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十話 憂鬱なことには憂鬱が重なる
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両親からはその後、決まったら知らせると言われ、私は結局誰が自分の婚約者になるのか分からずじまいでした。あれから数日たちますが、未だに教えてもらってはいないので、一番条件のいい相手を両親が吟味しているのでしょう。
誰に決まっても、自分の気持ちが浮き立つことはなく、ため息ばかりが零れます。
「私は、このままでいいのかしら……」
言いたいことが言えないほどおとなしい性格ではありません。けれど、今の現実に希望を抱けるほど楽天家でもありません。
私は気分転換にと学園の庭のベンチに座り、曇天の空を見上げました。
「空くらい……気持ちよく晴れてくれたらいいのに……」
エレン様はあれからも時々私の所に来ては宿題はとか、ノートをよこせとか言ってきます。もう面倒くさいなぁと思っていると、クラスメイトの方々がさりげなく守ってくださることもあり、出来るだけ会わないように避けています。
一体いつまで私が奴隷だと思っているのでしょうか。
「ミリー!」
あぁ。頭の中で考えたから本物が現れたと、私は大きくため息をこぼすのをぐっと堪えます。
「エレン様……」
今日は一体なんだろうかと思っていると、焦った様子で私の方へと歩み寄ってきました。
「お前、マリア嬢について何かしらないか!?」
「マリア……様ですか?」
一瞬、一体全体誰だろうかと思っていたが、あの婚約破棄の時に、第二王子殿下と一緒に登場した女性であり、何故か聖女に祭り上げられていたなと思い至ります。
「存じませんが」
そう答えると、エレン様にぐっと両肩を掴まれ、揺さぶられます。
「お前が何か言ったのか!? マリア嬢が牢へと捕らえられたんだ!」
「え? えぇーっと、そうなのですか?」
ぐらぐらと揺さぶられていると、頭が揺れて気持ちが悪くなります。
「知らないのか!? くそっ。役立たずだな。いいか。マリア嬢について調べろ。すぐにだ。報告を急いでしろよ」
「え?」
今までであれば、エレン様に調べてほしいと言われたことは、様々な人の手を借りて情報を入手してきました。ですが、もう私はそれをする理由がありません。
「何度も申し上げますが、もう私は貴方様の婚約者ではありませんから、貴方様の言うことを聞く理由がありません。あの、本当にいい加減にしてくださいませ。貴方の面倒をこれからも見るわけがないでしょう。赤ちゃんじゃないのですから、自分のことは自分でしてくださいませ」
思わず、今まで言うことのできなかった鬱憤を口にしてしまい、慌てて口をふさいだ。
「なっ、なんだと!?」
「失礼しました。つい本音が」
「お前は! 生意気な! 言っておくがトーマス殿がお前を助けたのは偶然だぞ! いつまでも守ってもらえるなんて思うなよ!」
その言葉に、私は不覚にも胸が痛くなりました。わかっていることではありますが、エレン様には言われたくない言葉でした。
「そんなこと……わかっています」
「っは! お情けで偶然助けてもらっただけなのになぁ! トーマス様はアナスタシア殿下との婚約が結ばれるという噂だ! お前が入る余地はない!」
「え?」
第二王子殿下との婚約は破棄となった今、アナスタシア殿下と釣り合いの取れる男性は少ないのです。だからこそトーマス様が婚約者になってもおかしくはありません。
美しく聡明なアナスタシア殿下ならば、トーマス様にぴったりです。
「……そう、なのですか……」
「お前、まさかとは思うが、自分がトーマス殿の婚約者になれると夢でも描いていたのか? ばかだなぁ」
そう、バカなのです。でも。
「バカでど阿呆の貴方様には言われたくありません」
思わず口がまた滑りました。
誰に決まっても、自分の気持ちが浮き立つことはなく、ため息ばかりが零れます。
「私は、このままでいいのかしら……」
言いたいことが言えないほどおとなしい性格ではありません。けれど、今の現実に希望を抱けるほど楽天家でもありません。
私は気分転換にと学園の庭のベンチに座り、曇天の空を見上げました。
「空くらい……気持ちよく晴れてくれたらいいのに……」
エレン様はあれからも時々私の所に来ては宿題はとか、ノートをよこせとか言ってきます。もう面倒くさいなぁと思っていると、クラスメイトの方々がさりげなく守ってくださることもあり、出来るだけ会わないように避けています。
一体いつまで私が奴隷だと思っているのでしょうか。
「ミリー!」
あぁ。頭の中で考えたから本物が現れたと、私は大きくため息をこぼすのをぐっと堪えます。
「エレン様……」
今日は一体なんだろうかと思っていると、焦った様子で私の方へと歩み寄ってきました。
「お前、マリア嬢について何かしらないか!?」
「マリア……様ですか?」
一瞬、一体全体誰だろうかと思っていたが、あの婚約破棄の時に、第二王子殿下と一緒に登場した女性であり、何故か聖女に祭り上げられていたなと思い至ります。
「存じませんが」
そう答えると、エレン様にぐっと両肩を掴まれ、揺さぶられます。
「お前が何か言ったのか!? マリア嬢が牢へと捕らえられたんだ!」
「え? えぇーっと、そうなのですか?」
ぐらぐらと揺さぶられていると、頭が揺れて気持ちが悪くなります。
「知らないのか!? くそっ。役立たずだな。いいか。マリア嬢について調べろ。すぐにだ。報告を急いでしろよ」
「え?」
今までであれば、エレン様に調べてほしいと言われたことは、様々な人の手を借りて情報を入手してきました。ですが、もう私はそれをする理由がありません。
「何度も申し上げますが、もう私は貴方様の婚約者ではありませんから、貴方様の言うことを聞く理由がありません。あの、本当にいい加減にしてくださいませ。貴方の面倒をこれからも見るわけがないでしょう。赤ちゃんじゃないのですから、自分のことは自分でしてくださいませ」
思わず、今まで言うことのできなかった鬱憤を口にしてしまい、慌てて口をふさいだ。
「なっ、なんだと!?」
「失礼しました。つい本音が」
「お前は! 生意気な! 言っておくがトーマス殿がお前を助けたのは偶然だぞ! いつまでも守ってもらえるなんて思うなよ!」
その言葉に、私は不覚にも胸が痛くなりました。わかっていることではありますが、エレン様には言われたくない言葉でした。
「そんなこと……わかっています」
「っは! お情けで偶然助けてもらっただけなのになぁ! トーマス様はアナスタシア殿下との婚約が結ばれるという噂だ! お前が入る余地はない!」
「え?」
第二王子殿下との婚約は破棄となった今、アナスタシア殿下と釣り合いの取れる男性は少ないのです。だからこそトーマス様が婚約者になってもおかしくはありません。
美しく聡明なアナスタシア殿下ならば、トーマス様にぴったりです。
「……そう、なのですか……」
「お前、まさかとは思うが、自分がトーマス殿の婚約者になれると夢でも描いていたのか? ばかだなぁ」
そう、バカなのです。でも。
「バカでど阿呆の貴方様には言われたくありません」
思わず口がまた滑りました。
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