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第十三話

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 オーレリアは、朝目覚めると昨日のことを思い出して枕に顔を埋めた。

 知りたくなかった。

 だが、今ならまだ忘れられると自分に言い聞かせる。

 温もりに慣れてはいけない。自分にはやるべき事があるのだ。誰かに甘えていいような環境にはない。

 オーレリアは起き上がると侍女に身だしなみを整えてもらい気合を入れる。

 気を抜いていたのが悪いのだ。

 暗殺など自分にとっては日常ではないか。気を抜いたからあんなに弱くなるのだ。

 背筋を伸ばし、朝食を食べ、いつものように学園へと向かう。もちろん今日は紅茶に毒が入っていたし、廊下を歩けば毒蛇に出会い、避けて通った。

 だがそんな事は些細なことだ。

『オーレリア大丈夫?』

『僕達も昨日みたいな事にはもうならないようにしたからね。』

『だから、心配しないで。』

「ありがとう。私も、気を抜いていたのが行けなかったのよ。大丈夫よ。」

 優雅に微笑み、そして教室の扉を開けるといつもにも増してクラスの中には妖精達が群がっていた。

『これだけ仲間を呼べば、完璧だよ!』

『大丈夫!』

『安心して!』

 その様子に、オーレリアの表情は崩れ、優雅な笑みではなく、少女らしい花が綻ぶような笑みに変わる。

 クラスの皆は息を呑んだ。

 何という可憐な姿であろうか。

 朝から何故そんなに素敵な笑顔を振りまくのかと令嬢も令息も胸がきゅんとときめいてしまい苦しくなる。

 レスターもその姿を見て目を丸くした。

 昨日、あんなにも怖い目にあったのにそれを全く感じさせない姿に、さすが一国の皇女だと感心してしまう。

 オーレリアは席につく前にレスターの前に来ると昨日のお礼を伝えた。

「レスター様、おはようございます。昨日はありがとうございました。」 

「おはようございます。オーレリア皇女殿下。いえ、私は大した事はしておりませんので。」

「またお礼はさせてくださいね。」

 オーレリアはそう言うと席につこうとしたのだが、レスターに手を取られもう一度レスターに首を傾げて顔を向ける。

「昨日の事、詳しく今日お聞かせ願いたい。」 

「え?」

「あれは、、ここで話すべきではないでしょうが、貴方の身が心配なのです。」

 オーレリアは自分の胸がドキッとなる音を感じ、それを無視するように顔を背けると、ヨハンがレスターの手を払い、微笑みを向けた。

「レスター殿。皇女殿下に失礼だよ。」

「ヨハン殿。私は別に。」

「君はいつものようにマリア嬢と仲良くしていなよ。ほら、来たよ。」

「え?」

 すると、廊下からマリアがレスターを呼び出し、レスターは渋々といった様子でマリアの所へと向かっていった。

 オーレリアはその様子に、胸がチクリと痛む。だがそれに気づかないふりをしてヨハンに笑みを向けた。

「ヨハン様。おはようございます。」

「、、、、おはよう。」

 ヨハンは不貞腐れたかのような表情を浮かべると自分の席へと向かってしまった。

 何か気に触るような事をしたたろうかと思いながらも、席につくとため息が漏れる。

 ちらりと見れば、レスターはマリアと楽しそうに会話してまた胸が痛む。

 マリアを、羨ましく思ってしまう。

 駄目だと頭を振る。

 自分が一番に優先しないといけない事は、死なずに三年間過ごすこと。そして、民の為に働く事である。

 小さく息を吐き、背筋を伸ばす。

 昨日の暗殺者はいつもとは違い実力行使に出てきた。その上、自分を魔女の娘と呼んだ。

 ふと思う。

 何故、自分はあの瞬間殺されなかったのだろうか。

 魔女の娘、、、だから?

 自分の母親についてあまり知ることこなかったオーレリアであったが、知らなくてはならないのかもしれないと思う。

 魔女とは、一体、なんなのだろうか。

 レスターに対する気持ちを、オーレリアは気づかないフリをして、その思いに蓋をすると、目の前にある謎に意識を向けるのであった。



 
 

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