7 / 14
七話
しおりを挟む私は今盛大に戸惑っている。
夕食を済ませたところまでは良かったのだ。だが、それからが問題である。
薄っぺらい、ナイトドレスなるものを侍女さんに着せられた。可愛いからいいか。いや、よくない。可愛らしいワンピースのようなものなのだが、胸元が大きく開いているし、ひらひらしている。これでは恐らく布団に入ったらスカートが捲れるだろう。私の寝相は最悪だ。
そして、私のベッドにはにこやかに四人が腰掛けている。
恐らくこれは、貞操の危機とやらだろう。
二十九歳三十路一歩手前の私は、イケメン四人をあしらえるような技術は持っていないので取りあえず、四人に言った。
「その、まだ出会ったばかりなので、その・・そういう事はできましぇん!」
盛大に舌を噛んだ。思わず痛みで目が潤む。
するとイケメン四人が両手を顔に当てて何か悶えている。何だかよく分からないが、イケメンは悶えても絵になるのかと、そんな事を考えてしまう。
「あの・・・」
私がおずおずと言った様子で小首をかしげると、カインが言った。
「大丈夫だ。ルカの気持ちがちゃんと決まってから、その、そういう閨の事はしようと四人で決めた。だから、一緒にただベッドで寝るだけだ。」
えぇー。ちょっと待って。なら別々で寝ましょうよ。私達初めて会った同士だし、ベッドだってそんなに広くは・・ってめちゃくちゃ広いなベッド。そうか、一妻多夫制だから広めなのかな。
それとも部屋がないんだろうか。
私がどうしようかと悩んでいると、エバンが立ち上がって私の手を引きベッドへと促す。
「ルカ、さっき俺の尻尾さわりたそうにしてたでしょ?触っていいよ?だからベッドで一緒に寝よう?」
「え!?本当に!?寝る寝る!」
思わず勢いでそう答えてしまい、はっとなる。
カインにライにクレストは見事な笑顔で私をベッドへといざなってくる。
えぇい!女は度胸だ。私はベッドに横になると横にいるカインの尻尾を優しく撫でた。ふわっふわとしていてとても心地良く、撫でていると何だか幸せな気持ちになる。
すると、私の頭をカインやライ、クレストが撫ではじめ、私は戸惑って固まった。
接触が過多すぎる。頬や腰のラインも撫でられると何だかぞくぞくしたものが走るし、恥ずかしくてどきどきとしてしまう。
だめだ。
しかもイケメン達の顔がイケメン過ぎて辛い。
「お、おさわり禁止です!」
思わずそう声を上げると、四人はきょとんとした後に笑い声を上げて頷いた。
「あぁ。すまんすまん。余りに可愛くってな。」
「僕達、奥さんが出来た事に浮かれているんだ。ごめんね。」
「ルカが嫌がる事は絶対にしませんから。安心して下さい。」
「俺も。あ、でも俺の事はいつでも触っていいからな。」
私はそう言われて思わず唇をとがらせてしまう。
私ばっかりが振り回されて酷いとしか思えない。だが、ベッドに横になってからすぐに睡魔が襲ってくるのを感じた。
そりゃあそうだろう。突然異世界に飛ばされて、森の中歩いて、神殿に来て、体は疲れているのだ。瞼がだんだんと重たくなり、私はすぐに意識を失った。
夢の中でもイケメン達に頭を撫でられて、ついにやけそうになった事は内緒だ。
60
お気に入りに追加
1,951
あなたにおすすめの小説
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。
112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。
ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。
ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。
※完結しました。ありがとうございました。
暗闇に輝く星は自分で幸せをつかむ
Rj
恋愛
許婚のせいで見知らぬ女の子からいきなり頬をたたかれたステラ・デュボワは、誰にでもやさしい許婚と高等学校卒業後にこのまま結婚してよいのかと考えはじめる。特待生として通うスペンサー学園で最終学年となり最後の学園生活を送る中、許婚との関係がこじれたり、思わぬ申し出をうけたりとこれまで考えていた将来とはまったく違う方向へとすすんでいく。幸せは自分でつかみます!
ステラの恋と成長の物語です。
*女性蔑視の台詞や場面があります。
ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。
ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。
ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。
竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。
*魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。
*お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。
*本編は完結しています。
番外編は不定期になります。
次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。
ついうっかり王子様を誉めたら、溺愛されまして
夕立悠理
恋愛
キャロルは八歳を迎えたばかりのおしゃべりな侯爵令嬢。父親からは何もしゃべるなと言われていたのに、はじめてのガーデンパーティで、ついうっかり男の子相手にしゃべってしまう。すると、その男の子は王子様で、なぜか、キャロルを婚約者にしたいと言い出して──。
おしゃべりな侯爵令嬢×心が読める第4王子
設定ゆるゆるのラブコメディです。
キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
王太子妃、毒薬を飲まされ意識不明中です。
ゼライス黒糖
恋愛
王太子妃のヘレンは気がつくと幽体離脱して幽霊になっていた。そして自分が毒殺されかけたことがわかった。犯人探しを始めたヘレン。主犯はすぐにわかったが実行犯がわからない。メイドのマリーに憑依して犯人探しを続けて行く。
事件解決後も物語は続いて行きローズの息子セオドアの結婚、マリーの結婚、そしてヘレンの再婚へと物語は続いて行きます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる