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第32章:前言の真意デス
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なんなのだこ奴らは…
事実を言葉にしただけで泣きながら笑い、現在は両側から我輩の手を取り歩いている。
歩きにくい…しかし、我輩はそれ以上の案件に思考を割いていた。
あの"カミコロシ"の小僧は、未だ地下にいる。
父と母は果たして原型を留めているだろうか…
グチャグチャの肉塊になっていたら、それはそれで面白いかも知れないが…。
「エウレス、地下ってどこまで降りたら良いんだ?」
兄が問いかけてくる。
こいつはやはり視野が狭い。
「はあ…先程上から穴を見なかったのか?穴の底には破壊し尽くされてはいたものの、クルマの車輪が転がっていた。
つまり…」
「地下駐車場か!エウレスはやっぱよく見てんな~。」
「ふん。
兄の視野が狭すぎるだけだろう。」
すると、兄の顔が曇る。
「そうなんだよな…俺、冒険者の修業を2年ぐらいしてて、師匠がいるんだけどな、最近よく言われるんだ…
お前は視野が狭いってその内痛い目に合うってさ。
どうすりゃいいんだろうな。」
「…その口ぶりでは、兄の師とやらは視野の狭さを把握していない事を咎めていたのだろう。」
「え?そうなのか?」
「考えてもみよ。視野など経験を重ねれば自然と広がる。今の兄に言ったとてどうにもならんことだ。
つまり兄の師は、"視野が狭いことを自覚し、精進せよ"と言いたかったのではないか。」
「そう…だな…」
「ま、痛い目にならもう合った。
師の言う通りだったな。」
「うぇっ??!」
「忘れられまい?
兄は腹を貫かれたのだぞ。
あれは…
まさしく"死にかけた"のだ。」
「"死"…」
兄は腹を見つめて考え込む。
「あの人は…
やっぱ神様だったのか…」
「…」
我輩のことか。
「エウレスは知らないだろうけどな、神様が現れたんだぜ。」
「ほう…それはさぞ神々しい様だったのだろうな。」
「いや…滅茶苦茶怖かった。
キレたエウレスよりずっと怖かったぜ。」
「…ふっ…そうか。」
「ん?なんで嬉しそうなんだ?」
「別段。」
「はぁ…?そうか…?」
我輩にとって恐怖とは褒め言葉だ。
なかなか成長が見られる兄だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あ、私もエウレスに聞きたかったの。」
「なんだ、矢継ぎ早に。」
「私もエウレスに言われたことと同じようなことを魔導学院の先生に言われたの。
立ち位置を考えなさい。フワフワしているって。」
此奴もか。我が兄姉は揃って阿保のようだ。わざわざ言われているのに気付かんとは。
「…はぁ…嘆かわしい…」
「そ…それは分かっているから教えてよぉ…」
「…姉が今際の際に使ったあの魔法。
あれはどこで学んだ?」
「え…?あ、ライフ・コアのこと?
あれは生命魔法。生命力を魔力の代わりに使って、守ったり力を増加させたりする魔法よ。
担任の先生に習ったの…」
「あの魔法は見事な完成度だと思った。姉には攻撃魔法よりああ言う魔法が合っている。」
「え…でも、今組んでるパーティーでは攻撃役を期待されてて…」
「よく分からんが、そのパーティーでなければ駄目なのか?」
「あ…」
「ふん。気付いたか。立ち位置…自分の居場所くらい自分で考え選べ。
適正に合わぬならば去るのも立派な選択だろう。」
「…そっか…そうだね…
そう言う事だったんだ…」
「ふん。次からは自分で良く考えるのだな。…ところで。」
「…ん?」
「姉はどう思ったのだ?神とやらを…」
「え?あぁ…怖かったけど…なんか懐かしくて可愛くてカッコよかったな…」
姉は頬を赤らめて呟いた。
なんだそれは。
「はっ…くだらんな。」
「えっ…?!エウレスどうしたの!?
