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第十一話「家族団欒」
【二章】彼女を紹介します
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「二度ある事は三度あるってヤツだなー」
能天気な声が後ろから聞こえてきても葵は凛になんと説明するかを考えながら歩いている。言い訳はしたくないしだからと言って本当の事を言ってもきっと兄たちが騒ぎ立てて迷惑を掛けるのが安易に想像がつく。
次の十字路を曲がれば北川家は見えてくる。だから葵は一度止まって少し後ろを歩く兄たちに向き合った。急に立ち止まった葵に驚きつつも足を止めて二人は葵を見つめる。
「兄貴たちはここで待ってて」
「えー来た意味ねーじゃん」
「……陽、その、俺も葵の意見には賛成……かな」
「んだよ……分かったよ」
「うん。くれぐれも大人しくしててね」
どこか威圧感を覚える程の葵の言葉で、金縛りにあったように動かなくなった兄たちを確認した後、十字路を曲がって北川家へ歩き出す。曲がって三軒目が北川家だ。だからすぐにつくのだが、すぐにその姿は見えて葵は走って北川家の前に向かう。
「あ、葵! 走って来なくてよかったのに」
「えっと……?」
北川家の軒先には凛が立っていた。凛の隣には杏がいて杏は隣の女性の腕を抱きしめていた。少し恥ずかしそうにしつつも杏は腕を離さなかった。
「えっと、えっとね、葵に紹介したい人がいて……。私のお姉ちゃんなんだけど」
「初めまして。凛と杏の姉の安里です」
「あ、初めまして。僕は三田葵です」
「……その、彼女なんだ」
「ふふふっ、素敵な子ね。凛をよろしくお願いします」
丁寧に会釈されて葵も慌てて軽く頭を下げる。元の姿勢に戻ると微笑まれてその美しさに見惚れてしまった。見つめられていたのが不思議だったのか、小さく首を傾げた安里に葵は我に返り持っていたビニール袋を凛に差し出した。
「急にごめんね。別に今日じゃなくても良かったんだけど……その、会いたくなっちゃって……」
「ううん! わざわざありがとう!」
「親戚のさくらんぼとても美味しいから、良かったら皆で食べて」
葵からさくらんぼを受け取ると嬉しそうに凛は笑った。さくらんぼを渡すだけのつもりだったので少しだけ話をしたら帰るつもりだ。だけど凛を見ていると一緒に居たくなってしまう。付き合ってから約半年で毎日学校で会っているのに、長期休暇の度に会いたくなってしまう想いを抑えなければと、だけど視線は一直線に向かってしまう。
*
「お、おい……どういう事だ……?」
十字路の塀の傍にしゃがみ、隠れながら陽斗は小さな声で問うた。陽斗の後ろに隠れるようにして北川家の軒先を覗く海斗は悩んでいる様にも思えた。
「海くん……? 全部知ってたのか?」
「え……いや、確信は持てなかったけど、なんとなくは気付いてたかな?」
「え、ウソだろ……? 杏ちゃんの事も? 凛くんの事も?」
「い、いや流石にそこまでは知らなかったけど……」
海斗の肩を掴んで揺らし続ける陽斗は額から汗が垂れる。これは暑いからだ。決して動揺している訳ではないと言い聞かせてもう一度北川家の軒先を覗く。凛と葵は何かを話しているが聞こえない。凛の横にいる自分の恋人はあろう事かこの人が恋人ですみたいに隣に並ぶ女性にくっついている。少し羨ましいように視線を送った。
「あーいいなー」
「ふふっ、素直に伝えてみたらいいのに」
「ばっ、そんなんしたら睨まれるに決まってんだろッ!? それに嫌な思いはさせたくねーし……」
「本当に、素直じゃないなぁ陽は」
海斗がいつまでも笑うものだから、陽斗はもう一度海斗の肩を掴んで揺らし続ける。
「目が回るよ……」
「どーせオレは素直じゃねーよ!!」
声を抑えつつだけど荒げながら海斗の肩を揺らし続ける。流石に目が回って来て、海斗は止めようと陽斗の腕を掴む。突然の海斗の動きにバランスを崩して二人は地面に倒れた。
遠くで聞こえた小さな叫び声に顔を上げると、北川家の軒先にいる四人の視線が集中していた。
「おい、海……やべー事になったぞ」
「えぇ……ほぼ陽の所為じゃないか……」
二人は起き上がると顔を見合わせてため息を吐いた。陽斗は頭を掻き、海斗は頬を掻きながら北川家へ歩いて行く。
葵の隣に並ぶと、案の定杏は睨んできて、その隣で凛は目を丸くしていた。葵の痛い程の視線を感じるが今視線を合わせたら無事では済まないと察して、二人は苦笑しながらお互いの恋人を見つめていた。
「あらあら、お二人はまた無茶をされてますね」
「あ……ごめん安里……折角の帰省なのに邪魔しちゃって」
「いいのですよ海斗さん。葵さんと挨拶もできましたし。本当にあなたたち兄妹は似ていますね」
優しい微笑みは女神かと思ってしまう程に柔らかくて、そんな安里に海斗は照れて視線を外す。
状況を読み取れない葵と凛と杏は、お互いの兄と姉を凝視している。その視線に気づいた海斗は少し考えて口を開く。
「あ……えっと、安里は俺の後輩で、お付き合いさせてもらってるんだ」
