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終章「The last battle in shangri-la eden」
「Like a angel song」
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爪と剣が激しい火花を散らし、離れると同時に吹雪と紅蓮が通り過ぎ、戦況が一瞬落ち着き、また爪と剣が競り合う。
「まさかここまで粘るとはな、ウリエル……!」
「我らは秩序の世界をもたらすためにここにある。負けるわけには行かぬ」
剣が爪を折り取り、ユウェルが大きく怯む。すかさず剣が彼の胴体を貫き、そこから紅蓮を解き放って焼く。
「うぐあッ……!」
ユウェルは後脚でウリエルを蹴りつけ、咄嗟に飛び退く。体勢を崩したところに大群のメタトロンが突っ込み、ユウェルは滅多刺しにされる。ウリエルが追撃を仕掛けようとするも、空の彼方から飛んできた光の矢に射貫かれ、叩き落される。ユウェルは全身から冷気を発してメタトロンを一気に壊滅させ、落下していくウリエルと、それを追って暗黒を駆ける白馬の騎士《ホワイトライダー》を見やる。
「そちらは任せるぞ……ホワイトライダー……!」
ユウェルは消耗していたようだったが、すぐさまメタトロンたちの相手をし始める。
光の矢の進むままに押し込まれ、足場に激突して大爆発する。ウリエルは体勢を崩しながら大きく後退し、追撃に来たホワイトライダーは、白馬を消滅させつつ着地する。両者が同時に体勢を正し、向かい合う。
「随分と好き勝手してくれてるようじゃねえか、ウリエル」
ホワイトライダーは既に眼窩に紅い光を湛えており、口端から蒸気を漏らす。
「我ら四大天使は長き時を経て、己の頭で考える機会を得た。そして気付いたのだ。人が作りし偽りの主ではなく、我らが真の主、王龍ニヒロのために全てを費やすべきであると」
「ったく面倒なことしやがって。派手に動けばユグドラシルが動きやすいって、てめえの主は思わなかったのかよ」
「そのために我らが居る。お前たちを葬り去り、そして――」
「俺たちがてめえらの相手をしてる時点で奴の掌の上だろうが。だが、俺たちもてめえらを野放しにしておくわけにはいかねえ。特異点の創世にあれこれ入れ知恵されたら堪らんからな」
沈黙したウリエルは、右手に剣を、左手に紅蓮を携え、構える。
「相変わらず自分たちが間違ってそうな話題になるとだんまりか。餓鬼かよ、クソ天使が。どうせその様子だと、ニヒロから大した情報も貰えずにここに来てるんだろ」
「お前も我が主を愚弄する気か」
「出た、いつものやつか。ニヒロは頭が切れる。悔しいが、あいつとユグドラシルの考えてることは微塵もわからねえ。だがてめえらは違う。ただ阿呆なだけだ。思考を放棄してるだけだ」
「仕えるものに、自我が必要か?」
「あくまでもてめえらは、自分の自由意志なんてものが元々無いってスタンスなのか?」
「そうだ」
両者は間合いを測るように、距離を保ったまま旋回する。
「私たちは自由意志で、主に仕えていると思っていたが、違う。自分の生を主に捧げるのではなく、主に捧げるために生を与えられたのだ。故に、四大天使への否定は主への否定、故に我らは憤る」
「(これが単純な機械とEPの差か……?)」
ウリエルの言葉に対し、ホワイトライダーは一瞬考察する。しかしすぐに思考を引き戻し、警戒を保つ。
「本当は我々もわかっている。盲目な信仰、従順、恭順……無辜の民を導くには、それで充分かもしれない。だがより広く、理想の世を作り出すには……理念の気高さ、強さこそが重要になる。人の、生への飽くなき探求心が我々を生み出したように。我らにその強さはない。ならば我らに理想を、理念を与えるものにこそ、我らは力を奮うべきなのだ」
「ハッ、てめえらもちったぁまともなこと言えるようになったか」
両者が同時に飛び退き、ウリエルの側には、同じような異形の姿となったラファエル、ガブリエル、ミカエルが現れ、ホワイトライダーの側にはレッド、ブラック、ペイルが合流する。
「なんじゃ、まだ仕掛けておらんかったのか」
「すまねえ、つい無駄話に花を咲かせちまった」
レッドとホワイトが軽く言葉を交わすと、ブラックが天秤を取り出しつつ続く。
「我らの王が崩れるまで後少し……少しの油断も許されん」
「だが楽しまないと損だろう、ブラック」
ペイルが鎌を呼び出しつつ諭す。
「そうだな……」
「へっ、これで終いなら気合入れていくだけだ、なぁ!」
ホワイトが発破をかけ、四人はそれぞれの得物を持って構える。
「もはや、この世に該たる是非も無し」
ウリエルとほぼ同等の格好をし、槍を携えたラファエルがそう言うと、石膏の顔を盾代わりにした騎士のごとき様相のガブリエルが続く。
「虚無に満ちた永遠なる秩序のために、全てを滅ぼさねば」
石膏の顔を人質のように、石膏の両腕で押さえつけたものを胴体に据えた、ミカエルが続く。
「万象は今、我らの手によって生まれ変わるのだ」
「まさかここまで粘るとはな、ウリエル……!」
「我らは秩序の世界をもたらすためにここにある。負けるわけには行かぬ」
剣が爪を折り取り、ユウェルが大きく怯む。すかさず剣が彼の胴体を貫き、そこから紅蓮を解き放って焼く。
「うぐあッ……!」
ユウェルは後脚でウリエルを蹴りつけ、咄嗟に飛び退く。体勢を崩したところに大群のメタトロンが突っ込み、ユウェルは滅多刺しにされる。ウリエルが追撃を仕掛けようとするも、空の彼方から飛んできた光の矢に射貫かれ、叩き落される。ユウェルは全身から冷気を発してメタトロンを一気に壊滅させ、落下していくウリエルと、それを追って暗黒を駆ける白馬の騎士《ホワイトライダー》を見やる。
「そちらは任せるぞ……ホワイトライダー……!」
ユウェルは消耗していたようだったが、すぐさまメタトロンたちの相手をし始める。
光の矢の進むままに押し込まれ、足場に激突して大爆発する。ウリエルは体勢を崩しながら大きく後退し、追撃に来たホワイトライダーは、白馬を消滅させつつ着地する。両者が同時に体勢を正し、向かい合う。
「随分と好き勝手してくれてるようじゃねえか、ウリエル」
ホワイトライダーは既に眼窩に紅い光を湛えており、口端から蒸気を漏らす。
「我ら四大天使は長き時を経て、己の頭で考える機会を得た。そして気付いたのだ。人が作りし偽りの主ではなく、我らが真の主、王龍ニヒロのために全てを費やすべきであると」
「ったく面倒なことしやがって。派手に動けばユグドラシルが動きやすいって、てめえの主は思わなかったのかよ」
「そのために我らが居る。お前たちを葬り去り、そして――」
「俺たちがてめえらの相手をしてる時点で奴の掌の上だろうが。だが、俺たちもてめえらを野放しにしておくわけにはいかねえ。特異点の創世にあれこれ入れ知恵されたら堪らんからな」
沈黙したウリエルは、右手に剣を、左手に紅蓮を携え、構える。
「相変わらず自分たちが間違ってそうな話題になるとだんまりか。餓鬼かよ、クソ天使が。どうせその様子だと、ニヒロから大した情報も貰えずにここに来てるんだろ」
「お前も我が主を愚弄する気か」
「出た、いつものやつか。ニヒロは頭が切れる。悔しいが、あいつとユグドラシルの考えてることは微塵もわからねえ。だがてめえらは違う。ただ阿呆なだけだ。思考を放棄してるだけだ」
「仕えるものに、自我が必要か?」
「あくまでもてめえらは、自分の自由意志なんてものが元々無いってスタンスなのか?」
「そうだ」
両者は間合いを測るように、距離を保ったまま旋回する。
「私たちは自由意志で、主に仕えていると思っていたが、違う。自分の生を主に捧げるのではなく、主に捧げるために生を与えられたのだ。故に、四大天使への否定は主への否定、故に我らは憤る」
「(これが単純な機械とEPの差か……?)」
ウリエルの言葉に対し、ホワイトライダーは一瞬考察する。しかしすぐに思考を引き戻し、警戒を保つ。
「本当は我々もわかっている。盲目な信仰、従順、恭順……無辜の民を導くには、それで充分かもしれない。だがより広く、理想の世を作り出すには……理念の気高さ、強さこそが重要になる。人の、生への飽くなき探求心が我々を生み出したように。我らにその強さはない。ならば我らに理想を、理念を与えるものにこそ、我らは力を奮うべきなのだ」
「ハッ、てめえらもちったぁまともなこと言えるようになったか」
両者が同時に飛び退き、ウリエルの側には、同じような異形の姿となったラファエル、ガブリエル、ミカエルが現れ、ホワイトライダーの側にはレッド、ブラック、ペイルが合流する。
「なんじゃ、まだ仕掛けておらんかったのか」
「すまねえ、つい無駄話に花を咲かせちまった」
レッドとホワイトが軽く言葉を交わすと、ブラックが天秤を取り出しつつ続く。
「我らの王が崩れるまで後少し……少しの油断も許されん」
「だが楽しまないと損だろう、ブラック」
ペイルが鎌を呼び出しつつ諭す。
「そうだな……」
「へっ、これで終いなら気合入れていくだけだ、なぁ!」
ホワイトが発破をかけ、四人はそれぞれの得物を持って構える。
「もはや、この世に該たる是非も無し」
ウリエルとほぼ同等の格好をし、槍を携えたラファエルがそう言うと、石膏の顔を盾代わりにした騎士のごとき様相のガブリエルが続く。
「虚無に満ちた永遠なる秩序のために、全てを滅ぼさねば」
石膏の顔を人質のように、石膏の両腕で押さえつけたものを胴体に据えた、ミカエルが続く。
「万象は今、我らの手によって生まれ変わるのだ」
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