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三千世界・反転(9)
第二話 「新世界への扉」
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エラン・ヴィラージュ
構えから両者の拳が放たれ、凄まじい闘気と魔力が炸裂する。ロータが素早く飛び上がって爪先で斬撃を放つと、イゼルは人差し指で突きを放つ。そこにエリナの放った縦の斬撃が到着し、イゼルは防御する。逃さず、ロータが強烈な踵落としで、イゼルの左腕をもぎ取る。ロータが瞬時に飛び退き、イゼルの左肩口から液状のシフルが噴出する。
「技の正確さ、速度、流石は天象の鎖だ。俺から一瞬で腕を奪うとはな」
「ふん」
ロータが腕を投げ捨てる。
「インベードアーマーなんて……随分懐かしいものを使うのね……」
「超人の相手をしてきたところ悪いが、俺もネブラも元はただの研究者でな」
イゼルが力むと、左腕が再生される。
「それに、そっちの剣士も中々の手練れだ。わざわざ剣戟の後方にエネルギーを集中させて、防御の硬直を伸ばさせるとはな」
そしてまた拳を構える。
「行くぞ!」
イゼルが踏み込み、ロータがそれよりも鋭く距離を詰める。ロータが放つ拳を腕の外側で受け、強烈な一撃を胴体に極める。ロータは後転で衝撃を殺し、そのちょうど射線が空いた瞬間に横向きの剣閃が飛んでくる。見切っていたイゼルはシフルエネルギーを励起させて防御力を上げ、強引に剣閃を突破してロータへ追撃を放つ。が、ロータは捻りを加えて回し蹴りを放ち、拳と足が激突する。
ロータはイゼルの拳を支点にして自分の体を空中へ持ち上げ、暗黒闘気を纏った指突を放つ。イゼルの再生した左腕の上腕二頭筋に指が突き刺さり、弾け飛んで再び左腕を欠損する。瞬時に再生しようとするが、暗黒闘気に阻まれ、イゼルは後退する。
「くっ……」
イゼルは片膝を折り、右手で左肩口を押さえる。
「やはり、奥の手を使うしかないか……!」
やおら立ち上がり、ふと目を閉じる。そして決意に満ちた瞳を見開き、インベードアーマーが崩れ落ち、凄まじい閃光に包まれる。
「何が……」
ロータたちが余りの目映さに怯み、程なくして閃光が収まる。そこには、石膏のような質感の体に赤黒いラインの通った竜人が立っていた。
「それが奥の手……?」
「ああ。俺たちのような凡人は、外付けで強くなるしかないんでな」
イゼルは先ほどとは違い、しっかりと形式張った拳の構えを取る。
「ん……」
ロータがその構えに若干の反応を示し、重力魔法を放ってイゼルを浮かす。そこに強烈なラッシュを放つが、イゼルはそれを全て受け止め、流れるような動作で魔法の影響域を抜けて頭上を取り、羽のような挙動から手刀を連打する。ロータは往なしきれずに数発打撃を受け、竜化しつつ鋭い刺突を放つ。顎を引いて拳を躱し、二人が同時に拳を放って拮抗する。
「……」
「思いこそが体を強靭な鎧に変える。それがシフルの性質だ」
交わった前腕部を互いの牽制距離とし、先にロータが距離を詰めて拳を放つ。イゼルは脇腹に拳を掠めさせ、ロータの腕を抱え込んで反撃の拳を打つ。ロータは鎖でその腕を絡め取って隙を生ませ、魔法を込めた強烈な掌底を向けるが、イゼルはロータの腕を離して距離を取り、両腕を合わせて貫手を放つ。ロータが紫の棘を地中から産み出して盾にすると、イゼルは構わずそれを貫く。掌から飛んで出た鋭い闘気がロータの頬を掠め、ロータは強烈な下段回し蹴りを放ってイゼルの体勢を崩し、だがイゼルは素早く両手で地面を叩いて飛び上がる。ロータが鎖を空中に召喚して行動を制限しようとするが、なぜかイゼルはすり抜けてロータに斬撃を加え、彼女の後方に着地する。
「ッ……」
両者が向かい合う。
「俺たちはシフルエネルギー、闘気、魔力の相関を徹底的に調べ上げた。どうにかして、魔力以外をテクノロジーで再現するためにな」
「……」
