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第84章:バイデント製作〜情報収集〜デス
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我輩は兄と姉を回収し、街に戻った。
「なるほどなぁ…あの不気味な石碑を使えば、ダンジョンの色んな場所に一瞬で行けるようになるってことか…」
兄は咥えられつつも考える。
最近ようやく慣れて来たようだ。
姉に比べると遅過ぎるな。
「そうだ。ヘパエストスにはあの場で解析と改造を続けてもらう。
彼奴はあの手の作業が死ぬ程好きだからな。」
実際後ろから刺されるまで気付かなかった程だ。
いくらあの鍛冶場が閉鎖的とはいえ、冥府の陥落に気付かぬなど、ボンクラが過ぎる。
大方新たな武器でも作っていた矢先のことだったのだろう。
言わば鍛冶馬鹿なのだ。
「僕は僕の武器の素材を探す。」
「えぇ?エウレス武器も使えるの?」
「…秘密裏に訓練したからな。」
「凄いなエウレス…私、武器の方はからっきしで…」
「でもよ!!エウレス!
武器なら武器屋にも、なんなら師匠の修業所にもあるぜ!?
あの鉄像に、わざわざ作って貰わなくてもいいんじゃねえのか!?」
「ふん…普通の槍ではすぐ砕ける。
それに、僅かな重心の違いや長さの違いが、僕の技を鈍らせる。」
「…でも、あの鉄像の武器は違うのかよ?」
「…恐らくな。」
「へ~。すげえなあの鉄像…」
そう。凄いのだ。
もし奴が武器の打てない、ただの炎を操るだけの神だったなら、我輩は奴の名を覚えることはなかっただろう。
それほど奴の作る武器は素晴らしい。
穢らわしさに汚ならしさが幾重にも積み重なったようなあの脂豚から、どうすれば生み出されるのかと思う程だ。
奴はその目で武器の使用者の癖や姿勢の歪み、長所短所を一瞬で見抜き二度と忘れない。
それどころか、武器がどう使われ、どのように損傷し、どのようにしまわれるかまで見通し、それでも使用者が最高の技を放てるように武器を作る。
言わば武器の未来をも見ることができるのだ。
「私も作ってもらいたいな~…」
「姉ならば無償で作ってもらえるのではないか?
奴は女に免疫がないからな。」
「俺も俺も!!」
「兄は無理かもな…」
「なんでだよ!?」
奴は男前が嫌いだからな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
兄を修業所に下ろし、姉とともに学院に戻った我輩達は、そのまま学院長室に向かう。
あの似非淑女に、鉱石のことを聞くためだ。
コンコン、コンコン。
「し…失礼します…」
姉は教師を通した方が良いと言ったが、我輩はいつもノックなどせずに奴を訪ねている。
…しかし今日はえらく返事が無いな。
「ほら、やっぱりダメだよエウレス…学院長先生は予約が無いと会えないんだもん…」
「小癪な…退け。姉よ。」
「あ!ダメだよエウレス!!」
我輩は姉の制止も押し退け、部屋に押し入る。
中にはやはり似非淑女がいた。
「……誰ですか?予約が無いなら出て行ってください…」
「ほう。随分偉くなったものだな。」
「!!」
似非淑女はすぐさま顔を書類から上げ、我輩に目を向ける。
「ごめんなさい…仕事に追われてて…」
「ほう。感心だな。」
「そう?…仕事だもん…
やって当たり前…」
「あの…学院長先生…すいませんウチの弟が…」
「…ミレスさん…」
「あ!はい!!失礼します!!」
似非淑女は椅子から立ち上がり、ソファに移る。
我輩もその前のソファに腰掛ける。
姉も恐る恐る我輩の隣に座る。
「……羨ましい…」
「え?学院長先生…?」
「…なんでもない。」
羨ましがるな気色悪い。
我輩は懐から紙の包みを取り出し、机の上で開く。
「これを見ろ。」
「これは…」
さて、学院長先生殿は、これが何か分かるかな…?
