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第21章:楽しい1日になりそうデス

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 最初は微かな違和感だった。

 「ほら。エウレスちゃん。あ~ん。」

 我輩は母にホットケーキを食べさせて貰っていた。

 「なあ、父さん。この会社の盾、こんな雑な作りだったか?」

 「ああ、それか。最近工場を他国に移したらしくてな。
 品物が悪くなったな。」

 父と自称・兄はこそこそとなにやら話し込んでいた。

 「あ…この呪文やっと見つかった!
 これでまた攻撃系ふやせる~!
 ハブられなくて済むわ…」

 自称・姉は魔術書とやらを見て奇声を上げていた。

 それなりに平和だった。

 …それまでは。

 ズズゥウウウウウン…
          バチンッ!

 突然、建物全体が揺れたかと思うと、明かりがきえた。

 「きゃっ!!なに?!なんなの!?」

 「マリアン!お前達!
 パパの側を離れるなよ!!」

 「なんだこれ…
 マドホの電気も点かねえ…」

 「ママ!ライトの魔法も使えない!!
 どうなってるの!?」

 「……魔力吸収か。」

 「え、魔力吸収!?」

 元世元の世界でも似たようなことが起きたことがある。
 それはティタノマキア、ギガントマキアと、2つの巨神大戦が終わった後…

 巨体は星々と頭が摩するほど。
 
 腕は伸ばせば世界の東西の果てまで届くほど。

 大腿から上は人、そこから下は巨大な毒蛇がとぐろを巻いた姿をしており、その脚は決して疲れない。

 底知れぬ力を持ち、両肩から総勢100の蛇の頭が生え、火のように輝く目を持ち、炎を吐く。

 様々な声を発し、言葉を話せばその度に山々が鳴動する。

 そんな規格外の巨獣・テュポーンがオリュンポスに攻め込んできた時のこと。

 神の威光に照らされたオリュンポスは、その輝きを失った。

 あれは、テュポーンが神の威気…"神威"を根こそぎ吸収してしまったからだった。

 あの時は天界が冥府と同じくらい暗くなり、内心愉快で仕方なかった。

 今の現象はそれと似ている。

 この暗闇は、我輩にとって実に心地よい。

 人間どもがざわめき、恐怖する様子がよく見える。

 実に愉快だ。

 恐らく、この暗闇を作り出した奴らも、我輩と同類だろう。

 でなければ外は昼間であるにも関わらず、天からの光が差し込まぬわけがない。

 この建物の魔力を吸収している何者かが、魔力を使い闇を作り出しているのだ。

 「魔力吸収って…稀に強大な魔物が持つっていう特性!?なんでそんな魔物がこんな田舎街に…!!
 っていうかなんでそんな珍しい知識を、エウレスが知ってるのよ!?」

 「貴様が昨日、紙に一心不乱に書き写していたではないか。
 あれは覚えるために書いていたのではないのか?」

 「えっ…あっ!!…い、いつの間に…」

 「はぁ…嘆かわしい…いくら書いたところで、身に染みねば意味が無い…」

 「うっ……ご…ごめんなさい…」

 「エウレスちゃん、ミレス。
 今はケンカしてる場合じゃないわ。
 落ち着きなさい。
 ジョー、ジャッジ。
 何か武器はある?」

 「俺は盾しかないよ…でも確か武器屋が近くにあったはずだ。」

 「俺は素手だね…
 できれば武器が欲しいが…
 家族から離れたくはないかな…」

 「そう…みんな同じような状況ね…」

 さすがに母は死を実感しただけのことはある。

 慌てず騒がず冷静だ。

 だがやはり緊張しているのだろうな。

 気付いていない。

 バキィッ!!!

 「「「ぎゃあああああ!!!」」」

 「なんだ!?」

 「いやあああああ!!」

 「助けてええええ!!!」

 ここからそう離れていない場所の床から触手が生え、人間どもがはらわたを引きずり出され、食われた音だった。

 「いけない…早くここから逃げないと…またみんな死んでしまうわ…!!」

 さぁ、母よ。

 どうやって我輩達を救うのかな?

 お手並みを拝見と行こうではないか。

 フハハハハハハ…!!!

 2年ぶりに、実に楽しく素晴らしい1日になりそうだ…!!!


 


 
 

 
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