「そして俺たちは、人間にもシフルが扱えるようにする力を手に入れた。それがこれだ!」
イゼルは瞬間移動でロータの背後へ通りすぎ、両腕を開く。ロータの胸部に真一文字の傷が生まれる。更に遅れて斜めに斬撃が刻まれる。イゼルはすぐ振り返り、手刀からシフルの斬撃をいくつも飛ばす。ロータは防御の構えでそれを受け続ける。
「(本当にシフルをそのまま扱っているだけ……なら……!)」
ロータは斬撃をすり抜けつつも猛進し、その恐るべき急接近にイゼルは思わず目を見開き、続くロータの強烈な連打が直撃して吹き飛ばされる。イゼルは瞬間移動しつつ体勢を整え、再びロータへ擦れ違うように高速移動する。が、今度は擦れ違う寸前でロータの両手の指を胸部に突き刺され、受け止められる。
「うごはぁっ!?」
「そろそろ決着をつける……!」
ロータは勢いよく指を引き抜き、魔法を纏った拳で滅多打ちにし、更に鎖で戒め、渾身の裏拳をイゼルの胸部に叩き込む。強烈に過ぎる衝撃がイゼルの体から吹き出し、甲殻が吹き飛ぶ。めり込んだ拳をイゼルが引き抜き、ふらつきつつ後退する。
「完敗だ……これ以上、俺に抵抗する力は残ってない……」
イゼルは自分の右手を胸に突き刺し、そこから光を発する。そして再び、両の足で地面を捉える。
「ならば、ここで全霊をかけて砕け散るのみ!」
強烈な踏み込みから、壮絶なまでの闘気を纏った拳が放たれ、ロータは抵抗せずにそれを食らう。直撃した部位から煙が上がるが、ロータがダメージを受けた様子はない。
「火事場の力も……こんなものか……」
「……」
ロータはイゼルの拳を静かに下ろさせる。
「最後に一つだけ聞かせてくれ……お前のその力の原動力は、なんだ……?」
「私は……ただ、私たちに課せられた呪いを断つためにここにいる……それが、私の力の根源」
イゼルは微笑む。
「フッ……天象の鎖……俺が勝てる相手では、無かったか……」
限界を迎えた肉体は塩と化し、花畑に散る。ロータは竜化を解き、エリナたちの方を向く。
「ロータ、大丈夫か」
「何が……?」
「いや……」
エリナがロータの腕へ視線を向ける。制服の袖は度重なる激戦による傷が目立ち、その奥の素肌についた傷も、なぜか修復されていなかった。
「いくら天象の鎖、そしてヴァナ・ファキナの一部だとしても、無理が祟っているのではないか」
「気にしないでいい……痛くないから」
「そう、か……ならいいのだが」
「じゃあ、ゼロたちの所へ行こう」
ロータが前を向いて歩こうとすると、よろけて倒れそうになる。それをミリルとマイケルが大急ぎで支える。
「ロータちゃん、エリナさんの言うとおりですよ。無理しないで、ちょっと休みましょう、ね?」
「大丈夫……」
ミリルが止めようとして尚、前に進もうとするロータを二人が必死に止める。
「待つッス!コルンツの血筋は、まだ残ってるッス。殺すにしても、和解するにしても、お互いにまた生きて会う必要があるッスよ!」
「……。初めて聞くに値するような言葉を聞いた」
ロータは呼吸を整え、鎖を椅子のような形状で召喚する。
「ゼロとホシヒメ、バロンまでいるのだから、そう負けることはないはず……」
一行は鎖に腰かけた。
創世天門
夥しい量の空間の歪みが射出され、ネブラは全力で回避する。その速度にホシヒメは完璧に追従し、速度を落とさずに光速で拳を放ち続ける。ネブラは黒輪からナノマシンで生成した巨大な腕を休みなく放ち続けることで応戦し、急に進路を変えることで空間の歪みにホシヒメを巻き込もうとする。しかし、ホシヒメは急激に速度を上げ、ネブラの腹に痛烈なタックルを叩き込んで吹き飛ばす。そのまま懐から和弓を召喚して瞬時につがえ、剛烈な一矢を放つ。ネブラは黒輪を使ってワープすることでゼロへと急速接近し、黒輪から小型のブラックホールを発生させる。
ゼロは凄まじい速度で抜刀することでいくつも光の柱を産み出して黒輪を破壊すると、光の刃をネブラの頭上から雨のように降り注がせる。ネブラは即座に黒輪を再生させ、それを使った瞬間移動で回避し、感覚で転移先を察知したホシヒメに強烈な拳を貰い、ネブラは吹き飛ばされる。
ネブラは受け身を取り、ホシヒメは着地してゼロと並ぶ。
「話にならんな。こんなものでは肩慣らしにもならん。クラエス、貴様も手加減する必要はない」
「加減なんてしてないよ。でも……」
ホシヒメはネブラの向こうにある創世天門に目を向ける。
「あの扉の向こうから、何か嫌な予感があるの。この世界だけじゃない、何かもっと、全てを飲み込むほどの、時代の激流がある気がする」
ネブラは再び浮き上がり、黒輪を更に四つ召喚する。
「当然だ。創世天門の向こうには、私たちの求めた理想郷がある。かつて異史のお前に阻まれ、潰えた夢の続きがあるのだ」
ゼロが更に強烈な殺気を発する。
「クラエス、貴様があの門の向こうに何かあるというのなら、さっさと決着をつけるぞ」
「うん……」
ゼロが分身を産み出し、ネブラへ別々に攻撃を仕掛ける。ネブラは黒輪を複数一気に操作してゼロの攻撃を往なしながら、彼を囲うように次々と光線を放つ。更にそこから倍の黒輪を召喚し、他方から攻撃を仕掛けてきたホシヒメと応戦する。光速を越えた、常軌を逸している高速機動を披露する両者を、ネブラは紙一重で往なし続け、僅かに反撃を重ねていく。
「だが……」
ゼロが放ち続ける空間の歪みが接続され、巨大な空間の歪みが生まれる。その内部ではうまく操作できないのか、黒輪の全てが制御を失って沈黙する。そのまま全ての黒輪が切断されて破壊され、一瞬で距離を詰めてきたゼロの視認できぬほどの速度で振られた刀を、ネブラはギリギリ右手で受け止める。
「この力……異史とはまるで違う……!」
「貴様の知る俺がどんな愚物だったのかは知らんが、これで終わりだ」
次の瞬間にはゼロが視界から消え、ネブラの右腕が宙を舞い、凄まじい量の斬撃が体へ到達して吹き飛ばされる。ゼロが着地し、その横に黒輪を持ったホシヒメが並び、黒輪を握りつぶす。
「う……く……」
ネブラが虫の息で立ち上がると、創世天門の扉から目映い光が射し込んでくる。同時に地面がひび割れ始め、そこからも光が立ち上る。
「一度ならず、二度までも……」
ネブラが大地のひび割れに落下する。しかしホシヒメが瞬間移動で接近してネブラを持ち上げる。
「ゼロ君腕拾って!」
ホシヒメがそう叫ぶと、ゼロはしぶしぶ地面に落ちているネブラの右腕を拾って放り投げる。ホシヒメは腕を受けとると、ネブラにくっつけて光で接合する。
「なぜ……」
「今はお互いの意地を通し合ってる場合じゃないよ!何かが来るから、準備万端にしておかないと!」
ホシヒメはネブラを抱えたまま、ゼロの前に着地する。
「バロン君の所に行こう、ゼロ君!」
「いや……」
地面から迸る閃光が輝きを増し、創世天門が開かれる。
宇宙外輪
非常に鋭い右貫手がアグニから放たれる。バロンは右手で撃掌を放つ。
「甘いぞバロン!」
貫手は初めからバロンの体では無く、右腕を狙って放たれていた。指先とは思えぬほどの鋭さでバロンの右腕の上腕二頭筋に突き刺さるが、バロンが不敵な笑みを浮かべる。
「……悪いが、意図的に致命の一撃を避けたのはお前だけじゃない」
「何ぃ……?」
一拍遅れてアグニの両肩口に強烈な指突が叩き込まれ、アグニが怯んで後退すると、同時に指が弾け飛ぶ。
「くくっ、それでこそ俺の終生の好敵手《とも》だ!瞬時に俺の狙いを読み切り、完璧な対処をしてくるとはな!」
「……ふん」
「なるほどな、ニブルヘイムで今のお前と会ったときとは面構えが違う。多くの死闘が、お前をそこまでの境地に磨き上げたか」
アグニが豪快に身を翻しつつ腕を振るい、見切れぬ程の速さでバロンの体に指線が刻まれる。バロンはその場から指を突き出し、そこから闘気を射出する。アグニは後転しながら飛び上がることで、爪先で闘気を切り裂きつつ、高速で右足を振り抜いて斬撃を飛ばす。バロンの体は光となって攻撃を回避し、幻影のごとく揺らめいて無数の拳を放つ。だがアグニは全身から蒼炎を放って拳を弾き、ライダーキックの要領で空中で交差する。
