21 / 24
リナリーの悪巧み21
しおりを挟むリナリーはやってみたかった。
魔王降臨。
そして、カールに女と思われていなかった事を気にし、魔王の横に相応しい装いに身を包んでみたかった。
ただ舞踏会に行くのではつまらない。せっかくなら皆の想像するような魔王とその后のように現れてみたくて、シバにも協力してもらった。
思った以上に効果はあったようで、皆が息を呑んだのが分かった。
不意にアランの声が聞こえた。
「美しい、、、」
そんな言葉をアランから聞くとは思っても見なかった。
「聞くな。耳が汚れる。」
皆に聞こえないようにシバが耳元で囁く。そして腰に手を回してリードをしてくれる。
皆がこちらを見つめてくる。
男性とよく目が合う。
美しく見えるように微笑みで目線に答えると頬を朱に染める。しかし次の瞬間青ざめて目をそらされてしまう。
後ろを振り返ると、シバがにっこりと甘く微笑んでいる。
「リナリー。あまりその美しい笑みを振りまくな。焼いてしまう。」
顔が一気に熱くなる。
リナリーとシバはアランの前まで移動すると頭を下げた。
「第二王子殿下。婚約者様。この度はご婚約おめでとうございます。遅れてしまい申し訳ありません。」
「い、、、いや。その、本当にリナリーか?」
リナリーはくすりと笑って首を傾げた。
「もう、私の顔をお忘れですか?」
「いや、そうではなく、あまりにも、、、美しく、、、、ひっ!」
思わずアランがそう言ってリナリーに手を伸ばそうとした時、リナリーを後ろからシバは抱き締め、自分へ引き寄せた。
「アラン殿下。ご婚約おめでとうございます。婚約者殿も大変お美しいですね。」
「ま、、、、シバ殿。祝の言葉ありがとうございます。婚約者のクレアです。」
「クレアでございます。」
うっとりと、シバに媚びるような目つきに、リナリーは目を細くし、にこやかに笑みを浮かべて言った。
「本当にお似合いですわ。(馬鹿そうで。)」
「い、いや。その。リナリーは暮らしはどうだ?」
リナリーはシバを見上げ、そして笑みを浮かべるとアランを見つめていった。
「とても良くしていただいております。」
「そ、、そうか。」
「アラン殿には感謝してもしきれない。こんな素敵な人を私の妻に迎えられるのだ。これ程の幸せはない。」
シバは当てつけるようにそう言うと、リナリーを見つめた。
「リナリー。アラン殿はお忙しい。国王陛下にご挨拶に行こう。」
「えぇ。」
寄り添って歩いていく二人をアランは呆然と見送った。
国王は挨拶に行くと、少しばかり気まずそうにしていたが、こちらの幸せ気な様子に安堵したようであった。
「リナリー。リナリーの父上はどちらに?」
「父ですか、、、えっと、あそこに。」
「挨拶に行こうか。」
「え、、、えぇ。」
久しぶりの再開に、リナリーは思いの外、会い辛さを感じた。
「リナリーか。」
「お久しぶりでございます。」
「お初にお目にかかります。ガボット公爵。」
ガボット公爵はシバに恭しげに頭を下げた。
「お初にお目にかかります。魔王陛下。」
「こちらから挨拶に伺えず申し訳ない。」
「いえ、、、リナリー。元気でやっているか。」
「、、、はい。」
「そうか。」
リナリーは、小さく息を吐くと、父を見た。
「お父様。、、、どうしてだったのでしょうか。」
何がとは言わず、そう尋ねるとガボット公爵は笑った。
「あれにはもったいない。それに、、、幸せだろう?」
その言葉に、リナリーは息を呑んだ。
「シバ殿。」
「はい。」
「娘をよろしく頼みます。」
「大切にします。」
多くは語らず、ガボット公爵は礼をすると立ち去った。
「良かったのか?」
「えぇ。、、、私の事を少なからず考えて下さっていた事が分かりましたので。」
自分が思っていた以上に父は自分の事を思ってくれていたのだという事が短い会話で感じられた。
それだけで満足だ。
「シバ様。ありがとうございます。」
「いや、義父上にお会い出来て良かった。」
二人は寄り添い笑みを交わしあった。
0
お気に入りに追加
1,203
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された悪役令嬢。そして国は滅んだ❗私のせい?知らんがな
朋 美緒(とも みお)
ファンタジー
婚約破棄されて国外追放の公爵令嬢、しかし地獄に落ちたのは彼女ではなかった。
!逆転チートな婚約破棄劇場!
!王宮、そして誰も居なくなった!
!国が滅んだ?私のせい?しらんがな!
18話で完結
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
21時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる