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第126章:孫デチュ

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 床が割れた粉塵で視界は曇り、子竜を隠す。わざとらしいくらいの粉塵だ。

 …む。

 ガキイィン!!

 我輩の影から伸びた二叉槍バイデントと、背後に現れた子竜の爪が衝突する。

 『な!?バレたでちゅー!?』

 「分かり易すぎる。気配隠しが不完全だぞ。」

 ぐいっ。べしゃん!

 『いでっ!!』

 バイデントの先を爪にかけ、力を込めて床に伏せさせる。
 やはり竜と言えども子供だな。他愛ない。

 『にぎゃー!なんで振り払えないでちゅか!?お前は人間だと聞いたでちゅよ!』

 「貴様より強いからに決まっているだろう。戯け者。」

 『でもっ…お前も子供でちょ!?しかも人間の!』

 「だから?」

 『えっ…!?』

 「人間だろうが子供だろうが、貴様より強い者などいくらでもいるだろう。
 そんなことも分からんのか?この…」

 『ひっ…』

 我輩は苛立ちの神威を全開にし、子竜の目と鼻の先に顔を近づける。

 「馬鹿蜥蜴め。」

 『びやああああああああん!!!!』

 子竜は泣き出し、部屋を出て行った。なんだあれは。この城の者か?…なんにせよ部屋がボロボロだ。竜王に言って代えさせるか。

 我輩は部屋から出て王の間に向かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ほんの興味だったんでちゅ。

 メイド達が人間の子供が来ているって話を聞いて…ワクワクして見に行ったでちゅ。

 でも想像してた人間と全然違った…よくわからないけど、真っ暗な力を感じたでちゅ。

 しかも気消しはバレるし、並みの竜になら負けない我の力を抑え込むし…

 何よりあの目。あの目は…

 昔お父上に向けられた目と同じでちた…頭が8つになる病気になったお父上と…

 人間は…怖いでちゅ…

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「邪魔するぞ。」

 我輩は声を掛けて扉を開ける。ゼウスやポセイドンならば、問答無用で開くだろうな。

 扉をくぐり前を見ると、そこには巨竜の姿の竜王がいた。…む?この気配は…

 「なんだ?お前の子だったのか、それは。」

 『ガロロロロロ…出ておいで。キリカ。お客人にきちんと謝るんだ。』

 竜王がそう言うと、玉座の後ろから震える子竜が出て来た。

 『うううう…おじいちゃま…怖いでちゅ…』
  
 『ガロロロロロ…謝れば許してくれるとも。大丈夫だ。彼は敵では無いよ。』

 『…お…おきゃくちゃま…先程は失礼しまちた…ごめんなさい。許してくだちゃい…』

 『某が孫が済まなかったね。ノバーン殿。許してくれ。』

 子竜は我輩に頭を下げて来た。その目には巨大な涙をたたえている。よほど我輩の神威に恐れをなしたか。

 「ふん。そんなことはどうでも良い。それより部屋を代えろトリックジジイ。
 あの部屋はもう使えん。そのガキが滅茶苦茶にしたからな。」

 『ご…ごめんなちゃい…』

 「謝って戻るものでは無いからどうでも良いと言っている。分かったらさっさと新しい部屋に案内しろ。」

 『えっ…はっ……はいでちゅ!!』

 子竜はようやく顔を上げ、我輩の前を歩き出す。子供とはげに世話のかかる生き物だ。

 「ああ、それとだ。竜王よ。お前たちが使う気配消しの力。あれの秘密を話せ。」

 『ほう。なぜかね?』

 「何度かあの技で寝首をかかれた。我輩、死にっぱなしでは気が済まんのだ。」

 『よく分からないが…手配しよう。』

 「では、邪魔をした。」

 『ああ…ノバーン殿…』

 「なんだ。」

 『…いや、また明日。』

 「…ふん。」

 我輩は応えず、子竜に続いて部屋を出るのだった。
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