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第73章:門の質問デス

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 __良いのか、異界の神よ…__

 引っ込む我輩に、何かが語りかけてくる。

 何者だ?

 __我は門。今は言葉を失い、物言わぬ物に成り果てた、古の遺物。__

 門…?

 ダンジョンの門か。

 __我らは皆、魂を見定める。其方が神だと分かっていたが、聖か邪かを測りかねていた。__

 聖か邪かだと?

 ふん。くだらん。

 __…そのようだ。其方は死。この世から失われし、しかし戻りつつある死。その権現。死に聖や邪があろうか?
 いや、無い。死は死。そうであろう…?__

 違うな。小僧。

 __…何…?__

 死とは聖でも邪でもある。希望でも絶望でもあり、終わりでも始まりでもある。

 __…__

 死とは罰であり、救いである。

 世界の全ては死ぬことでその役目を終え、生まれることで紡いでいくのだ。

 その為の罰であり救い…

 それが死だ。小僧。

 __…そうか…死とはそのようなものだったか…我も忘れていたようだ…
 異界の神よ…__

 そうだろうな。死なねば忘れる。

 死なねば栄えぬ。

 __…なればこそ問う。異界の神よ、高貴なる魂の持ち主よ。
 其方の内にあるその真黒き信念…__

 …

 __その呪いにも似た情念の炎に、その人間を巻き込んで、それで良いのか。死の神よ…__

 …我輩の存在意義は復讐だ。

 __其方は死では無いのか?死が復讐を騙るのか?__

 …我輩は奴を殺す。我輩に死を与えた奴に死を与える。

 これは我輩の…他ならんハデスの役目だ。

 その為ならば我輩は、なにものをも利用する。全てを利用し、事を成す。

 例え…我輩の魂が滅ぼうとも。

 __…己が魂をも利用すると?__

 …それがエウレスとの契約だからな。

 __………そうか。
 …その為ならば嘘をも吐くと…しかしその道は、いかに神とて茨の道…__

 ふん。小僧、貴様には関係の無いことだ。

 放っておけ。さもなくば貴様も殺すぞ。

 __…其方が今追い求める者はこの迷宮におる。__

 …なに!?

 あの金髪か!!?

 __…かの勇者は人間の其方と神たる其方との両方に似た気配を放ち、この迷宮の中腹にて、今も魔物を狩っておる。__

 エウレスの父母…ゼウスの剣…!!!

 __…隠された道を見つけるが良い。死の神よ。そこに其方と同じ者がおる。其方と其方の従魔と同じ者がな。__

 我輩達と同じ者……?

 __其方の道が終焉を迎えるよう、心から願う。異界の神よ。ではさらばだ…__

 そして門はもう二度と、言葉を発する事は無かった。

 …何があるというのだ?

 このダンジョンに…

 
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