱っていた?
少しは心を砕いてくださった?
そんな事はなかったでしょう。
それが分からないほど馬鹿ではないわと、そういう気持ちを込めて、ルーナはウィリアムを見つめる。
ウィリアムは静かに視線を反らした。
そんな様子に王妃はため息をついた。
「貴方には辛い思いをさせてしまったわね。」
悲しそうに言う王妃に、ルーナは首を横に振った。
「よいのです。私がウィリアム殿下に相応しくなかっただけの事です。」
「それで、だが、ルーナ嬢、ここにいるハロルドが貴方に求婚したいと言っているのだが、どうだろうか。」
「え?」
突然の国王の言葉に驚き、しかも求婚という言葉が気になる。
「ハロルド、ルーナ嬢と二人で話をしてきなさい。ルーナ嬢。嫌であれば断って構わない。こちらに非がある事は明確であった。だから無理にとは言わない。よく考えてくれ。」
ハロルドは席を立つと、ルーナに手を差し出した。
ルーナは困惑しながらもその手を取り部屋を出る。
ウィリアムが苦虫を噛み潰したような顔をしていたが、ルーナには見えていなかった。
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