なんで怒ってるの!?」
可愛い、カッコいい、懐かしいとは…我輩も舐められたものだ。
姉はまだまだかも知れんな。
事実を言葉にしただけで泣きながら笑い、現在は両側から我輩の手を取り歩いている。
歩きにくい…しかし、我輩はそれ以上の案件に思考を割いていた。
あの"カミコロシ"の小僧は、未だ地下にいる。
父と母は果たして原型を留めているだろうか…
グチャグチャの肉塊になっていたら、それはそれで面白いかも知れないが…。
「エウレス、地下ってどこまで降りたら良いんだ?」
兄が問いかけてくる。
こいつはやはり視野が狭い。
「はあ…先程上から穴を見なかったのか?穴の底には破壊し尽くされてはいたものの、クルマの車輪が転がっていた。
つまり…」
「地下駐車場か!エウレスはやっぱよく見てんな~。」
「ふん。
兄の視野が狭すぎるだけだろう。」
すると、兄の顔が曇る。
「そうなんだよな…俺、冒険者の修業を2年ぐらいしてて、師匠がいるんだけどな、最近よく言われるんだ…
お前は視野が狭いってその内痛い目に合うってさ。
どうすりゃいいんだろうな。」
「…その口ぶりでは、兄の師とやらは視野の狭さを把握していない事を咎めていたのだろう。」
「え?そうなのか?」
「考えてもみよ。視野など経験を重ねれば自然と広がる。今の兄に言ったとてどうにもならんことだ。
つまり兄の師は、"視野が狭いことを自覚し、精進せよ"と言いたかったのではないか。」
「そう…だな…」
「ま、痛い目にならもう合った。
師の言う通りだったな。」
「うぇっ??!」
「忘れられまい?
兄は腹を貫かれたのだぞ。
あれは…
まさしく"死にかけた"のだ。」
「"死"…」
兄は腹を見つめて考え込む。
「あの人は…
やっぱ神様だったのか…」
「…」
我輩のことか。
「エウレスは知らないだろうけどな、神様が現れたんだぜ。」
「ほう…それはさぞ神々しい様だったのだろうな。」
「いや…滅茶苦茶怖かった。
キレたエウレスよりずっと怖かったぜ。」
「…ふっ…そうか。」
「ん?なんで嬉しそうなんだ?」
「別段。」
「はぁ…?そうか…?」
我輩にとって恐怖とは褒め言葉だ。
なかなか成長が見られる兄だった。
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「あ、私もエウレスに聞きたかったの。」
「なんだ、矢継ぎ早に。」
「私もエウレスに言われたことと同じようなことを魔導学院の先生に言われたの。
立ち位置を考えなさい。フワフワしているって。」
此奴もか。我が兄姉は揃って阿保のようだ。わざわざ言われているのに気付かんとは。
「…はぁ…嘆かわしい…」
「そ…それは分かっているから教えてよぉ…」
「…姉が今際の際に使ったあの魔法。
あれはどこで学んだ?」
「え…?あ、ライフ・コアのこと?
あれは生命魔法。生命力を魔力の代わりに使って、守ったり力を増加させたりする魔法よ。
担任の先生に習ったの…」
「あの魔法は見事な完成度だと思った。姉には攻撃魔法よりああ言う魔法が合っている。」
「え…でも、今組んでるパーティーでは攻撃役を期待されてて…」
「よく分からんが、そのパーティーでなければ駄目なのか?」
「あ…」
「ふん。気付いたか。立ち位置…自分の居場所くらい自分で考え選べ。
適正に合わぬならば去るのも立派な選択だろう。」
「…そっか…そうだね…
そう言う事だったんだ…」
「ふん。次からは自分で良く考えるのだな。…ところで。」
「…ん?」
「姉はどう思ったのだ?神とやらを…」
「え?あぁ…怖かったけど…なんか懐かしくて可愛くてカッコよかったな…」
姉は頬を赤らめて呟いた。
なんだそれは。
「はっ…くだらんな。」
「えっ…?!エウレスどうしたの!?
なんで怒ってるの!?」
可愛い、カッコいい、懐かしいとは…我輩も舐められたものだ。
姉はまだまだかも知れんな。
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