9 / 9
九話 呪いの解ける方法
しおりを挟む
結局アレクサンダーの呪いは不完全に溶けたらしく、子どものままでも聖剣は使えるようになったものの、元の大きさに戻る為には、メルルのキスが必要なようであった。
しかし、アレクサンダーはそれを直接メルルに言うのを恥ずかしがり、メルルから逃げ回っている。
「ちょっとアレクサンダー。貴方だって自分の国に戻りたいのでしょう?それに、魔女のいう事が本当なら、その宝を手に入れれば貴方は幸せになるらしいじゃない。宝って一体何だったのか教えて頂戴よ。」
暗黒竜はその様子を喉をゴロゴロと鳴らして笑い、アレクサンダーはそれを恨めしげに睨みつけた。
「ねぇ、暗黒竜様。アレクサンダーは困っているの。暗黒竜様は宝物をいっぱい持っているのだから、一つくらいアレクサンダーにあげたら?」
メルルの言葉に暗黒竜は悲しげに目を細めると答えた。
「そうだなぁ。その宝はアレクサンダーが自ら手に入れなければならないものなのだ。アレクサンダーが実力で手に入れれば、もちろん祝福してやろう。」
その言葉にメルルは瞳を輝かせると、アレクサンダーの方を見て言った。
「ほら、暗黒竜様もこう言っているわ。アレクサンダー。手伝ってあげるから、宝が何なのか教えて頂戴?」
アレクサンダーはげんなりとした様子で、メルルにバケツを手渡すと、自らは絞ったタオルで暗黒竜の体の鱗を磨き始めた。
「メルル。今日は暗黒竜の鱗磨きをした後に、銀竜の住処の掃除をするんだろう。早くしないと日が暮れるぞ。」
「あ、そうだった。でも、ちゃんと教えてよ?」
「はいはい。」
そう言いながら、アレクサンダーはメルルの仕事を手伝う。何だかんだ、竜様方のメイドというのも忙しい物なのだ。
暗黒竜はその様子を見ながら楽しそうに目を細めた。
「まぁ、お前もたまにはここでのんびりしたらいい。国の英雄はお前一人ではないのだから、大丈夫だろう?」
アレクサンダーは何だかんだ国の情勢にも詳しいこの暗黒竜は何者なのだろうと思いながら、ため息をつく。
「そういうものなの?」
メルルが尋ねると、アレクサンダーは頷いた。
「ああ。勇者以外にも、魔法使いやら、聖騎士団長やら他にもいろいろいるからな。」
「ふーん。そっか。そうなんだ。」
その言葉に何故かほっとしている自分にメルルは首を傾げた。何故自分は今安心したのだろうかと思いながら、きっとアレクサンダーと一緒にいるのに慣れ過ぎて、一人になるのが寂しいのだなと結論付ける。
「それなら、ずっとここにいてくれればいいのに。」
思わずメルルはそう口にして、それから、何故か急に恥ずかしくなって顔を赤らめた。
アレクサンダーはメルルの言葉に目を丸くして固まりながらも、どうにか、その口をゆっくりと動かした。
「め、メルル?それって・・どういう意味で・・・」
メルルは慌てた様子で顔を真っ赤にすると言った。
「分かんない!何で、私、こんなに恥ずかしいの?もう!アレクサンダーのせいよ!」
「ええぇ?!ごっごめん。」
そんな二人の様子を、暗黒竜は微笑ましげに眺めると、空に飛びあがって呟いた。
「子どもは、男の子も女の子も見たいものだなぁ。」
暗黒竜の言葉に、アレクサンダーは聖剣を引き抜くと、暗黒竜との鬼ごっこが始まったのであった。
メルルはそんな姿にため息をつくと、苦笑を浮かべるのであった。そしてふと思い出す。
「あ、そういえば、泉でおぼれた時の助けてくれたお礼、まだ言っていなかったな。あの時・・唇に何か・・・あたったような、そうでなかったような。」
メルルがアレクサンダーの呪いがどうやって解けるのかを知るのは、そう遠くない未来である。
おしまい
★★★★★
この物語はこれで終わりとなります。二人はその後、もちろんハッピーエンドでしょうが、メルルが気づくまでに時間がかかりそうです。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。また、よければ、作者の名前も憶えていただけると、嬉しいです。
読んで下さり、ありがとうございました。
作者 かのん
しかし、アレクサンダーはそれを直接メルルに言うのを恥ずかしがり、メルルから逃げ回っている。
「ちょっとアレクサンダー。貴方だって自分の国に戻りたいのでしょう?それに、魔女のいう事が本当なら、その宝を手に入れれば貴方は幸せになるらしいじゃない。宝って一体何だったのか教えて頂戴よ。」
暗黒竜はその様子を喉をゴロゴロと鳴らして笑い、アレクサンダーはそれを恨めしげに睨みつけた。
「ねぇ、暗黒竜様。アレクサンダーは困っているの。暗黒竜様は宝物をいっぱい持っているのだから、一つくらいアレクサンダーにあげたら?」
メルルの言葉に暗黒竜は悲しげに目を細めると答えた。
「そうだなぁ。その宝はアレクサンダーが自ら手に入れなければならないものなのだ。アレクサンダーが実力で手に入れれば、もちろん祝福してやろう。」
その言葉にメルルは瞳を輝かせると、アレクサンダーの方を見て言った。
「ほら、暗黒竜様もこう言っているわ。アレクサンダー。手伝ってあげるから、宝が何なのか教えて頂戴?」
アレクサンダーはげんなりとした様子で、メルルにバケツを手渡すと、自らは絞ったタオルで暗黒竜の体の鱗を磨き始めた。
「メルル。今日は暗黒竜の鱗磨きをした後に、銀竜の住処の掃除をするんだろう。早くしないと日が暮れるぞ。」
「あ、そうだった。でも、ちゃんと教えてよ?」
「はいはい。」
そう言いながら、アレクサンダーはメルルの仕事を手伝う。何だかんだ、竜様方のメイドというのも忙しい物なのだ。
暗黒竜はその様子を見ながら楽しそうに目を細めた。
「まぁ、お前もたまにはここでのんびりしたらいい。国の英雄はお前一人ではないのだから、大丈夫だろう?」
アレクサンダーは何だかんだ国の情勢にも詳しいこの暗黒竜は何者なのだろうと思いながら、ため息をつく。
「そういうものなの?」
メルルが尋ねると、アレクサンダーは頷いた。
「ああ。勇者以外にも、魔法使いやら、聖騎士団長やら他にもいろいろいるからな。」
「ふーん。そっか。そうなんだ。」
その言葉に何故かほっとしている自分にメルルは首を傾げた。何故自分は今安心したのだろうかと思いながら、きっとアレクサンダーと一緒にいるのに慣れ過ぎて、一人になるのが寂しいのだなと結論付ける。
「それなら、ずっとここにいてくれればいいのに。」
思わずメルルはそう口にして、それから、何故か急に恥ずかしくなって顔を赤らめた。
アレクサンダーはメルルの言葉に目を丸くして固まりながらも、どうにか、その口をゆっくりと動かした。
「め、メルル?それって・・どういう意味で・・・」
メルルは慌てた様子で顔を真っ赤にすると言った。
「分かんない!何で、私、こんなに恥ずかしいの?もう!アレクサンダーのせいよ!」
「ええぇ?!ごっごめん。」
そんな二人の様子を、暗黒竜は微笑ましげに眺めると、空に飛びあがって呟いた。
「子どもは、男の子も女の子も見たいものだなぁ。」
暗黒竜の言葉に、アレクサンダーは聖剣を引き抜くと、暗黒竜との鬼ごっこが始まったのであった。
メルルはそんな姿にため息をつくと、苦笑を浮かべるのであった。そしてふと思い出す。
「あ、そういえば、泉でおぼれた時の助けてくれたお礼、まだ言っていなかったな。あの時・・唇に何か・・・あたったような、そうでなかったような。」
メルルがアレクサンダーの呪いがどうやって解けるのかを知るのは、そう遠くない未来である。
おしまい
★★★★★
この物語はこれで終わりとなります。二人はその後、もちろんハッピーエンドでしょうが、メルルが気づくまでに時間がかかりそうです。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。また、よければ、作者の名前も憶えていただけると、嬉しいです。
読んで下さり、ありがとうございました。
作者 かのん
10
お気に入りに追加
361
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
義妹を溺愛するクズ王太子達のせいで国が滅びそうなので、ヒロインは義妹と愉快な仲間達と共にクズ達を容赦なく潰す事としました
やみなべ
恋愛
<最終話まで執筆済。毎日1話更新。完結保障有>
フランクフルト王国の辺境伯令嬢アーデルは王家からほぼ選択肢のない一方的な命令でクズな王太子デルフリと婚約を結ばされた。
アーデル自身は様々な政治的背景を理解した上で政略結婚を受け入れるも、クズは可愛げのないアーデルではなく天真爛漫な義妹のクラーラを溺愛する。
貴族令嬢達も田舎娘が無理やり王太子妃の座を奪い取ったと勘違いし、事あるごとにアーデルを侮辱。いつしか社交界でアーデルは『悪役令嬢』と称され、義姉から虐げられるクラーラこそが王太子妃に相応しいっとささやかれ始める。
そんな四面楚歌な中でアーデルはパーティー会場内でクズから冤罪の後に婚約破棄宣言。義妹に全てを奪われるという、味方が誰一人居ない幸薄い悪役令嬢系ヒロインの悲劇っと思いきや……
蓋を開ければ、超人のようなつよつよヒロインがお義姉ちゃん大好きっ子な義妹を筆頭とした愉快な仲間達と共にクズ達をぺんぺん草一本生えないぐらい徹底的に叩き潰す蹂躙劇だった。
もっとも、現実は小説より奇とはよく言ったもの。
「アーデル!!貴様、クラーラをどこにやった!!」
「…………はぁ?」
断罪劇直前にアーデル陣営であったはずのクラーラが突如行方をくらますという、ヒロインの予想外な展開ばかりが続いたせいで結果論での蹂躙劇だったのである。
義妹はなぜ消えたのか……?
ヒロインは無事にクズ王太子達をざまぁできるのか……?
義妹の隠された真実を知ったクズが取った選択肢は……?
そして、不穏なタグだらけなざまぁの正体とは……?
そんなお話となる予定です。
残虐描写もそれなりにある上、クズの末路は『ざまぁ』なんて言葉では済まない『ざまぁを超えるざまぁ』というか……
これ以上のひどい目ってないのではと思うぐらいの『限界突破に挑戦したざまぁ』という『稀にみる酷いざまぁ』な展開となっているので、そういうのが苦手な方はご注意ください。
逆に三度の飯よりざまぁ劇が大好きなドS読者様なら……
多分、期待に添えれる……かも?
