上 下
45 / 189

第44章:同じ気配デスッテ

しおりを挟む
 犬魔獣どもは狂ったように列車に大挙している。

 犬畜生めは、やはり阿保か。

 列車に近寄る端から、バイデントが駆け抜け、魂を刈り取っていく。

 『フハハハハハハ!!!
 魔獣の魂とは存外高エネルギーらしいな!!』

 その証拠に、バイデントはどんどん魂を吸い、メキメキと音を立て成長していく。

 今にあの金髪に砕かれた時よりも強靭になるだろう。

 本音を言えば、元が木の神器ではなく、鋼の物、もしくは黄金かクリスタルの物が望ましいが…

 贅沢は言うまい。もし見つかればそちらにバイデントを憑依させれば良いのだ。

 『む…?魂がこちらに流れてきたな。
 バイデントよ。腹は満ちたのか?』

 ブゥン。

 バイデントは光り、肯定の意思を伝えてくる。

 『フハハハハ…謙虚な奴め。では我輩が残りを頂こう。
 "亡者の軍勢ストラトス・トゥ・ミラスティテ"』

 我輩の胸がガパリと開き、あの巨大商店で収集した人間どもや魔物どもの魂が召喚される。

 『さあ!魂をさらい、我が元へ集え!
 働けば平等に、褒美をやろう!!』

 亡者どもは飛び交い、魔獣を突き抜け魂をさらう。

 中々に良い働きだ。

 やはり亡者は良いな。どこまでも愚直に脳無しに、我が命を聞き手足となる。

 これぞ死の本懐よ。

 我輩だけでも十分死とは恐ろしいが、元来死とはそう言うものではない。

 大量に、かつどこにでもあるもの。

 それが死だ。

 故に我輩は軍勢を率いるのだ。

 『む…魔獣の群れが止んだな。
 では戻れ!!亡者ども!!!』

 ギャアアアアアア…スポンッ。

 亡き者どもの魂は再び我が胸中に戻り、魔獣の魂をその群れに加えた。

 『ふむ…やはり魔獣風情の魂では我が力の足しにもならんな…
 狩るならば神か、あの金髪の持つ剣でなければ…』

 その時だった。

 神の気配を察知したのは。

 近付いてくる…

 まさかこのような道中に、神のなどいると言うのか?

 しかもこの気配…

 まるで我輩ではないか。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 魔獣の長達は笑っていた。

 もう無理だと群れで反乱が起き、集めた仲間が全て歯向かって来たからだ。

 「ガウガアッ!!」
 「バウバハッ!!」
 「キャンキャンキャン!!」

 しかし、長達の力は絶大だった。

 元仲間を全て食らいつくし…

 長達はあの男…死の神であり死の王・ハデスに迫っていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 『バイデントよ。槍に戻れ。
 我が足元は亡者で固める。』

 我輩はバイデントを手に持ち、亡者を足元でドロドロに溶かしたものを列車にこびりつける。

 結構な労力だが、ここまですれば地に立つくらいはできるのだ。

 ここまでせねばならぬくらい、今からくる輩は得体が知れなかった。

 全く同じ速度で走る、3つの気配が前方から…

 『来るぞ…!』

 そして、我輩は見た。

 「ガウガウガウ!!」
 「バフバウバウ!!」
 「キャンキャンキャン!!」

 聞き覚えのある声で、聞き覚えのある、3つの鳴き声をあげる犬…

 『ケルベロス…!!!』

 「「「ワオーーーン!!!」」」

 そして、純白の毛並みを持つ三つ首犬は、我輩に飛び掛かり…

 すり抜け、列車の屋根に激突するのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛しい君へと婚約破棄を告げる僕の事情

高牧 まき
恋愛
「マリーニ・ベレングリデ公爵令嬢。今日を限りにお前との婚約を解消させてもらう」国王主催の舞踏会で婚約破棄を申し渡した王太子クリステン。だが彼にはある秘密があって……。 いわゆる婚約破棄モノ、ざまぁ、ものですが、非定番。あんまりない展開というか全然ない……こういうのもアリでしょ?と、執筆してみました。 全3話の予定です。

