上 下
172 / 189

第171章:エウレスデスカ…?

しおりを挟む
 「…」

 僕らは…どれくらい走ったんだろう…

 走ったって言っても、ハナマルノミカドさんの背中に乗ってたから、僕らはじっと縛られてるだけで…

 ハナマルノミカドさんが、竜王さん達に今までの話しをしてる…

 でも…それも…

 『あら…そろそろね……良いかしら坊や達。ここまで逃してあげたんだから、かならず逃げ切りなさいな。
 ワラワの尽力を無駄にすんじゃないわよ。このまま真っ直ぐ突き進むの。いいわね?あ、それと…_____』

 ゴトォォォン…

 ハナマルノミカドさんも、ただの像に戻った。

 …………イストスおじさんは…

 「…逃げるでちゅエウレス…」

 「……僕、イヤだ……」

 「え…」

 「なんで……なんでみんないないの!?僕ヤだよ!!!今までずっと一緒だったのに!!!なんで!なんでなの!?ヤだよ!!!ハデスおじさん!!イストスおじさん!!アテナさん!!!」

 「エ、エウレス…」

 「戻ってきてよ!!一人にしないでよ!!!ねぇ!!!みんなぁ!!!ハデスおじさぁん!!!!!
 うううぅぅぅうううぅぅぅうう…!!!!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 危うさは感じていた。

 この子供はいかにもしっかりし過ぎていたからの。

 生来の性質かとも一瞬思っていたが…

 エウレス…いや、ハデス。

 彼の神とともにあってこその精神力だったか。

 今、息を切らして孫に背負われるしかできない某の目の前で、座り込み泣きじゃくる姿はまさしく小童そのもの。

 支柱の折れた宮と同じ。

 ……言い方は悪いが、こうなってしまっては、ただの餓鬼。

 類稀なる才を身に宿そうが、使い物になるべくも無し。

 「はぁっ…はぁっ……キリカよ……行くぞ…」

 「えっ!?で、でもお爺ちゃま…エ、エウレスが…」

 「今や……この子供は…今までお前が接してきた、はぁっ…接するに値する人物では無くなってしもうたのよ……はぁっ…はぁっ…
 キリカ……今、防ぐべきは………ヤマタの復活を……なんとしても防ぐこと………
 ハナマルノミカド様のお……はぁ…はぁ…お導きに従い…真っ直ぐ……逃げるのだ……」

 「………でも…でも…」

 「キリカァッ………!!!」

 「うっ……わ、分かったでちゅ…」

 ギャンギャンと泣き喚く餓鬼を置き、某はキリカを進ませる。

 なんとしても…逃げねば……

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「ううううううううううううう……」

 いやだ。

 「ううううううううううううううう……」

 イヤだ。

 「ううううううううううううううううううううううううううう……」



 イヤダ。

 

 イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ…

 「……ソウダ。」

 オジサンノチカラ…

 ホトンドノコッテタ…….

 オイデ……槍サン。

 

 ズッ


 ズズズズズズズズズズズズリュッ…!!

 オナカカラ槍サンガ出テクル。

 オナカガヤブレテ血ガデテル。
 
 
 オジサンハタベラレタケド、槍サンハボクノナカ二モドッテタ。

 ヨカッタ。

 エヘヘ……

 イタクナイヨ…オジサン。

 エライデショ?ホメテクレルヨネ…

 「……槍サン。オテツダイ、シテネ。」

 取リカエス。

 ハデスオジサン。

 アテナサン。

 イストスオジサン。

 「………ソノタメナラ…ドウスルノ?…ウン…ワカッタヨ槍サン……竜サンヲタクサン…………」

 アイツヲ殺スチカラヲ…

 ヤマタノオロチヲ…………

 「ソッカ……ウン……ヨロシクネ。
 。」

 バチチッ…!!!!!!

