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九話 初々しい二人

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 二人は、現在、料理と向かい合いながらカチコチにお互いに固まっていた。

 どうしたらいいのかしら。アベル様とはいつも、アベル様の興味のある話をしていたけれど、ロラン様の好きな話題が思い浮かばないわ。

 ちらりと視線をロラン様へと向けると、ばちっと視線があって、お互いに慌てて視線を反らす。

 二人の間には、なんというか、何とも甘酸っぱい雰囲気が溢れており、それを侍女や侍従たちは見守っていた。

 話題こそ弾んではいないが、なんというか、雰囲気が似ており、見ていてもほほえましくなる光景であった。

「あ、あの、ここのデザートは美味しいと評判なのです。その、この間セリーナ嬢も甘いものを好むのかと思いまして……」

「え? そうなのですね。えぇ。私、甘いもの好きなんです」

「洋ナシのゼリーが絶品だそうです」

「そう、なのですね。楽しみです。でも、あの、ロラン様は甘いものは苦手なのでは?」

 ロラン様は顔をあげるとぶんぶんと横に振った。

「嫌いではありません! ただ、その……」

「何か?」

「この間もそうでしたが、こう、体格の良い男が甘いものを買おうというのには、勇気がいりまして、なので、嫌いではないのですが……一人では食べずらさがあります」

 顔を赤らめながら恥ずかしそうに言うロラン様に、私はくすくすと笑みをこぼした。

「男性も、大変なのですね。あの、ずっと不思議だったのですが、何故ロラン様がお使いを?」

「ベルタ様が仕事をしたくないとぼやかれて……私がいると口うるさく仕事をしろというものですから、それで厄介払いされたんです」

「まぁ!」

 そこから二人の会話は弾み始め、それを見守っていた侍女らもほっと胸をなでおろした。

 屋敷に帰ってから、私はソファに座ると今日のことを思いだしては顔がにやついてしまった。

「ふふふ」

「お嬢様。楽しかったですか?」

「えぇ。本当に楽しかったの。ふふ。私、こんなに男性と出かけて楽しいなんて知らなかったわ」

 きっとそれはロラン様が一緒だったからだろうと、私は思った。

 いろいろなタイプの男性がいるが、ロラン様は私の意見を一つ一つ聞いてくださり、気遣ってくれた。

 そして、私の気持ちを焦らすことのないように、またデートしてほしいと顔を真っ赤にしながら言ってくれた。

「あぁ、ロラン様って可愛らしい人ね」

 思わず呟くと、侍女たちはくすくすと笑う。

「第二王子殿下の護衛騎士を可愛らしいと言えるのは、きっとお嬢様くらいですわ」

「本当に」

 くすくすと侍女に笑われて、私も笑ってしまう。

「はぁ。こんなに笑ったのは久しぶりだわ。ふふ」

 私は、またロラン様と出かける日が楽しみになったのであった。


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