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第三話
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赤子を抱き上げた混沌の闇は、しばらくその赤子を見つめていたが、赤子はまた泣きわめき始めた。
「何だ?あぁ、腹が減ったのか。」
赤子は延々と泣きわめき続けており、混沌の闇はどうするか思案した。
「赤子は乳を飲むと言うが、、、さてさて、どうするか。」
にやりと混沌の闇は体を人の子へと変化させると、人間の町へと行こうと足を進めた。
森を抜け、しばらく進むと人の町が見えた。
外見だけで言うならば、人が自分を混沌の闇と見ることはないだろう。
何せ混沌の闇は、勇者の姿を模していた。
金色の髪の毛に、青い瞳をつけ、その見てくれはまるで天使のようである。
町についた混沌の闇はしばらくの間赤子を抱いて歩き、そして宿屋の女主人を見つけると声をかけた。
「おい。女。乳を出せ。」
宿屋の女主人はそう言った混沌の闇を見た瞬間に眉間にしわを寄せるものの、混沌の闇の外見がいいからなのかにやりと笑みを浮かべると言った。
「はっは!わたしゃ乳は出ないよ。なんだい?そりゃああんたの兄弟か何かか?」
「あー。いや、拾った。乳はどこにいけばもらえる?」
「あんたバカだねぇ。そんなの拾ったって、あんたじゃ育てられないだろう。どれ。」
女主人は興味からか、ぬのっきれをめくって赤子を覗き込んだ。
次の瞬間悍ましい物を見たかのように顔を歪めると、布を触った手を自らのスカートでぬぐいながら悪態をついた。
「悪魔の子じゃないか!そんなの捨てきな!なんという子だ。」
「悪魔の子?」
混沌の闇には、悪魔の子と普通の子との違いが分からなかった。
どこからどう見ても、これはただの赤子だ。
悪魔であれば角や牙が生えているだろうし、そもそも悪魔であれば赤子でも狂暴であり、こんなただ泣きわめくだけなんてことはない。
「いや、これはただの人の子だ。良く見てみろ。」
悪魔であればもっと面白かっただろうなと思ったが、女主人は赤子を近づけようとすると悲鳴を上げた。
それを聞きつけた幾人かの男が集まり、赤子を見た瞬間に女主人と同じような表情を浮かべる。
「そんなの捨てな!」
「教会へと連れていけ!」
「なんと悍ましい。」
「あんた、せっかくそんなにきれいな顔しているんだから、その悪魔が移ったらどうするんだい!」
「ほら、そいつをよこせ。」
人間たちは口々にそのようなことを呟き、混沌の闇は伸びてくるその手をひらりと避けると言った。
「ここに乳が出るやつはいないのか?」
「そんな悪魔に乳をやる人間はいない!」
同じ人間であろうにと、混沌の闇はからっぽのはずの胸の中にちりりと痛みに似た何かが走り、首を傾げた。
乳の出る人間がいないのであればここにいても致し方がないであろう。
ちりりとした痛みに苛立った混沌の闇は、体から闇が吹き出し、周囲の地面をじゅっと赤黒く焦がした。
人間たちは悲鳴を上げて逃げて言ったが、腕の中にいる赤子が小さく泣いた。
「あぅぅ・・・」
乳が欲しいのだろう。
その声に混沌の闇は、体から噴き出した闇を消しその場から去った。
泣き声がだんだんと小さくなり、元気良く動かしていた四肢もだんだんと力をなくし始めている。
このままではダメだろう。
その後他の町も回っては見たが、人の反応はどこも変わらずであった。
『化け物。』
『殺せ!』
『なんと悍ましい。』
そんな言葉ばかりが積み重なる。
混沌の闇は人に頼ることを諦めた。
「何だ?あぁ、腹が減ったのか。」
赤子は延々と泣きわめき続けており、混沌の闇はどうするか思案した。
「赤子は乳を飲むと言うが、、、さてさて、どうするか。」
にやりと混沌の闇は体を人の子へと変化させると、人間の町へと行こうと足を進めた。
森を抜け、しばらく進むと人の町が見えた。
外見だけで言うならば、人が自分を混沌の闇と見ることはないだろう。
何せ混沌の闇は、勇者の姿を模していた。
金色の髪の毛に、青い瞳をつけ、その見てくれはまるで天使のようである。
町についた混沌の闇はしばらくの間赤子を抱いて歩き、そして宿屋の女主人を見つけると声をかけた。
「おい。女。乳を出せ。」
宿屋の女主人はそう言った混沌の闇を見た瞬間に眉間にしわを寄せるものの、混沌の闇の外見がいいからなのかにやりと笑みを浮かべると言った。
「はっは!わたしゃ乳は出ないよ。なんだい?そりゃああんたの兄弟か何かか?」
「あー。いや、拾った。乳はどこにいけばもらえる?」
「あんたバカだねぇ。そんなの拾ったって、あんたじゃ育てられないだろう。どれ。」
女主人は興味からか、ぬのっきれをめくって赤子を覗き込んだ。
次の瞬間悍ましい物を見たかのように顔を歪めると、布を触った手を自らのスカートでぬぐいながら悪態をついた。
「悪魔の子じゃないか!そんなの捨てきな!なんという子だ。」
「悪魔の子?」
混沌の闇には、悪魔の子と普通の子との違いが分からなかった。
どこからどう見ても、これはただの赤子だ。
悪魔であれば角や牙が生えているだろうし、そもそも悪魔であれば赤子でも狂暴であり、こんなただ泣きわめくだけなんてことはない。
「いや、これはただの人の子だ。良く見てみろ。」
悪魔であればもっと面白かっただろうなと思ったが、女主人は赤子を近づけようとすると悲鳴を上げた。
それを聞きつけた幾人かの男が集まり、赤子を見た瞬間に女主人と同じような表情を浮かべる。
「そんなの捨てな!」
「教会へと連れていけ!」
「なんと悍ましい。」
「あんた、せっかくそんなにきれいな顔しているんだから、その悪魔が移ったらどうするんだい!」
「ほら、そいつをよこせ。」
人間たちは口々にそのようなことを呟き、混沌の闇は伸びてくるその手をひらりと避けると言った。
「ここに乳が出るやつはいないのか?」
「そんな悪魔に乳をやる人間はいない!」
同じ人間であろうにと、混沌の闇はからっぽのはずの胸の中にちりりと痛みに似た何かが走り、首を傾げた。
乳の出る人間がいないのであればここにいても致し方がないであろう。
ちりりとした痛みに苛立った混沌の闇は、体から闇が吹き出し、周囲の地面をじゅっと赤黒く焦がした。
人間たちは悲鳴を上げて逃げて言ったが、腕の中にいる赤子が小さく泣いた。
「あぅぅ・・・」
乳が欲しいのだろう。
その声に混沌の闇は、体から噴き出した闇を消しその場から去った。
泣き声がだんだんと小さくなり、元気良く動かしていた四肢もだんだんと力をなくし始めている。
このままではダメだろう。
その後他の町も回っては見たが、人の反応はどこも変わらずであった。
『化け物。』
『殺せ!』
『なんと悍ましい。』
そんな言葉ばかりが積み重なる。
混沌の闇は人に頼ることを諦めた。
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