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王の子
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あぁ。
早く早く、あの瞳を絶望に染め上げて、そして肉を削ぎ落としてあげたい。
でも、まだ駄目よ。
我慢我慢。
ふふふふ。
絶望の為にはちゃんと準備をしなくてはね。
「こんにちは。」
突然目の前に現れた一人の女に、ボロボロの布を頭からかぶり、森の小屋の中に身を潜めていた少年はビクリと肩を震わせた。
「何者だ。」
冷静を装おうとしたのだろうが、その声には震えが混じっている。
女はにこにこと笑みを浮かべると、楽しそうに少年の布を取り払い、この国の王と同じ髪色と瞳を持った少年の姿にさらに笑みを深めた。
「あぁ。完璧だわぁ。やっと見つけた。王子様。」
その言葉に少年はぎょっと目を見開き、腰に携えていた短剣を引き抜くと女に向けた。
青白い肌に黒い髪と瞳が異様に引き立てられ、不気味なのに恐ろしいほどに美しい女。
真っ赤な唇は、とても楽しそうに言葉を紡ぐ。
「ねぇ。貴方は、これからどうするの?ずっと逃げて、逃げて、どこへ行くの?」
「お前は何者だ!?僕を誑かそうとしても無駄だ!僕は誰の命令も聞きはしない!」
女はその言葉にじっと少年を見つめると、ふんっと鼻を鳴らした。
「なーんだ。貴方見た目は似てるのに、あの男のように下劣で非道ではないのね。残念だわ。」
「何だと?」
「私はね、悪魔。王子様。悪魔と契約をしない?」
「悪魔だと?!」
警戒する少年の前で女は黒い翼を大きく広げた。
闇色のその翼に、少年は息を飲む。
「私はね、たくさんの憎しみを晴らさなければならないの。その為には貴方が必要なのよ。」
「憎しみとは?」
悪魔はにこにこと笑いながら、聖女の真実を少年に包み隠さずに話した。
途中で少年は口にてを当てて吐いてしまったが悪魔はそれでもなお、おぞましい行為を事細かに話続けた。
そして満足気に話終えると、少年の顔色の悪さにまた笑みを深める。
少年は悪魔を見つめると言った。
「絶対に僕を裏切らないと約束できるか?」
「悪魔は約束はしないわ。でも、契約の中に裏切らないことを入れ込んでもいいわ。」
少年はうなずき、悪魔と契約を交わす。
この国の王を引きずり落とし、膿を出しきって、民が幸せに暮らせる国を築く為に。
その為に、悪魔は少年と共にたくさんの者達を殺し、そして血塗られた王座を目指す。
少年は青年へと変わり、青年は反乱軍を指揮するようになる。
「悪魔。もうすぐだな。」
王座が近づき、青年は悪魔の膝に頭をのせじゃれつくように楽しそうにそう言った。
悪魔はそんな青年髪を優しく撫でながらうなずく。
「楽しみだわ。」
「あぁ。なぁ、悪魔。俺が王座を手に入れてもずっと側にいてくれよ。」
「え?」
「聖女達も皆ちゃんと幸せに暮らせる国を作る。だから、一緒に見守ってくれ。」
嬉しそうにそう言った青年に、悪魔は自分の胸がドキリとなるのを感じた。
何だろうか。
この感情は。
だが、悪魔に平和など訪れるわけはない。
城の中に火の手が回り、争う声が響き渡る。
記憶の中の男よりも、痩せ細り、顔色の悪くさせた王は、悪魔の姿に無くなった股間の痛みを思いだし悲鳴をあげると部屋の隅へと逃げた。
「ああぁぁぁ悪魔!!」
「あら、覚えていてくれたのね。ふふ。あぁ。この時を待ち望んでいたの。ほら、やっと完璧な絶望を貴方にあげられるわぁー!」
「王座を貰うぞ。」
「くそくそくそ!!!悪魔め!その男を王へと据えるつもりなのか!この人殺しの悪魔が!」
「あら、その男だなんて。彼は貴方の子でしょうに。」
「な?!何だと!?」
青年は王を見て鼻で笑った。
「俺のことを覚えてもいないのか。ふふ。殺したと思っていたんだろう?」
「どういう事だ!?」
「十年前のあの夜。私言ったでしょう?絶望を見せてあげるって。だから、貴方の一番大切な王座を、貴方が殺したと思っていた、貴方の子どもにあげることにしたの。あら、建前上は貴方の弟、ということになるのかしら?」
みるみるうちに王の血の気が引いていく。
悪魔はにこにこと笑う。
「私を妃にしたくないわけよねぇ。だって、貴方が愛しているのは。」
「や、やめてくれ。」
悪魔はパチンと指をならすと、その手の中に一人の女を抱きこんだ。
「ひぃぃ!!」
女は悲鳴をあげる。
「貴方のお義母様なのだから。」
青年は久しぶりに見る自分の母をおぞましく思った。
