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第103章:受肉顕現デス

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 我輩は濁流の頂きより下界を見下ろし、反省していた。

 「なんてことすんだよ…!!
ダンジョンが……!!!」

 『まさかこのような暴挙に出るとは思いませんでした…!!
 やはり意地汚い裏切り者…!』

 【…】

 話は、一刻ほど前に遡る。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 我輩は復讐心の持って行き場を失った。

 炎は燃え盛っているにも関わらず、その火種と次なる糧を失ったのだ。

 『…』

 『ふん!!なんなのです!?
 急に神妙な面持ちで黙り込んだとて、謝罪にはなり得ませんよ!!
 貴方に出来る謝罪は、死それのみ!』

 「"光輪斬"!!」

 我輩に向け、光の斬撃が飛んでくる。

 我に返り、我輩はそれを

 「避けた…!?アテナ!
 アイツ今避けたぞ!!」

 『薄々勘付いてはいましたが、ハデスの隠れ兜も、光の力から身を守る程の力は失っているようです!
 カズヤ!今が好機ですよ!!』

 「わかった!!"千閃光"!!」

 『…ケルベロス。守れ。』

 ケルベロスの三尾が、バイデントに引っかかる父母を包み込み、影にしまう。

 今までは難なく躱せたが、この千の光の斬撃は躱し切れまい。

 全く…神が考えごとをしていると言うのになんたる無礼か…

 無礼が過ぎて…

 『加減を間違えても知らんぞ。』

 『何です…!?』

 我輩は頭上に浮かんでいた隠れ兜をバイデントに掛け、くるくると回す。

 千光はまさに我輩に迫ってくる。

 その刹那の神業。

 『何を…しているのですか!?』

 刹那の合間にアテナが語り掛けてくる。

 奴も神。それくらい出来ようがな。

 『アテナよ。貴様は勘違いばかりしているな。
 隠れ兜は兜に非ず。我輩の力そのものだ。』

 『何を馬鹿な…
 タルタロスの巨神、キュクロプスより賜る兜でしょう!?』

 『表向きはな。
 だが考えてもみろ、アテナ。見えも感じ取れもしない神に、誰が従う?』

 『えっ…!?』

 『死の神は死のままではいられない。何故なら死の姿形など無いからだ。
 我輩はその姿形が無いと言う力を、己が身から切り離さねばならなかった。
 キュクロプスがその術を持っていたに過ぎない。』

 『まさか…そんな馬鹿な…!!』

 『そして、バイデントもまた我が血肉を分けた兄弟たる神器。
 その真価は、魂の収穫に非ず。』

 『…何だと言うのです…!!』

 『

 『…!!!!』

 刹那も過ぎ去ろうとしている。

 我輩は言葉を切り、バイデントの回転を更に強める。

 その力は透き通るほど白く、しかして根源たる兜は黒く、我輩の…エウレスの首回りに王衣の様に纏わりつく。

 我が支配の絶対性を意味するタルタロスよりの贈答の鎖が、胴前にじゃらりと垂れ下がる。

 そう、引っ掻き混ぜたのだ。

 人たるエウレスの身と魂、そして、神たる我輩ハデス隠れ兜を。

 結果はすでにご覧じろ…

 ドフッ!!!

 【…フハハハハ…我輩の…ハデスの初の受肉顕現だ……
 良きに計らえ愚民ども。】

 千の光は一笑に付し、我輩はほぼ完全に君臨する。

 『馬鹿な…馬鹿な馬鹿な馬鹿な!!
 こんな事が可能な筈が…
 許される筈が……!!!』

 「…アテナ……なんなんだよ… 
 アイツ…」

 宙に現れた屍の玉座に腰掛け、足を組む。

 体は二歳児のままか。まぁ仕方ない。

 【……さぁ。終わらせようか。】
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