「……二度は通用しないぞ!」
バロンは両者の足が交差した体勢を変え、鋼の槍を産み出してアグニの腕へ突き刺す。
「ちっ!」
アグニは熱気で槍を融かすと、バロンへラッシュを放つ。バロンはその全てを同じく拳の連打で受け止め、アグニは空を蹴って加速し、両腕を開く。蒼炎を帯びた十字の傷がバロンへ刻まれ、その強烈な威力を前に吹き飛ばされる。
「わかってようが俺の拳は躱せんぞ!」
アグニは持ち前のスピードを活かしてバロンよりも先に着地し、バロンの四肢に斬撃が加えられる。だがバロンも光となってほぼ同時に着地し、練り上げておいた莫大な闘気を発射する。意表を突かれたアグニは両腕で防御するが、威力を殺しきれずに縦回転しながら吹き飛ばされる。受け身を取りつつ、流れるような動作で両腕を順に振るい、炎を纏った指線が飛ばされる。バロンはその間隙を縫いながら急接近し、互いの剛拳が激突する。
「まだだ、俺の本当の力はこんなもんじゃねえ!」
アグニが先に動き、再び拳を水平に開いて十字の斬撃を放つ。バロンはその力を闘気で逃がし、先程よりも更に強大な闘気を身に纏う。
「……〈天覇烈葬〉!」
バロンの全身から前方に向けて放たれたその恐るべき闘気が直撃し、アグニは大きく後ろへ後退する。
「そいつはバンギの……!」
「……僕は戦った好敵手のことを忘れたことなどない」
「くくく……ならばもはや、小競り合いで消耗しては勿体ないな……!」
アグニが目を閉じ、上半身の防具が自然に壊れる。
「てめえも持ってるはずだぜ」
その言葉で、バロンは察し、エリアルの方を向く。二人は頷き合い、融合しながら竜化する。
「……我が名、〈玉鋼〉!」
瑠璃色の体を持つ竜人形態となったバロンたちを見て、アグニは喜びを見せる。
「行くぜ、これが俺の力だ!」
アグニは紅蓮の竜巻に呑まれる。
「我が威を世に示すは叡知にあらず!原初の秩序、本能の主!今こそ、その姿を全土に顕せ!我が名、〈暴力〉!」
そして絶大な爆発が巻き起こり、そこには四本の腕と、四枚の炎の翼を携えた、白と赤の竜人が居た。
「……それがお前の全力か」
「力は俺の中に最初からあった。それをようやく開け放っただけだ」
「……相手にとって不足はない」
「そりゃそうだろ。てめえに勝つためだけにこの力を手に入れたんだからよ!」
暴力は猛り、凄まじい熱風が吹き荒れ、次々と何もない空間から爆発が起こる。
「新しい世界も、時間の終焉もどうでもいい。てめえを越える、それだけが俺の生きる意味だ!」
左上腕が素早い貫手を放つ。玉鋼は動作もなくそれを弾き返し、強烈な反撃の連打を叩き込む。暴力は怯むこと無く残る三本の腕で打突を行う。玉鋼は暴力の頭上に瞬間移動し、右拳を振り下ろし、そこから莫大な量の水を吹き出させる。暴力は溢れ出る熱気で水を瞬時に蒸発させると、爆炎を纏った裏拳で玉鋼の腹を叩き、爆裂させて後退させる。
玉鋼は右足を強く踏み込むと、鋼の波がどこからともなく巻き起こる。暴力は巨大な火球を産み出して波へ叩きつけ、双方が爆発を起こし、その影から双方が現れ、拳が擦れ違う。両者が通りすぎた後の空間に圧倒的な爆発が起こり、暴力がすぐに振り向いて両掌を合わせ、そこに力を集め、極大の熱線を放つ。玉鋼は水と鋼を混合した盾を張り、熱線を突っ切る。暴力はそれを迎え撃つように蒼炎を纏った両下腕を開き、三度、その体を十字に切り裂く。
「バロン!この勝負、俺の勝ちだッ!」
暴力が両上腕で玉鋼を掴み、両下腕で全霊の拳を叩き込む。更に腕を引き抜き、改めて右下腕で玉鋼の胸の中央を貫く。
「……がふっ……!」
暴力が勢いよく拳を引き抜き、玉鋼が仰向けに倒れる。
「ふー……」
暴力が感触を確かめるように右下掌を何度も握り直す。
「てめえの技に、一分の隙も迷いもなかった。だが、俺の執念がそれを上回った」
宇宙外輪を満たす暗黒に皹が入る。
「……まずい……!」