 赤紫黒色ノカミナリガ、バイデントカラトビダシテクル。

 綺麗ダナァ…コレデ。

 竜サンヲタベル。

 ヤマタノオロチヲコロス。

 スベテヲ"死"へ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「ひうっ!?」

 アチシの背中側から悍しい気配が国中に走っていった。

 これは…カッコいい時のエウレスと同じ気配…!?

 「はぁっ……どういうことかの…ハデス殿は…食われたのでは…」

 「お、お爺ちゃま…まさかエウレスが…!?」

 「分からなんだが…ともかく逃げるんだ…キリカ…」

 「う、うん…」

 本当に逃げていいの…?

 大神のお社で、アチシたちを助けてくれたエウレス…

 偽物かと思ってたけど。

 エウレスだった…

 「……アチシは…」

 どうすればいいのか分からない…

 逃げるしか…できまちぇん……
 


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛しい君へと婚約破棄を告げる僕の事情

高牧 まき
恋愛
「マリーニ・ベレングリデ公爵令嬢。今日を限りにお前との婚約を解消させてもらう」国王主催の舞踏会で婚約破棄を申し渡した王太子クリステン。だが彼にはある秘密があって……。 いわゆる婚約破棄モノ、ざまぁ、ものですが、非定番。あんまりない展開というか全然ない……こういうのもアリでしょ?と、執筆してみました。 全3話の予定です。

義妹を溺愛するクズ王太子達のせいで国が滅びそうなので、ヒロインは義妹と愉快な仲間達と共にクズ達を容赦なく潰す事としました

やみなべ
恋愛
<最終話まで執筆済。毎日1話更新。完結保障有>  フランクフルト王国の辺境伯令嬢アーデルは王家からほぼ選択肢のない一方的な命令でクズな王太子デルフリと婚約を結ばされた。  アーデル自身は様々な政治的背景を理解した上で政略結婚を受け入れるも、クズは可愛げのないアーデルではなく天真爛漫な義妹のクラーラを溺愛する。  貴族令嬢達も田舎娘が無理やり王太子妃の座を奪い取ったと勘違いし、事あるごとにアーデルを侮辱。いつしか社交界でアーデルは『悪役令嬢』と称され、義姉から虐げられるクラーラこそが王太子妃に相応しいっとささやかれ始める。  そんな四面楚歌な中でアーデルはパーティー会場内でクズから冤罪の後に婚約破棄宣言。義妹に全てを奪われるという、味方が誰一人居ない幸薄い悪役令嬢系ヒロインの悲劇っと思いきや……  蓋を開ければ、超人のようなつよつよヒロインがお義姉ちゃん大好きっ子な義妹を筆頭とした愉快な仲間達と共にクズ達をぺんぺん草一本生えないぐらい徹底的に叩き潰す蹂躙劇だった。  もっとも、現実は小説より奇とはよく言ったもの。 「アーデル!!貴様、クラーラをどこにやった!!」 「…………はぁ?」  断罪劇直前にアーデル陣営であったはずのクラーラが突如行方をくらますという、ヒロインの予想外な展開ばかりが続いたせいで結果論での蹂躙劇だったのである。  義妹はなぜ消えたのか……?  ヒロインは無事にクズ王太子達をざまぁできるのか……?  義妹の隠された真実を知ったクズが取った選択肢は……?  そして、不穏なタグだらけなざまぁの正体とは……?  そんなお話となる予定です。  残虐描写もそれなりにある上、クズの末路は『ざまぁ』なんて言葉では済まない『ざまぁを超えるざまぁ』というか……  これ以上のひどい目ってないのではと思うぐらいの『限界突破に挑戦したざまぁ』という『稀にみる酷いざまぁ』な展開となっているので、そういうのが苦手な方はご注意ください。  逆に三度の飯よりざまぁ劇が大好きなドS読者様なら……  多分、期待に添えれる……かも? ※ このお話は『いつか桜の木の下で』の約120年後の隣国が舞台です。向こうを読んでればにやりと察せられる程度の繋がりしか持たせてないので、これ単体でも十分楽しめる内容にしてます。

完結 お飾り正妃も都合よい側妃もお断りします!