三人の視線は一気に安里へ向いた。あらあら、なんて笑っている安里を呆然と眺めた後、三人の絶叫が住宅街に響き渡る。
能天気な声が後ろから聞こえてきても葵は凛になんと説明するかを考えながら歩いている。言い訳はしたくないしだからと言って本当の事を言ってもきっと兄たちが騒ぎ立てて迷惑を掛けるのが安易に想像がつく。
次の十字路を曲がれば北川家は見えてくる。だから葵は一度止まって少し後ろを歩く兄たちに向き合った。急に立ち止まった葵に驚きつつも足を止めて二人は葵を見つめる。
「兄貴たちはここで待ってて」
「えー来た意味ねーじゃん」
「……陽、その、俺も葵の意見には賛成……かな」
「んだよ……分かったよ」
「うん。くれぐれも大人しくしててね」
どこか威圧感を覚える程の葵の言葉で、金縛りにあったように動かなくなった兄たちを確認した後、十字路を曲がって北川家へ歩き出す。曲がって三軒目が北川家だ。だからすぐにつくのだが、すぐにその姿は見えて葵は走って北川家の前に向かう。
「あ、葵! 走って来なくてよかったのに」
「えっと……?」
北川家の軒先には凛が立っていた。凛の隣には杏がいて杏は隣の女性の腕を抱きしめていた。少し恥ずかしそうにしつつも杏は腕を離さなかった。
「えっと、えっとね、葵に紹介したい人がいて……。私のお姉ちゃんなんだけど」
「初めまして。凛と杏の姉の安里です」
「あ、初めまして。僕は三田葵です」
「……その、彼女なんだ」
「ふふふっ、素敵な子ね。凛をよろしくお願いします」
丁寧に会釈されて葵も慌てて軽く頭を下げる。元の姿勢に戻ると微笑まれてその美しさに見惚れてしまった。見つめられていたのが不思議だったのか、小さく首を傾げた安里に葵は我に返り持っていたビニール袋を凛に差し出した。
「急にごめんね。別に今日じゃなくても良かったんだけど……その、会いたくなっちゃって……」
「ううん! わざわざありがとう!」
「親戚のさくらんぼとても美味しいから、良かったら皆で食べて」
葵からさくらんぼを受け取ると嬉しそうに凛は笑った。さくらんぼを渡すだけのつもりだったので少しだけ話をしたら帰るつもりだ。だけど凛を見ていると一緒に居たくなってしまう。付き合ってから約半年で毎日学校で会っているのに、長期休暇の度に会いたくなってしまう想いを抑えなければと、だけど視線は一直線に向かってしまう。
*
「お、おい……どういう事だ……?」
十字路の塀の傍にしゃがみ、隠れながら陽斗は小さな声で問うた。陽斗の後ろに隠れるようにして北川家の軒先を覗く海斗は悩んでいる様にも思えた。
「海くん……? 全部知ってたのか?」
「え……いや、確信は持てなかったけど、なんとなくは気付いてたかな?」
「え、ウソだろ……? 杏ちゃんの事も? 凛くんの事も?」
「い、いや流石にそこまでは知らなかったけど……」
海斗の肩を掴んで揺らし続ける陽斗は額から汗が垂れる。これは暑いからだ。決して動揺している訳ではないと言い聞かせてもう一度北川家の軒先を覗く。凛と葵は何かを話しているが聞こえない。凛の横にいる自分の恋人はあろう事かこの人が恋人ですみたいに隣に並ぶ女性にくっついている。少し羨ましいように視線を送った。
「あーいいなー」
「ふふっ、素直に伝えてみたらいいのに」
「ばっ、そんなんしたら睨まれるに決まってんだろッ!? それに嫌な思いはさせたくねーし……」
「本当に、素直じゃないなぁ陽は」
海斗がいつまでも笑うものだから、陽斗はもう一度海斗の肩を掴んで揺らし続ける。
「目が回るよ……」
「どーせオレは素直じゃねーよ!!」
声を抑えつつだけど荒げながら海斗の肩を揺らし続ける。流石に目が回って来て、海斗は止めようと陽斗の腕を掴む。突然の海斗の動きにバランスを崩して二人は地面に倒れた。
遠くで聞こえた小さな叫び声に顔を上げると、北川家の軒先にいる四人の視線が集中していた。
「おい、海……やべー事になったぞ」
「えぇ……ほぼ陽の所為じゃないか……」
二人は起き上がると顔を見合わせてため息を吐いた。陽斗は頭を掻き、海斗は頬を掻きながら北川家へ歩いて行く。
葵の隣に並ぶと、案の定杏は睨んできて、その隣で凛は目を丸くしていた。葵の痛い程の視線を感じるが今視線を合わせたら無事では済まないと察して、二人は苦笑しながらお互いの恋人を見つめていた。
「あらあら、お二人はまた無茶をされてますね」
「あ……ごめん安里……折角の帰省なのに邪魔しちゃって」
「いいのですよ海斗さん。葵さんと挨拶もできましたし。本当にあなたたち兄妹は似ていますね」
優しい微笑みは女神かと思ってしまう程に柔らかくて、そんな安里に海斗は照れて視線を外す。
状況を読み取れない葵と凛と杏は、お互いの兄と姉を凝視している。その視線に気づいた海斗は少し考えて口を開く。
「あ……えっと、安里は俺の後輩で、お付き合いさせてもらってるんだ」
三人の視線は一気に安里へ向いた。あらあら、なんて笑っている安里を呆然と眺めた後、三人の絶叫が住宅街に響き渡る。
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