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二十一話 最終話 ルナの幸せな日

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 スノーティアはその後、サイラスのことが好きだったために記憶を取り戻したことは秘密にしていたのだと語った。男爵家と協力していなかったことで公爵家へは戻されることになったが、妊娠中ということもあり、半ば軟禁状態となっている。

 サイラスは謹慎期間が開けた後に公爵家へと婿入りすることが決められたが、再教育が必要ということで公爵家で見習いから務めるとのことであった。

 娘にすでに手を付けられたことで公爵は怒りを未だ鎮めておらず、サイラスは厳しい立場へと立たされることであろう。

 男爵家は爵位を取り上げられ、国に波乱を起こそうとした罪にて投獄されている。

 ルナは事の顛末をイーサンから聞きながら、スノーティアのことを思った。

 おそらくスノーティアは同じく転生者であるが、この世界を未だにゲーム感覚で生きていたのだろう。今後はしっかりと生きて行ってほしいと願った。

「ルナ?」

 名前を呼ばれ、ルナが顔を上げるとイーサンが優しげな瞳でルナを見つめた。

「考えごとかな?」

「はい。・・・スノーティア様はどうなるかなぁと・・・」

「まぁ、実家には帰れたのだし、大丈夫だろうよ。まぁ、社交界には・・・しばらく出られないだろうけれどね」

 イーサンの言葉にルナは頷き、紅茶を一口飲んだ。

「それよりさ、ルナ。あの、そろそろ・・・・その、結婚式について、話を」

「ふっ!」

 ルナは思わず紅茶を噴き出しそうになるのをぐっと堪えると、顔を真っ赤にしてイーサンを見た。

「け、けけけけ結婚式ですか!?」

「あ、うん。ごめんね。気が早いか。うん。その、でも・・・私は早く君と結婚したいんだ」

「は、はひ」

「ごめんね。思っていた以上にさ、そのがっついて・・・その情けないんだけれど」

 イーサンは顔を赤らめるとそう言ってルナの手を優しく握った。

「こんな気持ちになるのは初めてで、君が好きで、不安なんだ。君が、私の元からいなくなってしまうのではないかと」

 その言葉に、ルナは静かにイーサンの瞳を見つめた。

「私はこの外見だ。忌避されることも多い。きっと君にもこれからたくさん嫌な想いをさせるかもしれない。けれどね・・・ごめん。君が好きなんだ」

 そう言ったイーサンの手は微かに震えていた。

 ルナはそんなイーサンの手を握り返す。

 前世を思い出した当初は、イーサンとこんな関係になるとは思ってもみなかった。けれど、イーサンと話をするたびに、サイラスとは違う優しさに、笑顔に、穏やかな時間に惹かれた。

 そして今、ルナははっきりと自分の気持ちが分かる。

「私も、イーサン様が好きです。大好きです。ですから、はい。結婚、こちらこそよろしくお願いいたします」

 イーサンはその言葉に、嬉しそうに目じりを下げる。

 年上なのに、可愛い人だ。

 ルナはこの人と結婚できるなんて自分は本当に幸せ者だなぁと、思うのであった。



★★★★

 最後まで読んで下さりありがとうございました。
 読んで下さった皆様に感謝です。

 作者 かのん


 
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