ハデスが転生したそうデス〜前世の仇を殺す為なら、今世の神すら殺しマス〜

第43章:二叉槍が万能デス

　「我輩眠る。邪魔をするなよ。」

　「えっ！？この状況で！？」

　「エウレス…でも逃げなきゃいけなくなるかもしれないわよ？」

　「その時は我が姉が背負ってくれるのだろう？」

　「えぇっ…まぁ…うん。」

　「では任せた。」

　「うん！」

　そして我輩は瞑想に入り、魂を体から離した。

　『ふむ…かろうじて神の形は保てているが…』

　我輩は肉体の上に浮かび、己が体を見直す。

　その時、止まっていたはずの列車が急発車する。

　どうやら魔獣が仲間を呼び始めたため、逃げ出すようだ。

　魂がこの世の法則から外れ、列車をすり抜け取り残される。

　普通ならこんな事態にはならないが、いかんせん、今の我輩並みの神より劣る神。

　物質・物理に干渉できないのだ。
 　
　『猪口才な世界め…だが、我輩それでも神は神。来いバイデント。』

　神の言葉で我が槍を呼ぶ。

　すると、傍に仄暗き穴が開き、そこから二叉槍が飛び出してくる。

　この槍ならば今の我輩にも掴めるし、干渉できないものに干渉することができるのだ。

　『あの老害はきちんと管理しているか？』

　ブゥン…

　槍は暗く光る。

　我輩がデオスの街を離れる間、バイデントには老害スコルの見張りをさせる事にしたのだ。

　見張りもできて武器にもなる。

　素晴らしき槍である。

　『そうか。順調か。
　では、我輩を置き去りにした彼の列車に追いつくとするか。』

　ビキビキビキッ…！！

　言うが早いかバイデントは、二叉をさらに割り、四叉になる。

　そして槍の反対側は、我輩が腰掛けられるよう、編み椅子になる。

　『フハハハハ！！素晴らしい！
　これこそ死の神の走り方よ！
　行け！バイデント！！！』

　ザシュッ！！！

　バイデントは地を槍先で蹴り、一気に列車との距離を詰めた。

　そして二蹴り目で空中を駆け…

　ダダダダン！！

　いとも簡単に列車の上に着地した。

　『良き働きよ！バイデント！！
　ではこのまま列車の前方付近まで突走！魔獣どもの魂を根こそぎ奪い取れ！
　それが褒美だ！！』

　ブウゥン…！

　槍先の四肢に力がこもり、槍全体がギギッとしなる。

　そして…

　バウンッ！！

　バイデントは再び大跳躍し、列車の前車両に躍り出た。

　そこには、凄まじい勢いで駆け抜け、列車を取り囲む犬型の魔獣どもの姿があった。

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　魔獣の長達は、その目でしかと見ていた。

　人間どもが乗る鉄塊の上に、不吉な気配を纏う男が現れたのを。

　「ガルルルル…」

　「バウッ！」

　「キャン！！」

　そして長達は…

　召集した仲間を全て、その男が乗る鉄塊に突入させた。