玉鋼が起き上がろうとするが、その凄絶な外傷ゆえか立ち上がれず、瞬く間に崩壊した光の中に、暴力もろとも飲み込まれる。
構えから両者の拳が放たれ、凄まじい闘気と魔力が炸裂する。ロータが素早く飛び上がって爪先で斬撃を放つと、イゼルは人差し指で突きを放つ。そこにエリナの放った縦の斬撃が到着し、イゼルは防御する。逃さず、ロータが強烈な踵落としで、イゼルの左腕をもぎ取る。ロータが瞬時に飛び退き、イゼルの左肩口から液状のシフルが噴出する。
「技の正確さ、速度、流石は天象の鎖だ。俺から一瞬で腕を奪うとはな」
「ふん」
ロータが腕を投げ捨てる。
「インベードアーマーなんて……随分懐かしいものを使うのね……」
「超人の相手をしてきたところ悪いが、俺もネブラも元はただの研究者でな」
イゼルが力むと、左腕が再生される。
「それに、そっちの剣士も中々の手練れだ。わざわざ剣戟の後方にエネルギーを集中させて、防御の硬直を伸ばさせるとはな」
そしてまた拳を構える。
「行くぞ!」
イゼルが踏み込み、ロータがそれよりも鋭く距離を詰める。ロータが放つ拳を腕の外側で受け、強烈な一撃を胴体に極める。ロータは後転で衝撃を殺し、そのちょうど射線が空いた瞬間に横向きの剣閃が飛んでくる。見切っていたイゼルはシフルエネルギーを励起させて防御力を上げ、強引に剣閃を突破してロータへ追撃を放つ。が、ロータは捻りを加えて回し蹴りを放ち、拳と足が激突する。
ロータはイゼルの拳を支点にして自分の体を空中へ持ち上げ、暗黒闘気を纏った指突を放つ。イゼルの再生した左腕の上腕二頭筋に指が突き刺さり、弾け飛んで再び左腕を欠損する。瞬時に再生しようとするが、暗黒闘気に阻まれ、イゼルは後退する。
「くっ……」
イゼルは片膝を折り、右手で左肩口を押さえる。
「やはり、奥の手を使うしかないか……!」
やおら立ち上がり、ふと目を閉じる。そして決意に満ちた瞳を見開き、インベードアーマーが崩れ落ち、凄まじい閃光に包まれる。
「何が……」
ロータたちが余りの目映さに怯み、程なくして閃光が収まる。そこには、石膏のような質感の体に赤黒いラインの通った竜人が立っていた。
「それが奥の手……?」
「ああ。俺たちのような凡人は、外付けで強くなるしかないんでな」
イゼルは先ほどとは違い、しっかりと形式張った拳の構えを取る。
「ん……」
ロータがその構えに若干の反応を示し、重力魔法を放ってイゼルを浮かす。そこに強烈なラッシュを放つが、イゼルはそれを全て受け止め、流れるような動作で魔法の影響域を抜けて頭上を取り、羽のような挙動から手刀を連打する。ロータは往なしきれずに数発打撃を受け、竜化しつつ鋭い刺突を放つ。顎を引いて拳を躱し、二人が同時に拳を放って拮抗する。
「……」
「思いこそが体を強靭な鎧に変える。それがシフルの性質だ」
交わった前腕部を互いの牽制距離とし、先にロータが距離を詰めて拳を放つ。イゼルは脇腹に拳を掠めさせ、ロータの腕を抱え込んで反撃の拳を打つ。ロータは鎖でその腕を絡め取って隙を生ませ、魔法を込めた強烈な掌底を向けるが、イゼルはロータの腕を離して距離を取り、両腕を合わせて貫手を放つ。ロータが紫の棘を地中から産み出して盾にすると、イゼルは構わずそれを貫く。掌から飛んで出た鋭い闘気がロータの頬を掠め、ロータは強烈な下段回し蹴りを放ってイゼルの体勢を崩し、だがイゼルは素早く両手で地面を叩いて飛び上がる。ロータが鎖を空中に召喚して行動を制限しようとするが、なぜかイゼルはすり抜けてロータに斬撃を加え、彼女の後方に着地する。
「ッ……」
両者が向かい合う。
「俺たちはシフルエネルギー、闘気、魔力の相関を徹底的に調べ上げた。どうにかして、魔力以外をテクノロジーで再現するためにな」
「……」
「そして俺たちは、人間にもシフルが扱えるようにする力を手に入れた。それがこれだ!」
イゼルは瞬間移動でロータの背後へ通りすぎ、両腕を開く。ロータの胸部に真一文字の傷が生まれる。更に遅れて斜めに斬撃が刻まれる。イゼルはすぐ振り返り、手刀からシフルの斬撃をいくつも飛ばす。ロータは防御の構えでそれを受け続ける。
