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十話 舞踏会
しおりを挟むロラン様と一緒に過ごすようになってから、私は、普通の男女とはこんなにもいろいろなところに出かけるのだということを知った。
王立の公園へと遊びに出かけたり、町へと歌劇を見に行ったり。
ロラン様は私の意見を聞きながら、いろいろなところへと一緒に出掛けてくれたが、一番、私が嬉しかったのが、カフェ巡りである。
町の小さなカフェに一緒に出掛けて、他愛ない話をする。
それが一番楽しかった。
ロラン様は第二王子の護衛騎士であるから、忙しいのにも関わらず、休憩時間や、午前休みの日なども利用して私と会う時間を設けてくれた。
そして会うたびに、照れくさそうに花束をくれる。
頬を赤らめながら、こちらをちらちらと見つめてくる視線が可愛らしくて仕方なくて、私の心はいつの間にか、ロラン様で埋め尽くされていた。
そして今日参加する舞踏会で、ロラン様にこの気持ちを伝えようと、私は決意していた。
「お嬢様。とてもおきれいです。さぁ、お迎えが来たようですよ」
侍女にそう言われ、私は鏡に映る自分をもう一度確認してからロラン様の元へと向かった。
「お待たせいたしました」
そう、声をかけると、ロラン様は私を見て顔を赤らめ、そして頭をぽりぽりと掻きながら、慌てたような口調で言った。
「せ、セリーナ嬢は、どんどん綺麗になって……驚かされます。セリーナ嬢と、今日、舞踏会に参加できるのが夢のようです……」
その言葉に私も照れてしまい頬が熱くなる。
「えっと、私も、ロラン様と舞踏会に参加できることを嬉しく思います」
二人で照れていると、侍女たちにくすくすと笑われてしまう。
私たちは恥ずかしくなっていそいそと馬車に乗り込むと、舞踏会場へと向かった。
両親にはすでに婚約をする意向を伝えており、お母様は泣いて喜び、お父様は少し寂しそうにしていた。
お兄様はロラン殿なら安心だと、今日もしアベル殿にあったら、けりを入れてもらえなどと言っていた。
「今日は、楽しみましょうね」
「はい」
一緒に参加する初めての舞踏会である。
会場につくと、ロラン様は人目を引くからか、かなりの人から視線を向けられる。
「ほら、あちらがロラン様を射止めたご令嬢よ」
「あぁ、噂の。ロラン殿が相手なら、ご両親は安心だろうなぁ」
どうにも生暖かな視線が多いようで、私がどうしたものかと思っているとロラン様が言った。
「行きましょうか?」
「はい」
いつもは可愛らしいロラン様が堂々としており、さすがは騎士様だなと私は思わず見惚れてしまった。
王族の方々の挨拶が終わり、第一王子殿下と第二王子殿下がそれぞれの婚約者様とダンスを踊る。それが終わってから貴族の面々がダンスを始めるのだが、私は緊張していた。
アベル様は最低限しか踊ってくださらない人だったので、ダンスに自信がなかったのである。
「セリーナ嬢……その。私、あまりダンスに自信がないのですが、許していただけますか?」
すると自分と同じようなことをロラン様も考えていたと知り。私は笑ってしまった。
「実は私もなんです。ふふっ。私たち本当に気が合いますね」
「え? はは。そう言ってもらえると気が楽です。では行きましょうか」
「はい」
ロラン様と踊るダンスは本当に楽しくて、お互いに多少ステップを間違えてしまうところがあったけれど、それでも笑いあってどうにか乗り切った。
一緒にダンスするのが、こんなにも楽しいと、私はこの日初めて知った。
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