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八話 異世界の聖女
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レナは豪華な部屋に案内され、そして温かいお風呂に入ると侍女を下がらせて一人、風呂を満喫していた。
「ふふふ。ふふ。ふふふ!お風呂最高!」
この世界に来てから、驚きの連続で、こんなにゆっくりと出来た日などなかった。
日本から突然このシンファニア王国へと転移し、聖女だと言われ、闇を封印してほしいと言われ、言われるがままに旅に出た。
だが過酷な旅を予想していたのに、思っていた以上に過酷な旅では無かった。
移動は基本的に馬車であるし、護衛の騎士はたくさんついているし、何よりもかっこいい男性がたくさん自分を甘やかしてくれるのである。
文句と言えば風呂とトイレくらいのもので、食べ物だって質素だったわけではない。
そして何より旅にはダレンがいた。
王子様でかっこよくて、優しいダレン。そんな彼が自分の事を気遣ってくれる。それだけでレナは毎日が楽しかった。
周りの人達も聖女はいずれ王太子であるダレンと結婚するかもしれないと噂しており、それもレナの気をよくさせた要因の一つだった。
だがしかし、旅が進むにつれて道は険しくなっていく。そんなある日、暗闇に道が閉ざされ、皆が焦りを見せた。
「聖女様。どうか暗闇に光をもたらせないでしょうか?」
そう懇願されても、レナが教えられたのは闇の封印の方法だけであり、光なんてものを出現させる事なんてどうやればいいのか分からなかった。
「出来ないわよ。教えてもらってないもの。私の役目は闇を封印する事だけよ。それ以外は貴方達が何とかして。」
レナにとってはそれが当たり前だし、何より自分は異世界からわざわざこの国に来てやったのだ。突然出来ない事を言われても困る。
だがその一言で、次第に周りの人々の対応が徐々に変わっていくのをレナは感じ取った。
最初は自分に媚び諂っていた者達が、次第に冷たくなっていった。
「私は聖女なのよ!大切にしなさいよ!」
馬車の中で声を荒げむくれていたレナだったが、突然馬車の外が明るくなり、窓の外を見ると、そこにはまるで妖精のような美しい光がただよっていた。
「何あれ・・・」
光は暗闇の中を、道を示すように輝く。
レナは窓を開けてダレンに尋ねようと視線を向けた。
すると、光に手を伸ばし、愛おしそうにダレンが呟いたのだ。
「エミリア・・・ありがとう。傍にいなくても、君は僕達を思ってくれているんだね・・・。」
その姿を見てレナは眉間にしわをよせた。エミリアと言えば、ダレンの婚約者であると話を聞いたが、レナが現れた時点で、婚約者ではなくなるだろうとの噂も聞いていた。
「何あれ・・・聖女と王太子は結婚するんでしょう?・・はぁ?意味が分からない。」
レナは他の護衛の騎士達に視線を向けると、他の者達も、まるで感謝しているように光に手を伸ばし、その温かさを感じている。
「はぁ?」
光はレナの元にも現れ、レナの周りを温かく照らす。
レナはその光を振り払うと、窓を閉め、足を組んだ。
「あんな光が何だっていうのよ。闇を封印できるのは私なのに!」
それからも事ある毎に光は現れ、道を明るく照らす。
暗闇の中の光は美しいが、レナにとってはうっとおしくて仕方がない。しかも光は怪我をした者達を癒し、そればかりかダレンが闇の化物に襲われた危機をも、救ったのだ。
レナはその様子を馬車の中から見て、地団太を踏んだ。
「何よあれ・・・私が聖女なのに・・・エミリアっていう女の仕業なの?ふざけんなよ。私が皆にちやほやされるはずなのに・・・あの光のせいで・・・私はお荷物みたいな扱いじゃない!」
旅が進むにつれてレナは見た事もないエミリアに苛立ちを募らせていった。そして、闇を見事に封印した時すら光が周りに漂っていたことに怒りを感じたのだ。
「聖女殿。感謝します。」
ダレンの言葉に、レナは笑みを浮かべるとその腕に抱き着いて言った。
「いいのよ。でもこれで私が聖女だって証明されたでしょう?」
「ええ。貴方には感謝してもしきれません。」
「なら、ちゃんと私をお嫁さんにしてね。」
その言葉を呟いた瞬間、ダレンは驚いた様子でレナから離れて言った。
「すみませんが・・・僕には婚約者がいるので。」
「でも、聖女と王太子は結婚するものなのでしょう?」
美しいダレンを手に入れたいとレナはにやりと笑みを浮かべてそう言った。あの光の事は気に食わないが、闇を封印したのはレナだ。だから、自分の意見が通るのが当たり前と、そう、レナは思っていた。
「・・いや、確かに闇を封印したのは貴方ですが・・これほどまでに旅が順調に行ったのは、光の魔力の使い手であるエミリアのおかげで・・・その功績は貴方と同様と僕は考えています。」
