上 下
88 / 189

第87章:純白のナイフデス

しおりを挟む
 『…はうはあ!!』

 ヘパエストスはそれから一刻ほどで目を覚ました。

 『こ、ここは何!?どこ!?
 …はあ!!そっかゴブリンの住処だ!』

 「起きて早々にやかましい奴だ。」

 『ご、ご主人~…』

 「大丈夫…?」
 「鉄像ちゃん…?」

 ヘパエストスを見下す我輩の背後から、姉と似非淑女が顔を出す。

 『!!!!』

 ヘパエストスはまたも昏倒しそうになる。

 「させるか。」

 ゴイーーーン!!

 『ぶひゃあああ!!』

 我輩は立て掛けてあった金槌で、ヘパエストスの頭を打つ。

 「この女が貴様の腕を見たいそうだ。」

 『ええっ!?オ、オデの!?』

 ヘパエストスはそう言うと、腕をかざしてくる。

 「その腕では無い阿保め。
 貴様の鍛冶の腕前だ愚かもの。」

 『ああ!あ~。なんだぁ…』

 ヘパエストスは腑に落ちた顔をし、立ち上がる。

 「あなたが鍛冶師の魔物かい?…
 早速だけど、見せてくれないかい?」

 『うん!いいよ!!何を作ろうか?
 オデ、装飾品とかは苦手なんだけど…』

 「…エウレスくん。この粉、貰っていい?」
 
 似非淑女は我輩に紙の包みを見せる。

 「…良かろう。」

 「それじゃ…むう……!」

 似非淑女は紙…正確には紙包の中の、世界樹の粉に力を込め始める。

 「~~~…!!…よし。
 出来上がり。」

 すると、紙包の中身は小石ほどの大きさに固まっていた。

 『へえ…魔力であの石碑の粉を固めたのかい?器用なことをするね。』

 「そう…?あなたにもできるんじゃ無いの…?」

 『オデは不器用だから、消滅させちまうよ…へへへ。
 ご主人ならできるかもな…』

 「無駄口を叩くな。」

 『ぶひゃあ!!』

 「それで?似非淑女よ。
 貴様はそれで何を作って欲しいと言うのだ?」

 「…ナイフを。」

 「ナイフだと?」

 『良いよ!任せなよー!!
 おいで!メイロ!!』

 「ブヒョー。」

 ヘパエストスに呼ばれて、炉豚がどこからか現れた。

 ヘパエストスは道具を取り出し、金床を設置する。

 『ぶひひ…お嬢さん。その鉱石を…』

 「…はいどうぞ…」

 ヘパエストスは気持ち悪い顔で似非淑女と鉱石を交互に見つつ、顎に触る。

 ジョリジョリと気色悪い髭の音が響く。

 『なるほどねえ…このナイフは敵を屠るために使うんじゃない……
 …もっと大切な、重要なことに使うんだね…?』

 「…どうして分かったんだい…?」

 『分かるよ…オデは今から、このナイフの片親になる…
 もう片親は、お嬢さんだよ。』

 「親…」

 キィン!キィン!キィン!!

 ヘパエストスは鉱石を熱し、鍛え始める。

 全ての作業を途切れぬよう、1人で武器を練り上げていく。

 「凄い…本当に武器にしていく…」

 「綺麗だね…エウレス…」

 「…そうだな。」

 キィン!キィン!キィン!

 ….キィィィィィン!

 『…良し。できた。』

 「凄い…綺麗だね…」
  
 出来上がったナイフは、純白を呈していた。

 何物にも染まりそうな、純白…

 世界樹とは武器にするとこうなるのか。

 『はい、どうぞ。
 大事にね…』

 「…ありがとう。」

 似非淑女はヘパエストスからナイフを受け取ると礼を言う。

 ともあれ…これでようやく世界樹の在り処がわかるな。

 似非淑女が案内する条件は満たした筈だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!

猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」 無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。 色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。 注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします! 2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。 2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました! ☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。 ☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!) ☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。 ★小説家になろう様でも公開しています。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...