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二話 デビュタント
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デビュタント当日。私は十五歳にして初めての舞踏会であり、婚約者である公爵家令息のレオ様と共に王城へと向かっていた。
レオ様との婚約が決まったのは生まれて間もない頃である。
それからずっと婚約者ではあったが、レオ様もまた、妹の熱狂的な信者であった。
もはや妹は何かしらの宗教の長として君臨した方がいいのではないかと思ってしまうくらいである。
「はぁ……君さえいなければ、僕はエル嬢の婚約者となれるのに」
そんなことを毎回呟かれる身としては、ではどうぞエルの元へといってくださいと言いたくなる。ただ、貴族の令嬢として、建前ではちゃんと微笑みを携えている。
「申し訳ございません」
そう言ってにこやかに微笑むと、むっとしたようにレオ様は眉間にしわを寄せてそっぽを向いてしまった。
私は内心大きなため息をついた。
エルは過保護な両輪と兄の手によって屋敷以外の外へと出たことがない。だからこそまだ信者はいないものの、もしデビュタントを済ませたならば、大量に信者が増えるのではないかと私は内心ドキドキしている。
エルの信者大量増殖など考えただけで背筋が凍ってしまう。
家族に放置され続けた十二年間で、私はかなり学んだ。
妹には近寄ってはならない。
妹に近寄った者と接触は出来るだけ避ける。
妹が欲しいと言ったものは有無を言わず全て差し出す。
これは私の処世術である。はっきり言ってエルと戦って得することはなく、エルとは絶対的に距離を取った方がいいのである。
幼かったころは寂しかったし、悲しくて毎日泣いた。
けれど、もはやそれが私の中では普通となり、そして、ちゃんと世話してくれる人がいて、ごはんも食べられて教育も受けられるのだからと、愛に関しては諦めた。
愛されることを望むのは、エルを前にして一番やってはいけないことだ。
私はそれを嫌というほど学んでいた。
両親も、兄も、私に送られてくるプレゼントも。全てエルが奪っていった。
仲良くなれそうな侍女や使用人たちも、エルに出会ってしまえば全て奪われた。
だから、私は諦めることを学んだのだ。
愛くらい、別になくても生きていける。
私はその辺の令嬢よりも自分が逞しい自信がある。ただ、目の前にいる婚約者であるレオ様に関してはどうしたものかと頭が痛い。
はっきり言って、レオ様に熨斗を付けてエルへと送りたいところなのだが、公爵家同士の家と家をつなぐ婚約であり、エルに会ったことのないレオ様の両親はそれを良しとはしていない。
エルに会えばきっと考えも変わるのだろうがと私は内心思うのだが。
王城につき、レオ様は私を一応エスコートしてくれるが、顔はすごく不満げである。
それでも私は、エルのいない今日のデビュタントだけは幸福な気持ちのままでいたいなと思ったのであった。
レオ様との婚約が決まったのは生まれて間もない頃である。
それからずっと婚約者ではあったが、レオ様もまた、妹の熱狂的な信者であった。
もはや妹は何かしらの宗教の長として君臨した方がいいのではないかと思ってしまうくらいである。
「はぁ……君さえいなければ、僕はエル嬢の婚約者となれるのに」
そんなことを毎回呟かれる身としては、ではどうぞエルの元へといってくださいと言いたくなる。ただ、貴族の令嬢として、建前ではちゃんと微笑みを携えている。
「申し訳ございません」
そう言ってにこやかに微笑むと、むっとしたようにレオ様は眉間にしわを寄せてそっぽを向いてしまった。
私は内心大きなため息をついた。
エルは過保護な両輪と兄の手によって屋敷以外の外へと出たことがない。だからこそまだ信者はいないものの、もしデビュタントを済ませたならば、大量に信者が増えるのではないかと私は内心ドキドキしている。
エルの信者大量増殖など考えただけで背筋が凍ってしまう。
家族に放置され続けた十二年間で、私はかなり学んだ。
妹には近寄ってはならない。
妹に近寄った者と接触は出来るだけ避ける。
妹が欲しいと言ったものは有無を言わず全て差し出す。
これは私の処世術である。はっきり言ってエルと戦って得することはなく、エルとは絶対的に距離を取った方がいいのである。
幼かったころは寂しかったし、悲しくて毎日泣いた。
けれど、もはやそれが私の中では普通となり、そして、ちゃんと世話してくれる人がいて、ごはんも食べられて教育も受けられるのだからと、愛に関しては諦めた。
愛されることを望むのは、エルを前にして一番やってはいけないことだ。
私はそれを嫌というほど学んでいた。
両親も、兄も、私に送られてくるプレゼントも。全てエルが奪っていった。
仲良くなれそうな侍女や使用人たちも、エルに出会ってしまえば全て奪われた。
だから、私は諦めることを学んだのだ。
愛くらい、別になくても生きていける。
私はその辺の令嬢よりも自分が逞しい自信がある。ただ、目の前にいる婚約者であるレオ様に関してはどうしたものかと頭が痛い。
はっきり言って、レオ様に熨斗を付けてエルへと送りたいところなのだが、公爵家同士の家と家をつなぐ婚約であり、エルに会ったことのないレオ様の両親はそれを良しとはしていない。
エルに会えばきっと考えも変わるのだろうがと私は内心思うのだが。
王城につき、レオ様は私を一応エスコートしてくれるが、顔はすごく不満げである。
それでも私は、エルのいない今日のデビュタントだけは幸福な気持ちのままでいたいなと思ったのであった。
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