「なるほどなぁ…あの不気味な石碑を使えば、ダンジョンの色んな場所に一瞬で行けるようになるってことか…」
兄は咥えられつつも考える。
最近ようやく慣れて来たようだ。
姉に比べると遅過ぎるな。
「そうだ。ヘパエストスにはあの場で解析と改造を続けてもらう。
彼奴はあの手の作業が死ぬ程好きだからな。」
実際後ろから刺されるまで気付かなかった程だ。
いくらあの鍛冶場が閉鎖的とはいえ、冥府の陥落に気付かぬなど、ボンクラが過ぎる。
大方新たな武器でも作っていた矢先のことだったのだろう。
言わば鍛冶馬鹿なのだ。
「僕は僕の武器の素材を探す。」
「えぇ?エウレス武器も使えるの?」
「…秘密裏に訓練したからな。」
「凄いなエウレス…私、武器の方はからっきしで…」
「でもよ!!エウレス!
武器なら武器屋にも、なんなら師匠の修業所にもあるぜ!?
あの鉄像に、わざわざ作って貰わなくてもいいんじゃねえのか!?」
「ふん…普通の槍ではすぐ砕ける。
それに、僅かな重心の違いや長さの違いが、僕の技を鈍らせる。」
「…でも、あの鉄像の武器は違うのかよ?」
「…恐らくな。」
「へ~。すげえなあの鉄像…」
そう。凄いのだ。
もし奴が武器の打てない、ただの炎を操るだけの神だったなら、我輩は奴の名を覚えることはなかっただろう。
それほど奴の作る武器は素晴らしい。
穢らわしさに汚ならしさが幾重にも積み重なったようなあの脂豚から、どうすれば生み出されるのかと思う程だ。
奴はその目で武器の使用者の癖や姿勢の歪み、長所短所を一瞬で見抜き二度と忘れない。
それどころか、武器がどう使われ、どのように損傷し、どのようにしまわれるかまで見通し、それでも使用者が最高の技を放てるように武器を作る。
言わば武器の未来をも見ることができるのだ。
「私も作ってもらいたいな~…」
「姉ならば無償で作ってもらえるのではないか?
奴は女に免疫がないからな。」
「俺も俺も!!」
「兄は無理かもな…」
「なんでだよ!?」
奴は男前が嫌いだからな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
兄を修業所に下ろし、姉とともに学院に戻った我輩達は、そのまま学院長室に向かう。
あの似非淑女に、鉱石のことを聞くためだ。
コンコン、コンコン。
「し…失礼します…」
姉は教師を通した方が良いと言ったが、我輩はいつもノックなどせずに奴を訪ねている。
…しかし今日はえらく返事が無いな。
「ほら、やっぱりダメだよエウレス…学院長先生は予約が無いと会えないんだもん…」
「小癪な…退け。姉よ。」
「あ!ダメだよエウレス!!」
我輩は姉の制止も押し退け、部屋に押し入る。
中にはやはり似非淑女がいた。
「……誰ですか?予約が無いなら出て行ってください…」
「ほう。随分偉くなったものだな。」
「!!」
似非淑女はすぐさま顔を書類から上げ、我輩に目を向ける。
「ごめんなさい…仕事に追われてて…」
「ほう。感心だな。」
「そう?…仕事だもん…
やって当たり前…」
「あの…学院長先生…すいませんウチの弟が…」
「…ミレスさん…」
「あ!はい!!失礼します!!」
似非淑女は椅子から立ち上がり、ソファに移る。
我輩もその前のソファに腰掛ける。
姉も恐る恐る我輩の隣に座る。
「……羨ましい…」
「え?学院長先生…?」
「…なんでもない。」
羨ましがるな気色悪い。
我輩は懐から紙の包みを取り出し、机の上で開く。
「これを見ろ。」
「これは…」
さて、学院長先生殿は、これが何か分かるかな…?
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