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第一話 うちの家の玄関はたまに異世界に繋がります。
しおりを挟むうちの家の玄関はたまに異世界に繋がります。
「あー。今日の夕飯は何を作ろうかなぁ。」
料理があまり得意でない私は、毎日のように献立で悩むのです。
「あー。料理が目の前にぱって出てきてくれればいいのに。」
そんな事を毎日思いながら生きていたからなのでしょうか。
うちの家の玄関はたまに異世界に繋がります。
買い物に出かけようと、エコバックと財布と携帯を持って玄関を開けると、はい、目の前には見たことのないようなジャングルが広がっております。
「えーっと。ここはどこかしら。えー。買い物できるかなぁ。」
そんな事を思いながら道なき道を歩いていくと、どこぞの集落が見えてきてなにやら儀式のようなものが開かれているのが分かります。
若い女性がしくしくと泣き、その周りの家族達も悲しげにその背を支えております。
「あの、何かあったんですか?」
近くにいた人に尋ねると、その人はとても驚いたように目を丸くしました。
皆がこちらを振り返って私の方をじっと見つめてくるものですから、少し恥ずかしくなってくるのですが、状況が気になって仕方ありません。
「どうしたんですか?」
すると、その中でも一番年がいっているようなよぼよぼとしたおじいさんが前に進み出ると言います。
「なんと、女神様ですかな。」
「いえ、ただの主婦です。」
「主婦様。なんと、天が我らに主婦様を遣わして下さったのですか。」
いえ、玄関から歩いてきただけなんですけれど、なんとなくそんな事は言えない雰囲気なので、私は空気を読んで頷きました。
するとみなさんあっという間に私にひれ伏してしまわれます。
えー。何故いきなりそんな扱いになるのだろうかと思っていると、なんとこの世界では黒目黒髪は神の御使いの証なのだそうです。
わぁ。日本人は全員御使いですね。かなりの数の御使い数です。そんだけ数がいれば大抵の事は叶いそうな気がします。
「わしらの村はある魔物に、生贄として娘を差し出さなければならないのです。」
「えー。それ酷いですね。どんな魔物なんですか?」
そう尋ねると、おじいさんは事細かに魔物の特徴を教えてくれます。
「体は大きく、人の生き血をすすります。すぐには死にませんが、血を吸われると吸われた箇所がかゆくなるそうです。そして血を吸うとその魔物は赤い液体を体内に取り込み大きく膨らむのです。」
えー。それってある虫を連想させます。
なので私は地面にお絵かきを、かーきかき。かーきかきとしていくとおじいさんは目を丸くして頷きました。
「そうです!この魔物です。ご存じなのですか!?」
「そうですねぇ。一緒なのでしょうかねぇ。ちょっと家から蚊取り線香を持ってくるので待っていてくれますか?」
「カトリセンコウ。ほう。主婦様、それは何なのです?」
「魔物を倒す道具ですね。はい。ちょっと待っていて下さいね。」
いったん家に帰ると、買い置きをしていた蚊取り線香とチャッカマンをもっておじいさんの元へと帰ります。そしてはい。魔物が現れると言う場所にいくつか設置しておきます。
『ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ。娘は準備が出来たかぁ?』
魔物が現れ、生贄として祭壇に上っている娘さんはがたがたと震え始めており、私もその魔物を見て確かにあれは震えるなぁと思います。
でっかい蚊です。
気持ち悪いですね。
はい。蚊取り線香に火をつけていきます。
もくもーくと煙が出始めまして、様子を見ていると次第に蚊取り線香の煙が広がっていきます。
『ぎゃ?ぎゃ?ぎゃがぎゃがぎゃ、、、、、こて。』
うん。動かなくなったかな?でも、心配なので最後の仕上げをしておきましょう。
大きなハリセンを準備して、はい、勢いよくせーのっと振り上げて、振り下げます!
パチン!
一瞬皆の顔が引きつったのが見えましたが気にしません。
「はい。無事退治できましたね。これで大丈夫ですよ。」
そう言った瞬間に歓声が上がります。おぉ。みなさんそんなに元気があったんですね。今知りました。少し私も引きます。
それから皆さんにはお礼として様々な物を差し出され、宴の準備がされます。
宴会って楽しいですよね。
みなさん騒いでどんちゃんどんちゃん。えんやらやー。って。
みなさんがうっぷんがたまっていたことが良く分かりました。
お酒はほどほどにみなさんいたしましょう。
でもね、物をもらっても持ちきれませんから、帰りに敷物に宴の料理を包んでもらいます。
「では皆様おたっしゃで。」
「主婦様!感謝いたします!!!!」
私は手を振りながら家路につきます。
ふふふ。
今日の夕飯は豪華絢爛ですよぉ。
雰囲気づくりに、もらった布を敷いてから机の上に料理を並べていきます。
薄皮にひき肉を包み油で揚げた料理や、暖色系の果物達。それに豪華にも豚の丸焼きなんかもありますから何とも食欲をそそります。
「ただいまぁ。えー。なんかすっごくいい匂いがするねぇ。」
「今日の夕飯は豪華だよぉ。」
「やったぁ!」
あーよかった。
久しぶりにすごく喜んでくれてるのが分かる。
お仕事お疲れ様。一緒に異世界飯を楽しもうね。
※※※※※※
皆様、本作品を読んでくださりありがとうございます。
とーってもゆるい作品です。
ゆるく、暇な時にでも読んでいただけたら幸いです。
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