「(本当にシフルをそのまま扱っているだけ……なら……!)」
ロータは斬撃をすり抜けつつも猛進し、その恐るべき急接近にイゼルは思わず目を見開き、続くロータの強烈な連打が直撃して吹き飛ばされる。イゼルは瞬間移動しつつ体勢を整え、再びロータへ擦れ違うように高速移動する。が、今度は擦れ違う寸前でロータの両手の指を胸部に突き刺され、受け止められる。
「うごはぁっ!?」
「そろそろ決着をつける……!」
ロータは勢いよく指を引き抜き、魔法を纏った拳で滅多打ちにし、更に鎖で戒め、渾身の裏拳をイゼルの胸部に叩き込む。強烈に過ぎる衝撃がイゼルの体から吹き出し、甲殻が吹き飛ぶ。めり込んだ拳をイゼルが引き抜き、ふらつきつつ後退する。
「完敗だ……これ以上、俺に抵抗する力は残ってない……」
イゼルは自分の右手を胸に突き刺し、そこから光を発する。そして再び、両の足で地面を捉える。
「ならば、ここで全霊をかけて砕け散るのみ!」
強烈な踏み込みから、壮絶なまでの闘気を纏った拳が放たれ、ロータは抵抗せずにそれを食らう。直撃した部位から煙が上がるが、ロータがダメージを受けた様子はない。
「火事場の力も……こんなものか……」
「……」
ロータはイゼルの拳を静かに下ろさせる。
「最後に一つだけ聞かせてくれ……お前のその力の原動力は、なんだ……?」
「私は……ただ、私たちに課せられた呪いを断つためにここにいる……それが、私の力の根源」
イゼルは微笑む。
「フッ……天象の鎖……俺が勝てる相手では、無かったか……」
限界を迎えた肉体は塩と化し、花畑に散る。ロータは竜化を解き、エリナたちの方を向く。
「ロータ、大丈夫か」
「何が……?」
「いや……」
エリナがロータの腕へ視線を向ける。制服の袖は度重なる激戦による傷が目立ち、その奥の素肌についた傷も、なぜか修復されていなかった。
「いくら天象の鎖、そしてヴァナ・ファキナの一部だとしても、無理が祟っているのではないか」
「気にしないでいい……痛くないから」
「そう、か……ならいいのだが」
「じゃあ、ゼロたちの所へ行こう」
ロータが前を向いて歩こうとすると、よろけて倒れそうになる。それをミリルとマイケルが大急ぎで支える。
「ロータちゃん、エリナさんの言うとおりですよ。無理しないで、ちょっと休みましょう、ね?」
「大丈夫……」
ミリルが止めようとして尚、前に進もうとするロータを二人が必死に止める。
「待つッス!コルンツの血筋は、まだ残ってるッス。殺すにしても、和解するにしても、お互いにまた生きて会う必要があるッスよ!」
「……。初めて聞くに値するような言葉を聞いた」
ロータは呼吸を整え、鎖を椅子のような形状で召喚する。
「ゼロとホシヒメ、バロンまでいるのだから、そう負けることはないはず……」
一行は鎖に腰かけた。
創世天門
夥しい量の空間の歪みが射出され、ネブラは全力で回避する。その速度にホシヒメは完璧に追従し、速度を落とさずに光速で拳を放ち続ける。ネブラは黒輪からナノマシンで生成した巨大な腕を休みなく放ち続けることで応戦し、急に進路を変えることで空間の歪みにホシヒメを巻き込もうとする。しかし、ホシヒメは急激に速度を上げ、ネブラの腹に痛烈なタックルを叩き込んで吹き飛ばす。そのまま懐から和弓を召喚して瞬時につがえ、剛烈な一矢を放つ。ネブラは黒輪を使ってワープすることでゼロへと急速接近し、黒輪から小型のブラックホールを発生させる。
ゼロは凄まじい速度で抜刀することでいくつも光の柱を産み出して黒輪を破壊すると、光の刃をネブラの頭上から雨のように降り注がせる。ネブラは即座に黒輪を再生させ、それを使った瞬間移動で回避し、感覚で転移先を察知したホシヒメに強烈な拳を貰い、ネブラは吹き飛ばされる。
ネブラは受け身を取り、ホシヒメは着地してゼロと並ぶ。
「話にならんな。こんなものでは肩慣らしにもならん。クラエス、貴様も手加減する必要はない」