「は?」
レナはその言葉に顔を歪めた。
「ふふふ。ふふ。ふふふ!お風呂最高!」
この世界に来てから、驚きの連続で、こんなにゆっくりと出来た日などなかった。
日本から突然このシンファニア王国へと転移し、聖女だと言われ、闇を封印してほしいと言われ、言われるがままに旅に出た。
だが過酷な旅を予想していたのに、思っていた以上に過酷な旅では無かった。
移動は基本的に馬車であるし、護衛の騎士はたくさんついているし、何よりもかっこいい男性がたくさん自分を甘やかしてくれるのである。
文句と言えば風呂とトイレくらいのもので、食べ物だって質素だったわけではない。
そして何より旅にはダレンがいた。
王子様でかっこよくて、優しいダレン。そんな彼が自分の事を気遣ってくれる。それだけでレナは毎日が楽しかった。
周りの人達も聖女はいずれ王太子であるダレンと結婚するかもしれないと噂しており、それもレナの気をよくさせた要因の一つだった。
だがしかし、旅が進むにつれて道は険しくなっていく。そんなある日、暗闇に道が閉ざされ、皆が焦りを見せた。
「聖女様。どうか暗闇に光をもたらせないでしょうか?」
そう懇願されても、レナが教えられたのは闇の封印の方法だけであり、光なんてものを出現させる事なんてどうやればいいのか分からなかった。
「出来ないわよ。教えてもらってないもの。私の役目は闇を封印する事だけよ。それ以外は貴方達が何とかして。」
レナにとってはそれが当たり前だし、何より自分は異世界からわざわざこの国に来てやったのだ。突然出来ない事を言われても困る。
だがその一言で、次第に周りの人々の対応が徐々に変わっていくのをレナは感じ取った。
最初は自分に媚び諂っていた者達が、次第に冷たくなっていった。
「私は聖女なのよ!大切にしなさいよ!」
馬車の中で声を荒げむくれていたレナだったが、突然馬車の外が明るくなり、窓の外を見ると、そこにはまるで妖精のような美しい光がただよっていた。
「何あれ・・・」
光は暗闇の中を、道を示すように輝く。
レナは窓を開けてダレンに尋ねようと視線を向けた。
すると、光に手を伸ばし、愛おしそうにダレンが呟いたのだ。
「エミリア・・・ありがとう。傍にいなくても、君は僕達を思ってくれているんだね・・・。」
その姿を見てレナは眉間にしわをよせた。エミリアと言えば、ダレンの婚約者であると話を聞いたが、レナが現れた時点で、婚約者ではなくなるだろうとの噂も聞いていた。
「何あれ・・・聖女と王太子は結婚するんでしょう?・・はぁ?意味が分からない。」
レナは他の護衛の騎士達に視線を向けると、他の者達も、まるで感謝しているように光に手を伸ばし、その温かさを感じている。
「はぁ?」
光はレナの元にも現れ、レナの周りを温かく照らす。
レナはその光を振り払うと、窓を閉め、足を組んだ。
「あんな光が何だっていうのよ。闇を封印できるのは私なのに!」
それからも事ある毎に光は現れ、道を明るく照らす。
暗闇の中の光は美しいが、レナにとってはうっとおしくて仕方がない。しかも光は怪我をした者達を癒し、そればかりかダレンが闇の化物に襲われた危機をも、救ったのだ。
レナはその様子を馬車の中から見て、地団太を踏んだ。
「何よあれ・・・私が聖女なのに・・・エミリアっていう女の仕業なの?ふざけんなよ。私が皆にちやほやされるはずなのに・・・あの光のせいで・・・私はお荷物みたいな扱いじゃない!」
旅が進むにつれてレナは見た事もないエミリアに苛立ちを募らせていった。そして、闇を見事に封印した時すら光が周りに漂っていたことに怒りを感じたのだ。
「聖女殿。感謝します。」
ダレンの言葉に、レナは笑みを浮かべるとその腕に抱き着いて言った。
「いいのよ。でもこれで私が聖女だって証明されたでしょう?」
「ええ。貴方には感謝してもしきれません。」
「なら、ちゃんと私をお嫁さんにしてね。」
その言葉を呟いた瞬間、ダレンは驚いた様子でレナから離れて言った。
「すみませんが・・・僕には婚約者がいるので。」
「でも、聖女と王太子は結婚するものなのでしょう?」
美しいダレンを手に入れたいとレナはにやりと笑みを浮かべてそう言った。あの光の事は気に食わないが、闇を封印したのはレナだ。だから、自分の意見が通るのが当たり前と、そう、レナは思っていた。
「・・いや、確かに闇を封印したのは貴方ですが・・これほどまでに旅が順調に行ったのは、光の魔力の使い手であるエミリアのおかげで・・・その功績は貴方と同様と僕は考えています。」
「は?」
レナはその言葉に顔を歪めた。
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