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第三十三話
しおりを挟むオーレリアは部隊を率いてグレッグの軍の駐屯地へと急いで向かった。
何故だか大量の妖精達がお祭り騒ぎでついてきていてまるで緊張感はなく、オーレリアは休憩の時などそれを見て束の間、神経を和らげた。
「見て、休憩の度にオーレリア皇女殿下が私達を励まそうと微笑んでくださるわ。」
「気丈なお方だ。」
「やはり我らの王だけの事はある。」
「肝が座っているなぁ。」
「これは負けていられない。我らが少しでも不安に思えば、オーレリア皇女殿下の負担になるだろう。」
「って言っても、負ける気はしないがな。」
「本当になぁ。」
本来は、負け戦である。例え貴族らから支持を受けようと、民衆から支持を得ようと、まだ謀反を起こすには軍の準備が足りていない。
しかも、この編成された部隊も殆どが暗部。正攻法の戦い方をしたことが無い。
だからこそ、正面からでは勝てないだろう。
だが、オーレリアは言ったのだ、
まずは話をしに行くと。
その気持ちを皆が理解し、指示がない限りはこの身に刃が突き立てられようと動かない事を決めていた。
平和を重んじる皇女殿下の意思を尊重したいと皆が思っていた。
「あの微笑み、きっと皇女殿下が王になれば、賢王と呼ばれるようになるのだろうな。」
「いや、聖獣を味方につける聖獣王ではないか?」
「いやいや、あの妖精のような美しさだぞ。妖精王ではないか?」
「おいおい、それではおとぎ話のようではないか。」
その言葉に皆が笑った。
確かに、おとぎ話のようだ。
だが、現実。
「それでも、このおとぎ話を殿下ならばハッピーエンドにして下さると信じている。」
「あぁ。」
オーレリアは皆がこちらを見ているのに気が付き、その瞳に希望を宿しているのを見て自分の中の勇気を奮い立たせる。
皆が信じてくれている。
そう思うだけでオーレリアの胸には勇気が満ちていく。
『オーレリアがやる気だ!』
『ファイト~!』
『僕達も応援するよー!』
『お空よ晴れろ!』
『さぁ進むぞー!』
妖精達の力もあってか、天候も良かったことで、数日のうちにグレッグの元へと駆け付けることが出来た。
だが、オーレリアはその駐屯地の様子を谷の上から見つめて息を呑んだ。
テントの数だけでも相当数来ていることが分かる。
この数は明らかにオーレリアを理由にして一戦交えるつもりだったのではないかと疑わざるを得ない。
兄が戦闘狂であった事を思い出し、オーレリアは思案した。
このまま正面からいった場合、本当に、兄は戦いを止めるだろうか。
その時、聖獣ランドルフがオーレリアに擦り寄った。
『我が王よ、そなたは真っ直ぐに突き進めばいい。』
「え?でも、兄がもし武力にでたら、、、。」
ランドルフはふぐふぐと笑いを漏らした。
『我を誰と?聖獣ランドルフは、オーレリア皇女の守護聖獣だ。大丈夫。』
何が大丈夫なのだと尋ねようとする前に、ランドルフは言った。
『自らの王が誰であるのか、きっと皆が見極めるだろう。だからこそ、そなたは真っ直ぐに王道を歩まねばならん。』
オーレリアは、その言葉に一度顔を引き締めると頷いた。
背けてはならない。
オーレリアは心を決める笑みを浮かべた。
「ありがとう。心が決まったわ。」
『それでいい。』
オーレリアは決意を固めるとエドモンドとエルザを呼んだ。
兄との対峙のときが来たのだ。
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