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【ep.10】私は何になればいいんだろう

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 私から光が放たれてると気付いた頃には、私以外見えなくなる位に辺りが光に覆われていた。
 慌てていると光が収まって、元のダンジョンへ戻る。
 辺りを見渡して、ドラゴンが倒れているのが見えた。それを見て安心してしまったけど、問題はそれだけじゃない。

「リュシー!? どこ!?」

 辺りを見渡してもリュシーの姿がない。
 私から放たれる光で何が起きたのか解らずに、私は立ったまま呆然と辺りを見渡し続ける。

「ん……」

 小さく聞こえた声に振り向けば、倒れていたノアが起き上がっていて、私は慌ててノアの傍に駆け寄る。

「エマ……ノア……!」
「マリア……無事でよかった……! ノアも無事でよかった……!」
「あの、リュシーはどこにいるのですか……?」

 ドラゴンが倒れているのを確認したマリアが私とノアの元へ駆けて来て、無事な事に安心する。
 ノアは生きているけれど、大きな傷を負った後だし早くここから出た方がいい。だけどリュシーの姿はどこにもなくて、このままじゃ出るに出られない。

「リュシーは……」
「ノア……大丈夫?」
「エマ……君は何者だ……?」
「ノ、ア……?」

 ノアは驚いた様な顔で私を見つめる。心臓の辺りを掴みながら、真剣な瞳で私に問う。

「リュシーは無事だよ。ちゃんとにいる」

 そう言ってノアは襟元の服を破った。左胸の上の方に埋め込まれたピンクの宝石を見せながら「ここにいる」ともう一度呟く。
 それが何を意味しているのか正確には理解できなかった。ただ予想はできて、もし予想通りにリュシーがノアの心臓になったのだとしたら……。ただ、どうしてそうなったのか理解できない。
 でもノアは胸に埋め込まれている宝石を優しく撫でながら、悲しそうな表情をしている。
 私の予想が現実だと突きつけられている様で、驚きのままノアを見つめる事しか出来ない。

 ――……マ様

 頭の中に降り注ぐ様な声が聞こえて、私は顔を上げる。辺りにはノアを見つめる私とマリアしかいない。

 ――……エマ様、こちらです

 声のした方へ顔を向けると、そこにはドラゴンが立って私を見ていた。
 私の動きにノアとマリアもドラゴンを見て、身構える。今の私たちに戦える力は残っていない。

「エマ……! 危ないですわ!」

 私は立ち上がってドラゴンに向かって歩いて行く。
 ゆっくりとドラゴンの前に立って、視線を合わせた。

「私を呼んだのは、きみ?」
『はい。貴方をお待ちしておりました。先程は混乱してしまい申し訳御座いません』
 
 ドラゴンと会話が出来た事に驚いたのは私だけではなかった。ドラゴンが襲ってこないのを見て安心した様な声が後ろから聞こえて、だけど私は振り向かずにドラゴンを見続ける。

『貴方の力に影響されて混乱し、貴方達を傷つけてしまった事は謝罪だけでは足りないと重々承知しています。エマ様……貴方は、ご自身のお力の制御が出来ていないとお見受け致します』
「私の、力……?」
『はい。どうぞお座り下さい。貴方の事をお話致しましょう』

 ドラゴンが私の前に尻尾を出してきた。私はマリアとノアを呼ぶ様に見て、2人は私の隣に歩いて来る。ノアも歩ける程度には無事の様で安心した。3人でドラゴンの尻尾に座ると、目をつむったドラゴンが話を始める。

 *

 この世を支えるのは神様である。神様が精霊を使い世界を構築する。その中で四大精霊と呼ばれる精霊は4つの柱となって世界を支える存在。
 その中の地属性の精霊が目の前にいるドラゴンだと告げられた。
 四大精霊が住むダンジョンは浄化されていて、モンスターは生息できない。それ所か、人類が入るのさえ難しい程の強力な結界が張ってある。
 その結界を解いてダンジョンに入れたのは、私がいたからだと目の前のドラゴンは優しい瞳で私を見つめている。

『エマ様、貴方は……神様のご息女で御座います』

 ドラゴンの言葉に私は目を見開いた。これ以上開かない位に大きく。
 何を言っているんだろう?、と言う視線は隣にいる2人も同じで、不思議そうな顔が可笑しかったのか、ドラゴンは大きな声で笑う。地響きの様な振動が広がって、私は我に返る。

『貴方は死んだ人間に不老不死の魔女の心臓を転移させました。それは人間や魔女が出来る事ではありません』

 それがノアとリュシーの事なのだと理解して、私は思わずノアを見る。
 驚いて口を小さく開けるノアの瞳は今にも泣いてしまいそうな位に揺れていて、私はノアに掛ける言葉が見つからないでいた。
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