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リナリーの秘密の時間10
しおりを挟む朝日がゆっくりと空を色付けじめる頃、リナリーは部屋で習慣である柔軟を行っていた。
ただ、最近少しばかり物足りなくも感じる。
魔王城に来て、すでに二ヶ月が経とうとしている。結婚の儀はあと四ヶ月後に決まり、リナリーの結婚の衣装などが忙しなく作り進められていた。
リナリーも招待状作りに、マナーレッスン、貴族名鑑の確認など、日々目まぐるしい毎日を送っていたが、元々公爵令嬢として申し分のない力をもっているリナリーにとっては別段難しいことではなかった。ただ、第二王子の婚約者であった時は剣技のレッスンもあった為に体を動かすことが出来た。ただ、今はそれが無く、物足りなく感じてしまうのだ。
「少し体を動かしに行ってもいいかしら。」
ここしばらくで気付いた事だが、どうやら自分の居場所はシバにはどこにいても分かるらしい。守護の魔法を掛けているから分かるのだと聞き、それならばと、魔王城内であれば何処でも見て回って良いかとシバに問うと良いとの返事を受けていた。
アンは一緒に居ようとするが、たまには一人の時間も欲しいと伝えると、存外あっさりと魔王城内ならば良いとの了解も得た。
リナリーは動ける格好が良いと思い立つと、シバから体を動かしたい時に着れば良いと貰ったシャツとズボンに、ベストを羽織り、髪は一つに括った。
それだけで印象はがらりと変わり、まるで少年のように見える。
シバからこの服を貰った時には衝撃を受けたが、着てみると、とても動きやすく驚いた。
いついかなる時に自衛の時が来るか分からないとの事で、父親から剣技の指導を受ける時はいつもドレスだった。だからこそ、すごく動きやすく感じる。
「さてと、じゃあ行きましょうか。」
シバから貰ったのは服だけではなく、リナリーの腰にはレイピアが携えられている。
静かに王城を出ると、リナリーは庭に出た。
朝の風は少し冷たく、目を閉じて息を吸うと、肺いっぱいに心地よい空気が収められる。
準備運動をすませ、リナリーは剣技の型をとっていく。一つ一つの動きを確かめながら、体の感覚を研ぎ澄ませていく。
体が少し温まり、汗が一筋頬を伝ったときであった。
がさりという音か聞こえ、振り返るとそこには一人の男の子が立っていた。
ただ、この国には珍しく、髪は白髪で、瞳の色は薄いグレー。
こちらを伺う姿は、何かを推し量っているようなそんな雰囲気がした。
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