前王である夫を裏切り、義理の息子との子を孕んだ女。
早く早く、あの瞳を絶望に染め上げて、そして肉を削ぎ落としてあげたい。
でも、まだ駄目よ。
我慢我慢。
ふふふふ。
絶望の為にはちゃんと準備をしなくてはね。
「こんにちは。」
突然目の前に現れた一人の女に、ボロボロの布を頭からかぶり、森の小屋の中に身を潜めていた少年はビクリと肩を震わせた。
「何者だ。」
冷静を装おうとしたのだろうが、その声には震えが混じっている。
女はにこにこと笑みを浮かべると、楽しそうに少年の布を取り払い、この国の王と同じ髪色と瞳を持った少年の姿にさらに笑みを深めた。
「あぁ。完璧だわぁ。やっと見つけた。王子様。」
その言葉に少年はぎょっと目を見開き、腰に携えていた短剣を引き抜くと女に向けた。
青白い肌に黒い髪と瞳が異様に引き立てられ、不気味なのに恐ろしいほどに美しい女。
真っ赤な唇は、とても楽しそうに言葉を紡ぐ。
「ねぇ。貴方は、これからどうするの?ずっと逃げて、逃げて、どこへ行くの?」
「お前は何者だ!?僕を誑かそうとしても無駄だ!僕は誰の命令も聞きはしない!」
女はその言葉にじっと少年を見つめると、ふんっと鼻を鳴らした。
「なーんだ。貴方見た目は似てるのに、あの男のように下劣で非道ではないのね。残念だわ。」
「何だと?」
「私はね、悪魔。王子様。悪魔と契約をしない?」
「悪魔だと?!」
警戒する少年の前で女は黒い翼を大きく広げた。
闇色のその翼に、少年は息を飲む。
「私はね、たくさんの憎しみを晴らさなければならないの。その為には貴方が必要なのよ。」
「憎しみとは?」
悪魔はにこにこと笑いながら、聖女の真実を少年に包み隠さずに話した。
途中で少年は口にてを当てて吐いてしまったが悪魔はそれでもなお、おぞましい行為を事細かに話続けた。
そして満足気に話終えると、少年の顔色の悪さにまた笑みを深める。
少年は悪魔を見つめると言った。
「絶対に僕を裏切らないと約束できるか?」
「悪魔は約束はしないわ。でも、契約の中に裏切らないことを入れ込んでもいいわ。」
少年はうなずき、悪魔と契約を交わす。
この国の王を引きずり落とし、膿を出しきって、民が幸せに暮らせる国を築く為に。
その為に、悪魔は少年と共にたくさんの者達を殺し、そして血塗られた王座を目指す。
少年は青年へと変わり、青年は反乱軍を指揮するようになる。
「悪魔。もうすぐだな。」
王座が近づき、青年は悪魔の膝に頭をのせじゃれつくように楽しそうにそう言った。
悪魔はそんな青年髪を優しく撫でながらうなずく。
「楽しみだわ。」
「あぁ。なぁ、悪魔。俺が王座を手に入れてもずっと側にいてくれよ。」
「え?」
「聖女達も皆ちゃんと幸せに暮らせる国を作る。だから、一緒に見守ってくれ。」
嬉しそうにそう言った青年に、悪魔は自分の胸がドキリとなるのを感じた。
何だろうか。
この感情は。
だが、悪魔に平和など訪れるわけはない。
城の中に火の手が回り、争う声が響き渡る。
記憶の中の男よりも、痩せ細り、顔色の悪くさせた王は、悪魔の姿に無くなった股間の痛みを思いだし悲鳴をあげると部屋の隅へと逃げた。
「ああぁぁぁ悪魔!!」
「あら、覚えていてくれたのね。ふふ。あぁ。この時を待ち望んでいたの。ほら、やっと完璧な絶望を貴方にあげられるわぁー!」
「王座を貰うぞ。」
「くそくそくそ!!!悪魔め!その男を王へと据えるつもりなのか!この人殺しの悪魔が!」
「あら、その男だなんて。彼は貴方の子でしょうに。」
「な?!何だと!?」
青年は王を見て鼻で笑った。
「俺のことを覚えてもいないのか。ふふ。殺したと思っていたんだろう?」
「どういう事だ!?」
「十年前のあの夜。私言ったでしょう?絶望を見せてあげるって。だから、貴方の一番大切な王座を、貴方が殺したと思っていた、貴方の子どもにあげることにしたの。あら、建前上は貴方の弟、ということになるのかしら?」
みるみるうちに王の血の気が引いていく。
悪魔はにこにこと笑う。
「私を妃にしたくないわけよねぇ。だって、貴方が愛しているのは。」
「や、やめてくれ。」
悪魔はパチンと指をならすと、その手の中に一人の女を抱きこんだ。
「ひぃぃ!!」
女は悲鳴をあげる。
「貴方のお義母様なのだから。」
青年は久しぶりに見る自分の母をおぞましく思った。
前王である夫を裏切り、義理の息子との子を孕んだ女。
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