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十三話 最終話

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 夏に向けて、木々や草花は太陽に向かって一斉に伸び始め、私は麦わら帽子をかぶって庭の雑草を引き抜いていた。

「ふふふ。雑草さんごめんなさいね。ここは畑なの。だから、本当に申し訳ないのだけれど、貴方たちはこの土地では生きていけないのよ!!」

 ふははははと、不気味な声を漏らしながら雑草を一心不乱に抜いていく私は、はっきり言って、本当にすがすがしくてたまらない気持ちでいっぱいだった。

 朝のんびり起きて、用意された朝食を食べてそれから外に出て太陽の日差しを浴び、雑草を抜いたり畑仕事をしたりしてのんびり暮らす。

 これこそ私の思い描いていた理想の田舎暮らしである。

 雑草抜くの楽しい!

 毎日生えてくるから本当に厄介だけど!

 一種類の雑草を抜くと違う勢力の雑草が伸びてくるから雑草にもいろんな種類があるのだと知った。

「リリー。ほら、水分補給しっかりな?」

「え? あぁアイザック。ありがとう」

 コップに水を入れて持ってきてくれたアイザックに、私は笑顔を向けた。

 アイザックも私とおそろいの麦わら帽子をかぶり、肩にはタオルをかけて、田舎スタイルである。

 ただ、汗をぬぐう姿はちょっと色っぽくて、こう、なんというか、高貴な雰囲気を隠せていない。

 婚約破棄後、私はすぐに屋敷を出てこの田舎の一軒家で暮らしている。ただ、一軒家とはいっても隣には侍女夫婦の家と、反対隣には何故かアイザックの家がある。

 アイザックは国王陛下と何やら話をつけていたらしく、この土地もアイザックが所有するものであり、本来ならばアイザックは領主の家で過ごさなければならない。

 けれど、そんな領主の家には領主代行人が住んでおり、アイザックは悠々自適に私の家の隣で暮らしている。

 ハリー様は、どうやらマリア様の実家である男爵家へ婿入りすることが決定されたようで、男爵家からしてみれば寝耳に水。

 かなり混乱したらしいが、愛のある二人ならばきっと大丈夫、乗り越えていけるだろう。

 たとえお金がないことにハリーが喚いたとしても、たとえ仕事ができないマリアが女主人になったとしても。

 あぁ、貴族社会ではきっと腫物扱いされるだろう。

 公爵令嬢を断罪しようと舞踏会場で婚約破棄騒動を起こし、しかもそれが冤罪。公爵令嬢はそれに衝撃を受け心神喪失の上行方不明ということになっている。

 まぁ、実際はここで元気にスローライフしていますけど。

「リリー大好きだよ。気が向いたら結婚してくれよな?」

 毎日のようにアイザックからポロポーズされ続けている私だけれど、嫌な気持ちはしない。

 ハリーとは友達だったけれど、アイザックとの今後は、まだ分からない。

 ただ。

「ま、まぁ、いつか、ね」

 屈託のない笑顔で隣で笑ってくれるアイザックが最近、とてつもなく愛しく見えるっていうことは、とりあえずまだ内緒。


★★★★★

 最後まで読んでくださりありがとうございました!
 いつか、リリーにも、ラブラブちゅっちゅする未来が来ますように。

 作者 かのん

 
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