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三千世界・結末(10)

エピローグ「隷う者、奉ろわぬ者」

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 始源世界
 アイアンボトム・サウンド Chaos海上基地
 竜の姿で基地の上から海を眺めるニヒロの下に、人間の姿のクインエンデ、メランエンデ、エストエンデが現れる。
「ニヒロ様」
 クインエンデが口を開き、そのまま続ける。
「三千世界の戦いは、無事バロン・エウレカの勝利で終わったようです。しばらくは、我々も裏工作・研究がメインになるかと」
 ニヒロが反応を示さないでいると、メランエンデが言葉を発する。
「空の器は消えてしまいましたね……あんな素敵な無明火、他にいませんのに」
 それにニヒロが口を挟む。
「明人はアルヴァナが回収しているはずだ。無事でなければ、ユグドラシルが何らかの手を打たないはずがない」
 ニヒロは立ち上がる。
「メランエンデ。貴様、明人が惜しいのか?」
「はい、それはもう。彼のやや子が欲しかったくらいには、好きでしたよ」
「ふん。ならば貴様にはしばらく暇を与える。時間は己で好きに使え。行くぞクインエンデ、エストエンデ」
 ニヒロは人間の姿となり、二人を連れて基地内部へ去っていく。一人残ったメランエンデは、海風を受けながら水平線の向こうを見る。
「ああ、そういうことですか。ニヒロ様が確かめたいのは、あなたが私たちに、寧ろ人に近い心を与えた理由の裏付け、ですねえ?」
 メランエンデは笑みを浮かべる。
「ならばご覧にいれましょう。人の心の、たった一つの答えを」

 渾の社
 雪と紅葉の入り交じる、朱染めの境内を零は進む。いくつかの橋を越え、湖を眼前に望む本堂に辿り着く。石畳を進んでいき、本堂の正面に降りた帳の前に正座する。
 帳の向こうには、ぼんやりと獣の耳が生えた長身の女性のシルエットが蝋燭の火で映し出される。
「ユグドラシル、今戻った」
 零がそう言うと、シルエットが動く。
「よく戻った。して、余の器はどうなった?」
「なんか好きな子と心中した。でも読み通りの展開になった」
「アルファリアとやらも屠ったようだが……腐れ縁を絶ってよかったのか?」
「普段なら相手しなかった。単純に邪魔だったから」
「そうか。では一段落したらユノに会いに行け。お前の帰還を首を長ぁ~くして待っていたからな」
「わかった」
 零は立ち上がり、湖を望む踊り場へ向かい、欄干に手をかける。少し肌寒い風が頬を撫でる。
「とんだ茶番だった」

 無明桃源郷シャングリラ 終期次元領域
 闇の中にある岩場に、黙示録の四騎士とアルヴァナが佇んでいた。
「残念じゃが、クロザキの方のバロンは死んでしまったようじゃのう」
 レッドライダーが呟き、ブラックライダーが続く。
「だが……ラータの目的は……殆ど果たされている……コルンツの血筋そのものはまだ生きているが……もはや依代や効率のよい糧には……出来まい……」
 ホワイトライダーが笑う。
「次にアイツが不用意に顕現したら、今度こそ……」
 左手を右拳で突く。
「ボンッ!ってな」
 ペイルライダーが続く。
「これで我々が予定していたお膳立ては全て済んだ。後は、世界の成り行き次第だな」
 アルヴァナが頷く。
「もう間も無くだ。私が滅び、あの日の悔恨に折り合いをつける時が来る」
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