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弟の幸せな日17
しおりを挟む僕の味方はいつだって兄様だった。
周りは僕をいつも闇へと誘おうとする。
『お前は邪魔だ』
『汚らわしい王家の恥』
『王家の血を引いていないのではないか』
『悍ましい。人間のようだ。』
『死んだほうがいい。その方が周りの為だ。』
否定的な言葉ばかりが並ぶ。
言葉巧みに僕と兄様を対立させようとする輩もいる。
誰も信用出来ない。
姉上にもうすぐなるリナリー。
ずっと男の子だと思っていた。
明らかに見た目も言葉使いも女性なのに。
今思えば勝手に自分と同じ境遇の者を作り上げようとしていたのかもしれない。
髪や目の色が黒でない、魔力を持たない同じ境遇の者を。
ずっと、兄様が味方なのは分かっていた。だから兄様の力となれるように文武両道を目指し励んできた。
たが、心から分かり会えるものが欲しかった。
一人ぼっちは、嫌だった。
だが、姉上の言葉で、なんて小さな事で自分は悩んでいたのだろうと馬鹿らしくなった。
『魔力をもっていないから魔族側がいづらいと言うなら、人間の国にこっそり行ってしまえばいいのに。私にはこれっぽっちも魔力なんてありませんわよ?クーデターを起こすよりも安全かつ楽ではありませんか。』
僕を誑かそうとしていた者へはっきりと言った正論。
そりゃあそうだ。
僕なんか、人間の国にいけば同じただの人だ。
たったそれだけの事。
そんな事になんで気づけなかったのか、存外自分は馬鹿だったのだなと思った。
「姉上。」
きょとんとした表情は年上なのに可愛らしいなと感じてしまう。
「カールどうしたの?」
シバ兄様と兄弟だということに最初は驚いた姉上だったけれど、すぐに気を取りなおすと、目が似ているだの、鼻が似ているだのと似ているところを見つけては嬉しそうに微笑む姿が愛らしかった。
「大好きです。姉上が出来て本当に嬉しいんだ。」
そう言うと、花が咲いたように可愛らしく微笑み、小さな子にするように抱きしめてくる。
「私も!弟が出来てとても嬉しいですわ。」
姉上の後ろにいた兄様と目があった。
顔が強張り、明らかに嫉妬している。
兄様がこんなにも独占欲が強く、心の狭い男だとは知りたくなかった。
僕はニヤリと笑みを浮かべると姉上の背中に手を回しぎゅっと抱き締め返す。
兄様が嫉妬し、怒っているのが分かって面白い。
あぁ。
僕は幸せだな。
世界で一番素敵な兄様と姉上の弟でいられるなんて、幸せすぎる。
「兄様、姉上!大好きです!」
そう言わずにはいられないくらい幸福を感じた。
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