※ このお話は『いつか桜の木の下で』の約120年後の隣国が舞台です。向こうを読んでればにやりと察せられる程度の繋がりしか持たせてないので、これ単体でも十分楽しめる内容にしてます。
突然現れた自称聖女によって、私の人生が狂わされ、婚約破棄され、追放処分されたと思っていましたが、今世だけではなかったようです
珠宮さくら
恋愛
デュドネという国に生まれたフェリシア・アルマニャックは、公爵家の長女であり、かつて世界を救ったとされる異世界から召喚された聖女の直系の子孫だが、彼女の生まれ育った国では、聖女のことをよく思っていない人たちばかりとなっていて、フェリシア自身も誰にそう教わったわけでもないのに聖女を毛嫌いしていた。
だが、彼女の幼なじみは頑なに聖女を信じていて悪く思うことすら、自分の側にいる時はしないでくれと言う子息で、病弱な彼の側にいる時だけは、その約束をフェリシアは守り続けた。
そんな彼が、隣国に行ってしまうことになり、フェリシアの心の拠り所は、婚約者だけとなったのだが、そこに自称聖女が現れたことでおかしなことになっていくとは思いもしなかった。
どうせ結末は変わらないのだと開き直ってみましたら
風見ゆうみ
恋愛
「もう、無理です!」
伯爵令嬢である私、アンナ・ディストリーは屋根裏部屋で叫びました。
男の子がほしかったのに生まれたのが私だったという理由で家族から嫌われていた私は、密かに好きな人だった伯爵令息であるエイン様の元に嫁いだその日に、エイン様と実の姉のミルーナに殺されてしまいます。
それからはなぜか、殺されては子どもの頃に巻き戻るを繰り返し、今回で11回目の人生です。
何をやっても同じ結末なら抗うことはやめて、開き直って生きていきましょう。
そう考えた私は、姉の機嫌を損ねないように目立たずに生きていくことをやめ、学園生活を楽しむことに。
学期末のテストで1位になったことで、姉の怒りを買ってしまい、なんと婚約を解消させられることに!
これで死なずにすむのでは!?
ウキウキしていた私の前に元婚約者のエイン様が現れ――
あなたへの愛情なんてとっくに消え去っているんですが?
婚約破棄をされたら、お兄様に溺愛されていたと気付きました
柚木ゆず
恋愛
王太子ジルベールの一目惚れにより婚約者にされてしまった、下級貴族の令嬢アンリエット。しかし彼女は孤児院で育った養女という理由で婚約を破棄され、更にはその際にジルベールの恨みを買ってしまう。
理不尽に怒り狂い、アンリエットを秘密裏に殺そうとするジルベール。だが彼は――アンリエットでさえも、知らなかった。
放蕩息子として有名なアンリエットの義兄シャルルは、完璧超人だったということに。
寵妃にすべてを奪われ下賜された先は毒薔薇の貴公子でしたが、何故か愛されてしまいました!
ユウ
恋愛
エリーゼは、王妃になる予定だった。
故郷を失い後ろ盾を失くし代わりに王妃として選ばれたのは後から妃候補となった侯爵令嬢だった。
聖女の資格を持ち国に貢献した暁に正妃となりエリーゼは側妃となったが夜の渡りもなく周りから冷遇される日々を送っていた。
日陰の日々を送る中、婚約者であり唯一の理解者にも忘れされる中。
長らく魔物の侵略を受けていた東の大陸を取り戻したことでとある騎士に妃を下賜することとなったのだが、選ばれたのはエリーゼだった。
下賜される相手は冷たく人をよせつけず、猛毒を持つ薔薇の貴公子と呼ばれる男だった。
用済みになったエリーゼは殺されるのかと思ったが…
「私は貴女以外に妻を持つ気はない」
愛されることはないと思っていたのに何故か甘い言葉に甘い笑顔を向けられてしまう。
その頃、すべてを手に入れた側妃から正妃となった聖女に不幸が訪れるのだった。
いかにも悪役令嬢な公爵令嬢、前世を思い出していかにもモブな男爵令息に猛アタックを仕掛ける。なお周りの迷惑は相変わらず気にしない模様。
下菊みこと
恋愛
異世界転生だけど人格は前世より現世の性格が強いです。嗜好だけ前世寄りになります。
小説家になろう様でも投稿しています。
貧乏男爵家の四男に転生したが、奴隷として売られてしまった
竹桜
ファンタジー
林業に従事していた主人公は倒木に押し潰されて死んでしまった。
死んだ筈の主人公は異世界に転生したのだ。
貧乏男爵四男に。
転生したのは良いが、奴隷商に売れてしまう。
そんな主人公は何気ない斧を持ち、異世界を生き抜く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
勇者様、早く竜の宝が、メルルちゃんだと気がついて〜