音爽(ネソウ)
恋愛
正妃サハンナと側妃アルメス、互いに支え合い国の為に働く……なんて言うのは幻想だ。 頭の緩い正妃は遊び惚け、側妃にばかりしわ寄せがくる。 都合良く働くだけの側妃は疑問をもちはじめた、だがやがて心労が重なり不慮の事故で儚くなった。 「ああどうして私は幸せになれなかったのだろう」 断末魔に涙した彼女は……

全ては父様の仰せのままに

あんみつ~白玉をそえて~
BL
短編読み切りBLです。

七つの大罪(魔族神)の末っ子

あおい夜
恋愛
私は憤怒。 憤怒は私の名前でもあり、私が司る力でもある。 私達七つの大罪の兄弟は魔界に住んでいる。 私は魔界で兄弟達の話を聞いたり、眠ったりし、たまに上に行ったりながら過ごして居る。 私の楽しみは好きな人が私達の近くに住んで居て、たまに私達の家に来て恋人である兄弟達と話ている所を見る事だ。 いつも、つまらなそうにしているその人が兄弟達と話ている時はとても楽しそうに話ているのが分かるので私はそれが嬉しいんだ。 、、、その人が私の事をこの世界で一番嫌っていても。 私の兄弟達の恋人は魔界の王、魔王だ。 これは、世界中のみんなから畏れられている憤怒と魔界で人気者の魔王と憤怒の兄弟達の恋と愛のお話です。

悪役令嬢は令息になりました。

fuluri
恋愛
私の名前は暁月 湊。 気がついたら乙女ゲームの世界に転生していた、ただの女子高生だ。 ————前世でやってた乙女ゲーム『クロイツ・ヒルフェ~君想い謳う~』には、ある問題があった。 ストーリーは王道、攻略対象たちや主人公も王道で、特に問題はない。 だというのに、何が問題だったのかと言うと……それは、悪役。 このゲームの悪役は悪役令嬢ではなく悪役令息だったのだ。 まぁ、それ自体は別にたまにあることだし、特に問題ではない。 問題なのは、何故悪役が攻略対象に並ぶ……いや、むしろ追い越すほどのスペックなのか、ということ。 悪役であるのにも関わらず、攻略対象と並んでも全く違和感がない凛々しい美形であり、それに加えて性格も優しく公平で、身分は高いのに傲るところもなく、能力も高く、他の者から慕われる完璧な人物。 …そんな人物が、悪役。 繰り返す。 …悪役、なのだ。 どうしてこんな美味しいキャラ設定を悪役に持ってきたのかと、ネットでは大炎上だった。 …私も、運営に一言だけ言いたいことがある。 「どーして悪役令息が攻略できないんだ!!!」 ……ま、今思えば攻略できないのも当然だと思う。 なんせ、『悪役令息』は─── ───『悪役令嬢』だったんだから。

【完結】ある日突然、夫が愛人を連れてくるものですから…

七瀬菜々
恋愛
皇后シエナと皇帝アーノルドは生まれた時から結婚することが決められていた夫婦だ。 これは完全なる政略結婚だったが、二人の間に甘さはなくとも愛は確かにあった。 互いを信頼し、支え合って、切磋琢磨しながらこの国のために生きてきた。 しかし、そう思っていたのはシエナだけだったのかもしれない。 ある日突然、彼女の夫は愛人を連れてきたのだ。 金髪碧眼の市井の女を侍らせ、『愛妾にする』と宣言するアーノルド。 そんな彼を見てシエナは普段の冷静さを失い、取り乱す…。 ……。 …………。 ………………はずだった。 ※女性を蔑視するような差別的表現が使われる場合があります。苦手な方はご注意ください。

【完結】貴方の望み通りに・・・

kana
恋愛
どんなに貴方を望んでも どんなに貴方を見つめても どんなに貴方を思っても だから、 もう貴方を望まない もう貴方を見つめない もう貴方のことは忘れる さようなら

処理中です...