「加減なんてしてないよ。でも……」
ホシヒメはネブラの向こうにある創世天門に目を向ける。
「あの扉の向こうから、何か嫌な予感があるの。この世界だけじゃない、何かもっと、全てを飲み込むほどの、時代の激流がある気がする」
ネブラは再び浮き上がり、黒輪を更に四つ召喚する。
「当然だ。創世天門の向こうには、私たちの求めた理想郷がある。かつて異史のお前に阻まれ、潰えた夢の続きがあるのだ」
ゼロが更に強烈な殺気を発する。
「クラエス、貴様があの門の向こうに何かあるというのなら、さっさと決着をつけるぞ」
「うん……」
ゼロが分身を産み出し、ネブラへ別々に攻撃を仕掛ける。ネブラは黒輪を複数一気に操作してゼロの攻撃を往なしながら、彼を囲うように次々と光線を放つ。更にそこから倍の黒輪を召喚し、他方から攻撃を仕掛けてきたホシヒメと応戦する。光速を越えた、常軌を逸している高速機動を披露する両者を、ネブラは紙一重で往なし続け、僅かに反撃を重ねていく。
「だが……」
ゼロが放ち続ける空間の歪みが接続され、巨大な空間の歪みが生まれる。その内部ではうまく操作できないのか、黒輪の全てが制御を失って沈黙する。そのまま全ての黒輪が切断されて破壊され、一瞬で距離を詰めてきたゼロの視認できぬほどの速度で振られた刀を、ネブラはギリギリ右手で受け止める。
「この力……異史とはまるで違う……!」
「貴様の知る俺がどんな愚物だったのかは知らんが、これで終わりだ」
次の瞬間にはゼロが視界から消え、ネブラの右腕が宙を舞い、凄まじい量の斬撃が体へ到達して吹き飛ばされる。ゼロが着地し、その横に黒輪を持ったホシヒメが並び、黒輪を握りつぶす。
「う……く……」
ネブラが虫の息で立ち上がると、創世天門の扉から目映い光が射し込んでくる。同時に地面がひび割れ始め、そこからも光が立ち上る。
「一度ならず、二度までも……」
ネブラが大地のひび割れに落下する。しかしホシヒメが瞬間移動で接近してネブラを持ち上げる。
「ゼロ君腕拾って!」
ホシヒメがそう叫ぶと、ゼロはしぶしぶ地面に落ちているネブラの右腕を拾って放り投げる。ホシヒメは腕を受けとると、ネブラにくっつけて光で接合する。
「なぜ……」
「今はお互いの意地を通し合ってる場合じゃないよ!何かが来るから、準備万端にしておかないと!」
ホシヒメはネブラを抱えたまま、ゼロの前に着地する。
「バロン君の所に行こう、ゼロ君!」
「いや……」
地面から迸る閃光が輝きを増し、創世天門が開かれる。
宇宙外輪
非常に鋭い右貫手がアグニから放たれる。バロンは右手で撃掌を放つ。
「甘いぞバロン!」
貫手は初めからバロンの体では無く、右腕を狙って放たれていた。指先とは思えぬほどの鋭さでバロンの右腕の上腕二頭筋に突き刺さるが、バロンが不敵な笑みを浮かべる。
「……悪いが、意図的に致命の一撃を避けたのはお前だけじゃない」
「何ぃ……?」
一拍遅れてアグニの両肩口に強烈な指突が叩き込まれ、アグニが怯んで後退すると、同時に指が弾け飛ぶ。
「くくっ、それでこそ俺の終生の好敵手《とも》だ!瞬時に俺の狙いを読み切り、完璧な対処をしてくるとはな!」
「……ふん」
「なるほどな、ニブルヘイムで今のお前と会ったときとは面構えが違う。多くの死闘が、お前をそこまでの境地に磨き上げたか」
アグニが豪快に身を翻しつつ腕を振るい、見切れぬ程の速さでバロンの体に指線が刻まれる。バロンはその場から指を突き出し、そこから闘気を射出する。アグニは後転しながら飛び上がることで、爪先で闘気を切り裂きつつ、高速で右足を振り抜いて斬撃を飛ばす。バロンの体は光となって攻撃を回避し、幻影のごとく揺らめいて無数の拳を放つ。だがアグニは全身から蒼炎を放って拳を弾き、ライダーキックの要領で空中で交差する。
「……二度は通用しないぞ!」
バロンは両者の足が交差した体勢を変え、鋼の槍を産み出してアグニの腕へ突き刺す。
「ちっ!」
アグニは熱気で槍を融かすと、バロンへラッシュを放つ。バロンはその全てを同じく拳の連打で受け止め、アグニは空を蹴って加速し、両腕を開く。蒼炎を帯びた十字の傷がバロンへ刻まれ、その強烈な威力を前に吹き飛ばされる。
「わかってようが俺の拳は躱せんぞ!」
アグニは持ち前のスピードを活かしてバロンよりも先に着地し、バロンの四肢に斬撃が加えられる。だがバロンも光となってほぼ同時に着地し、練り上げておいた莫大な闘気を発射する。意表を突かれたアグニは両腕で防御するが、威力を殺しきれずに縦回転しながら吹き飛ばされる。受け身を取りつつ、流れるような動作で両腕を順に振るい、炎を纏った指線が飛ばされる。バロンはその間隙を縫いながら急接近し、互いの剛拳が激突する。
「まだだ、俺の本当の力はこんなもんじゃねえ!」
アグニが先に動き、再び拳を水平に開いて十字の斬撃を放つ。バロンはその力を闘気で逃がし、先程よりも更に強大な闘気を身に纏う。
「……〈天覇烈葬〉!」
バロンの全身から前方に向けて放たれたその恐るべき闘気が直撃し、アグニは大きく後ろへ後退する。
「そいつはバンギの……!」
「……僕は戦った好敵手のことを忘れたことなどない」
「くくく……ならばもはや、小競り合いで消耗しては勿体ないな……!」
アグニが目を閉じ、上半身の防具が自然に壊れる。
「てめえも持ってるはずだぜ」
その言葉で、バロンは察し、エリアルの方を向く。二人は頷き合い、融合しながら竜化する。
「……我が名、〈玉鋼〉!」
瑠璃色の体を持つ竜人形態となったバロンたちを見て、アグニは喜びを見せる。
「行くぜ、これが俺の力だ!」
アグニは紅蓮の竜巻に呑まれる。
「我が威を世に示すは叡知にあらず!原初の秩序、本能の主!今こそ、その姿を全土に顕せ!我が名、〈暴力〉!」
そして絶大な爆発が巻き起こり、そこには四本の腕と、四枚の炎の翼を携えた、白と赤の竜人が居た。
「……それがお前の全力か」
「力は俺の中に最初からあった。それをようやく開け放っただけだ」
「……相手にとって不足はない」
「そりゃそうだろ。てめえに勝つためだけにこの力を手に入れたんだからよ!」
暴力は猛り、凄まじい熱風が吹き荒れ、次々と何もない空間から爆発が起こる。
「新しい世界も、時間の終焉もどうでもいい。てめえを越える、それだけが俺の生きる意味だ!」
左上腕が素早い貫手を放つ。玉鋼は動作もなくそれを弾き返し、強烈な反撃の連打を叩き込む。暴力は怯むこと無く残る三本の腕で打突を行う。玉鋼は暴力の頭上に瞬間移動し、右拳を振り下ろし、そこから莫大な量の水を吹き出させる。暴力は溢れ出る熱気で水を瞬時に蒸発させると、爆炎を纏った裏拳で玉鋼の腹を叩き、爆裂させて後退させる。
玉鋼は右足を強く踏み込むと、鋼の波がどこからともなく巻き起こる。暴力は巨大な火球を産み出して波へ叩きつけ、双方が爆発を起こし、その影から双方が現れ、拳が擦れ違う。両者が通りすぎた後の空間に圧倒的な爆発が起こり、暴力がすぐに振り向いて両掌を合わせ、そこに力を集め、極大の熱線を放つ。玉鋼は水と鋼を混合した盾を張り、熱線を突っ切る。暴力はそれを迎え撃つように蒼炎を纏った両下腕を開き、三度、その体を十字に切り裂く。
「バロン!この勝負、俺の勝ちだッ!」
暴力が両上腕で玉鋼を掴み、両下腕で全霊の拳を叩き込む。更に腕を引き抜き、改めて右下腕で玉鋼の胸の中央を貫く。
「……がふっ……!」
暴力が勢いよく拳を引き抜き、玉鋼が仰向けに倒れる。
「ふー……」
暴力が感触を確かめるように右下掌を何度も握り直す。
「てめえの技に、一分の隙も迷いもなかった。だが、俺の執念がそれを上回った」
宇宙外輪を満たす暗黒に皹が入る。
「……まずい……!」
玉鋼が起き上がろうとするが、その凄絶な外傷ゆえか立ち上がれず、瞬く間に崩壊した光の中に、暴力もろとも飲み込まれる。
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