413 / 568
三千世界・結末(10)
エピローグ「隷う者、奉ろわぬ者」
しおりを挟む
始源世界
アイアンボトム・サウンド Chaos海上基地
竜の姿で基地の上から海を眺めるニヒロの下に、人間の姿のクインエンデ、メランエンデ、エストエンデが現れる。
「ニヒロ様」
クインエンデが口を開き、そのまま続ける。
「三千世界の戦いは、無事バロン・エウレカの勝利で終わったようです。しばらくは、我々も裏工作・研究がメインになるかと」
ニヒロが反応を示さないでいると、メランエンデが言葉を発する。
「空の器は消えてしまいましたね……あんな素敵な無明火、他にいませんのに」
それにニヒロが口を挟む。
「明人はアルヴァナが回収しているはずだ。無事でなければ、ユグドラシルが何らかの手を打たないはずがない」
ニヒロは立ち上がる。
「メランエンデ。貴様、明人が惜しいのか?」
「はい、それはもう。彼のやや子が欲しかったくらいには、好きでしたよ」
「ふん。ならば貴様にはしばらく暇を与える。時間は己で好きに使え。行くぞクインエンデ、エストエンデ」
ニヒロは人間の姿となり、二人を連れて基地内部へ去っていく。一人残ったメランエンデは、海風を受けながら水平線の向こうを見る。
「ああ、そういうことですか。ニヒロ様が確かめたいのは、あなたが私たちに、寧ろ人に近い心を与えた理由の裏付け、ですねえ?」
メランエンデは笑みを浮かべる。
「ならばご覧にいれましょう。人の心の、たった一つの答えを」
渾の社
雪と紅葉の入り交じる、朱染めの境内を零は進む。いくつかの橋を越え、湖を眼前に望む本堂に辿り着く。石畳を進んでいき、本堂の正面に降りた帳の前に正座する。
帳の向こうには、ぼんやりと獣の耳が生えた長身の女性のシルエットが蝋燭の火で映し出される。
「ユグドラシル、今戻った」
零がそう言うと、シルエットが動く。
「よく戻った。して、余の器はどうなった?」
「なんか好きな子と心中した。でも読み通りの展開になった」
「アルファリアとやらも屠ったようだが……腐れ縁を絶ってよかったのか?」
「普段なら相手しなかった。単純に邪魔だったから」
「そうか。では一段落したらユノに会いに行け。お前の帰還を首を長ぁ~くして待っていたからな」
「わかった」
零は立ち上がり、湖を望む踊り場へ向かい、欄干に手をかける。少し肌寒い風が頬を撫でる。
「とんだ茶番だった」
無明桃源郷シャングリラ 終期次元領域
闇の中にある岩場に、黙示録の四騎士とアルヴァナが佇んでいた。
「残念じゃが、クロザキの方のバロンは死んでしまったようじゃのう」
レッドライダーが呟き、ブラックライダーが続く。
「だが……ラータの目的は……殆ど果たされている……コルンツの血筋そのものはまだ生きているが……もはや依代や効率のよい糧には……出来まい……」
ホワイトライダーが笑う。
「次にアイツが不用意に顕現したら、今度こそ……」
左手を右拳で突く。
「ボンッ!ってな」
ペイルライダーが続く。
「これで我々が予定していたお膳立ては全て済んだ。後は、世界の成り行き次第だな」
アルヴァナが頷く。
「もう間も無くだ。私が滅び、あの日の悔恨に折り合いをつける時が来る」
アイアンボトム・サウンド Chaos海上基地
竜の姿で基地の上から海を眺めるニヒロの下に、人間の姿のクインエンデ、メランエンデ、エストエンデが現れる。
「ニヒロ様」
クインエンデが口を開き、そのまま続ける。
「三千世界の戦いは、無事バロン・エウレカの勝利で終わったようです。しばらくは、我々も裏工作・研究がメインになるかと」
ニヒロが反応を示さないでいると、メランエンデが言葉を発する。
「空の器は消えてしまいましたね……あんな素敵な無明火、他にいませんのに」
それにニヒロが口を挟む。
「明人はアルヴァナが回収しているはずだ。無事でなければ、ユグドラシルが何らかの手を打たないはずがない」
ニヒロは立ち上がる。
「メランエンデ。貴様、明人が惜しいのか?」
「はい、それはもう。彼のやや子が欲しかったくらいには、好きでしたよ」
「ふん。ならば貴様にはしばらく暇を与える。時間は己で好きに使え。行くぞクインエンデ、エストエンデ」
ニヒロは人間の姿となり、二人を連れて基地内部へ去っていく。一人残ったメランエンデは、海風を受けながら水平線の向こうを見る。
「ああ、そういうことですか。ニヒロ様が確かめたいのは、あなたが私たちに、寧ろ人に近い心を与えた理由の裏付け、ですねえ?」
メランエンデは笑みを浮かべる。
「ならばご覧にいれましょう。人の心の、たった一つの答えを」
渾の社
雪と紅葉の入り交じる、朱染めの境内を零は進む。いくつかの橋を越え、湖を眼前に望む本堂に辿り着く。石畳を進んでいき、本堂の正面に降りた帳の前に正座する。
帳の向こうには、ぼんやりと獣の耳が生えた長身の女性のシルエットが蝋燭の火で映し出される。
「ユグドラシル、今戻った」
零がそう言うと、シルエットが動く。
「よく戻った。して、余の器はどうなった?」
「なんか好きな子と心中した。でも読み通りの展開になった」
「アルファリアとやらも屠ったようだが……腐れ縁を絶ってよかったのか?」
「普段なら相手しなかった。単純に邪魔だったから」
「そうか。では一段落したらユノに会いに行け。お前の帰還を首を長ぁ~くして待っていたからな」
「わかった」
零は立ち上がり、湖を望む踊り場へ向かい、欄干に手をかける。少し肌寒い風が頬を撫でる。
「とんだ茶番だった」
無明桃源郷シャングリラ 終期次元領域
闇の中にある岩場に、黙示録の四騎士とアルヴァナが佇んでいた。
「残念じゃが、クロザキの方のバロンは死んでしまったようじゃのう」
レッドライダーが呟き、ブラックライダーが続く。
「だが……ラータの目的は……殆ど果たされている……コルンツの血筋そのものはまだ生きているが……もはや依代や効率のよい糧には……出来まい……」
ホワイトライダーが笑う。
「次にアイツが不用意に顕現したら、今度こそ……」
左手を右拳で突く。
「ボンッ!ってな」
ペイルライダーが続く。
「これで我々が予定していたお膳立ては全て済んだ。後は、世界の成り行き次第だな」
アルヴァナが頷く。
「もう間も無くだ。私が滅び、あの日の悔恨に折り合いをつける時が来る」
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。
飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。
隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。
だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。
そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。
勇者としての役割、与えられた力。
クラスメイトに協力的なお姫様。
しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。
突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。
そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。
なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ!
──王城ごと。
王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された!
そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。
何故元の世界に帰ってきてしまったのか?
そして何故か使えない魔法。
どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。
それを他所に内心あわてている生徒が一人。
それこそが磯貝章だった。
「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」
目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。
幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。
もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。
そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。
当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。
日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。
「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」
──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。
序章まで一挙公開。
翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。
序章 異世界転移【9/2〜】
一章 異世界クラセリア【9/3〜】
二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】
三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】
四章 新生活は異世界で【9/10〜】
五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】
六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】
七章 探索! 並行世界【9/19〜】
95部で第一部完とさせて貰ってます。
※9/24日まで毎日投稿されます。
※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。
おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。
勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。
ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる