ハデスが転生したそうデス〜前世の仇を殺す為なら、今世の神すら殺しマス〜

第64章:ケルベロスの視点デス

　我輩は無視して先に進もうとする。

　しかし丸くなったものだな。

　昔…この肉体が赤子の頃ならば、下民扱いされようものなら、体から抜け出し、神の言葉で痛ぶっていたところだ。

　それを無視などという恩情で済ませるとは…いやはやエウレスとの確たる契りも強固なものよ。

　「待てと言っておるのじゃ！！
　待て！！待てーーー！！
　…アンドル！！」

　「はっ。」

　む。誰か近付いてくるな。

　それも我輩ではなくケルベロスを狙っているようだ。

　「「「キャンキャンキャン！」」」

　ケルベロスは能天気にも我輩の手にじゃれついている。

　しかし、突然その感触が消えた。

　「ふむ。中々面白い歩法を使うな。
　若僧。」

　「？！」

　にぃ。

　我輩はケルベロスのいた場所とは反対側を向き、微笑んでやる。

　全く完成されていないが、死の歩き方に近いものを仄かに感じた。

　悟らせぬと言うより、認識をずらす歩き方だな。

　そもそもが感じ取れぬ、死には遠く及ばないが、それでも見事だ。

　「成る程…
　これ程の希少な魔獣を従える方。只者では無いとは思いましたが…
　この魔獣を我が主人が御所望でございます。申し訳ありませんが、頂きます。」

　「ふ…どうぞご自由に？」

　「「「…」」」

　ケルベロスは遊びの一貫と思っているらしく、三尾を振って我輩を見つめる。

　「馬鹿野郎！！エウレス！！
　あの犬お前の大事な従魔じゃねえのかよ！！」

　「そうよエウレス！！それにあなたが強いのは、ケルベロスちゃんのお陰なんでしょう！？」

　「ほう…そのような能力も…
　これは我が主人もお喜びになられるというものです。」

　そう言えばついさっきそんな嘘を吐いたな。

　忘れていた。

　「…まぁ良かろう？僕には兄も姉もいるのだからな。」

　「えっ！？…いやいや！
　それとこれとは別だろぉ！！？
　嬉しいけどよ！？」

　「そうよ！！
　エウレスに懐いていたのに！ケルベロスちゃん！！」

　濁せぬか。

　「ふん。良いから黙って見ていろ。
　優れた下僕は、優れた主人を見極められるものだ。
　アレは阿保だが、その点の眼力は一級だからな。」

　「はぁ…？」
　「そんな…エウレス…」

　我輩は腕を組み、壁にもたれ、若僧に連れて行かれるケルベロスを静観するのだった。

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　私達は見知らぬ人間に摘み上げられた。

　だがよ！！ハデス様は笑っておられたぜ！！！

　あのね！！なんか面白いことやれってことだと僕思うー！！

　私も足りぬ脳味噌で考察した結果、その思考に至りました。

　ですがこの人間を殺すのではあまりにありきたり。
　そうは思いませんか？

　殺しゃいーじゃねーか！！！ハデス様を見下した肉塊なんざよぉ！！！

　僕はねー！！なんか甘い匂いするんだ！！前からだよ！

　ほう…言われてみればそうですね。

　私達は思考を切り上げ、前を見る。

　そこには馬車の中に座る派手な人間の女が居た。

　「可愛い…！！可愛いのじゃ！！
　妾はこれにジュエルという名を授けるぞよ！！良い名じゃろう！？
　アンドル！」

　「は…誠に素晴らしいお名前かと。」

　「ほほほほほ！！苦しゅうないぞ！
　アンドル！！」

　甘い匂いはこの女からしているようですが…あ！お菓子だ！！

　目の前にお菓子だあ！！

　お菓子ーーー！！！！

　私達は女の後ろに山の様に積まれたお菓子を食べようと必死にもがきますが、体が小さいままである為届きません。
　お菓子ーー！！！

　「んん！？そうかそうか！お前も嬉しいのかジュエル！！
　よしよし。今すぐ妾の従魔にしてやるぞよ！アンドル！首輪を！」

　「は。」

　私達を摘まみ上げる人間が、何かを女に渡しました。お菓子かな！？

　「さーあ！契約の時間じゃ！
　"汝を我が物に"」

　女が私・ケルバスに首輪を嵌めました。ピリっとします。

　"あなたの主人はシェリル・ベルハート"

　はぁ？違います。私達の主人はハデス様です。
　あ、またピリっとしました。

　"あなたの主人はシェリル・ベルハート"

　違いますって。あ、ピリっときました。

　"あなたの主人は…"

　うるさい！！！

　「ガルルルア！！！」

　「きゃあ！？」

　「お嬢様！！！」

　私達は巨大化し、首輪を千切って唸りを上げます。
　あ、ハデス様の許可を頂いていない。

　やばくねーか！！！？

　怒られちゃうよー！！

　もう歯止めは効きません。せめてお菓子を！！

　お菓子だ！！！

　お菓子ーー！！

　私達は馬者の天井ごとお菓子をたべました。ふむ。甘いは甘い…が…

　なんだこりゃ！！！？不味いな！！！俺はまたあのホットケーキが食いてえよ！！！

　僕もおねいさんのケーキ食べたいー！！

　同感ですね。このお菓子は不味い。
　早くハデス様の元に戻り作ってもらわねば！！！

　私達はハデス様の方へ歩き出します。

　「待つんじゃ！ジュエル！ジュエルー！！」

　「お嬢様！他の従魔達が馬車から逃げて…」

　「あんな雑魚どもどうでも良いわ！！
　ジュエルー！！
　ジュエルを取り返せ！！」

　「は、しかし…」

　後ろで女と男がなにやら喚いていますが、私達には関係ありません。

　それに私達をジュエルジュエルと…

　私はケルバス。

　俺はカベロ！！！

　僕ビスルー！！

　私達にはきちんとした区別があるのだ。

　「ジュエルーー！！！」

　「「「ガウラウア！！！」」」

　「ひぃっ！！！！？」

　名を一つしか付けぬ様な主人など、亡者以下です。

　ハデス様ーーー！！！

　僕も！！ハデス様ーーー！！！

　…私も…コホン…ハデス様ーーー！