義妹を溺愛するクズ王太子達のせいで国が滅びそうなので、ヒロインは義妹と愉快な仲間達と共にクズ達を容赦なく潰す事としました

やみなべ
恋愛
<最終話まで執筆済。毎日1話更新。完結保障有>  フランクフルト王国の辺境伯令嬢アーデルは王家からほぼ選択肢のない一方的な命令でクズな王太子デルフリと婚約を結ばされた。  アーデル自身は様々な政治的背景を理解した上で政略結婚を受け入れるも、クズは可愛げのないアーデルではなく天真爛漫な義妹のクラーラを溺愛する。  貴族令嬢達も田舎娘が無理やり王太子妃の座を奪い取ったと勘違いし、事あるごとにアーデルを侮辱。いつしか社交界でアーデルは『悪役令嬢』と称され、義姉から虐げられるクラーラこそが王太子妃に相応しいっとささやかれ始める。  そんな四面楚歌な中でアーデルはパーティー会場内でクズから冤罪の後に婚約破棄宣言。義妹に全てを奪われるという、味方が誰一人居ない幸薄い悪役令嬢系ヒロインの悲劇っと思いきや……  蓋を開ければ、超人のようなつよつよヒロインがお義姉ちゃん大好きっ子な義妹を筆頭とした愉快な仲間達と共にクズ達をぺんぺん草一本生えないぐらい徹底的に叩き潰す蹂躙劇だった。  もっとも、現実は小説より奇とはよく言ったもの。 「アーデル!!貴様、クラーラをどこにやった!!」 「…………はぁ?」  断罪劇直前にアーデル陣営であったはずのクラーラが突如行方をくらますという、ヒロインの予想外な展開ばかりが続いたせいで結果論での蹂躙劇だったのである。  義妹はなぜ消えたのか……?  ヒロインは無事にクズ王太子達をざまぁできるのか……?  義妹の隠された真実を知ったクズが取った選択肢は……?  そして、不穏なタグだらけなざまぁの正体とは……?  そんなお話となる予定です。  残虐描写もそれなりにある上、クズの末路は『ざまぁ』なんて言葉では済まない『ざまぁを超えるざまぁ』というか……  これ以上のひどい目ってないのではと思うぐらいの『限界突破に挑戦したざまぁ』という『稀にみる酷いざまぁ』な展開となっているので、そういうのが苦手な方はご注意ください。  逆に三度の飯よりざまぁ劇が大好きなドS読者様なら……  多分、期待に添えれる……かも? ※ このお話は『いつか桜の木の下で』の約120年後の隣国が舞台です。向こうを読んでればにやりと察せられる程度の繋がりしか持たせてないので、これ単体でも十分楽しめる内容にしてます。

完結 お飾り正妃も都合よい側妃もお断りします!

音爽(ネソウ)
恋愛
正妃サハンナと側妃アルメス、互いに支え合い国の為に働く……なんて言うのは幻想だ。 頭の緩い正妃は遊び惚け、側妃にばかりしわ寄せがくる。 都合良く働くだけの側妃は疑問をもちはじめた、だがやがて心労が重なり不慮の事故で儚くなった。 「ああどうして私は幸せになれなかったのだろう」 断末魔に涙した彼女は……

全ては父様の仰せのままに

あんみつ~白玉をそえて~
BL
短編読み切りBLです。

七つの大罪(魔族神)の末っ子

あおい夜
恋愛
私は憤怒。 憤怒は私の名前でもあり、私が司る力でもある。 私達七つの大罪の兄弟は魔界に住んでいる。 私は魔界で兄弟達の話を聞いたり、眠ったりし、たまに上に行ったりながら過ごして居る。 私の楽しみは好きな人が私達の近くに住んで居て、たまに私達の家に来て恋人である兄弟達と話ている所を見る事だ。 いつも、つまらなそうにしているその人が兄弟達と話ている時はとても楽しそうに話ているのが分かるので私はそれが嬉しいんだ。 、、、その人が私の事をこの世界で一番嫌っていても。 私の兄弟達の恋人は魔界の王、魔王だ。 これは、世界中のみんなから畏れられている憤怒と魔界で人気者の魔王と憤怒の兄弟達の恋と愛のお話です。

悪役令嬢は令息になりました。

fuluri
恋愛
私の名前は暁月 湊。 気がついたら乙女ゲームの世界に転生していた、ただの女子高生だ。 ————前世でやってた乙女ゲーム『クロイツ・ヒルフェ~君想い謳う~』には、ある問題があった。 ストーリーは王道、攻略対象たちや主人公も王道で、特に問題はない。 だというのに、何が問題だったのかと言うと……それは、悪役。 このゲームの悪役は悪役令嬢ではなく悪役令息だったのだ。 まぁ、それ自体は別にたまにあることだし、特に問題ではない。 問題なのは、何故悪役が攻略対象に並ぶ……いや、むしろ追い越すほどのスペックなのか、ということ。 悪役であるのにも関わらず、攻略対象と並んでも全く違和感がない凛々しい美形であり、それに加えて性格も優しく公平で、身分は高いのに傲るところもなく、能力も高く、他の者から慕われる完璧な人物。 …そんな人物が、悪役。 繰り返す。 …悪役、なのだ。 どうしてこんな美味しいキャラ設定を悪役に持ってきたのかと、ネットでは大炎上だった。 …私も、運営に一言だけ言いたいことがある。 「どーして悪役令息が攻略できないんだ!!!」 ……ま、今思えば攻略できないのも当然だと思う。 なんせ、『悪役令息』は─── ───『悪役令嬢』だったんだから。

【完結】ある日突然、夫が愛人を連れてくるものですから…

七瀬菜々
恋愛
皇后シエナと皇帝アーノルドは生まれた時から結婚することが決められていた夫婦だ。 これは完全なる政略結婚だったが、二人の間に甘さはなくとも愛は確かにあった。 互いを信頼し、支え合って、切磋琢磨しながらこの国のために生きてきた。 しかし、そう思っていたのはシエナだけだったのかもしれない。 ある日突然、彼女の夫は愛人を連れてきたのだ。 金髪碧眼の市井の女を侍らせ、『愛妾にする』と宣言するアーノルド。 そんな彼を見てシエナは普段の冷静さを失い、取り乱す…。 ……。 …………。 ………………はずだった。 ※女性を蔑視するような差別的表現が使われる場合があります。苦手な方はご注意ください。

【完結】貴方の望み通りに・・・

kana
恋愛
どんなに貴方を望んでも どんなに貴方を見つめても どんなに貴方を思っても だから、 もう貴方を望まない もう貴方を見つめない もう貴方のことは忘れる さようなら

処理中です...