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三千世界・始源(4)
本編 第二話
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陣原・狐姫の怨愛城
零は大橋を渡り、巨大な城門の前に立つ。どこからともなく零の身長ほどもある大きな兎が現れ、零へ敵意を向ける。
「血の気の多いウサちゃん」
飛びかかってきた兎を躱し、腹にトンファーを叩き込んで気絶させる。そして杭が兎の背中を破り、凍りつかせる。
「さよなら」
そして兎を湖へ放り投げる。
「……。これだけの城をどうやって……」
零は城門を押し開き、中へ入る。薄暗い廊下を零は歩き、機械仕掛けの巨大な門の前に辿り着く。
「ん?何かしらの条件があるってことかな……」
来た道を引き返し、廊下から繋がる部屋に片っ端から入っていき、食堂のゴミ箱から鍵を拾い上げる。
「古い鍵……どう考えてもあれを開けるためのものじゃない」
鍵の使える場所を探して彷徨っていると、鍵の掛かった古い扉を見つけ、鍵を使って開く。扉を開けると、そこは湖が見える広場だった。
「収穫無し。こうなったらここから上に上がるか……」
そう呟いていると、零は湖が少し膨らんでいるように感じた。目を凝らす。先程のバハムートのように、水面を突き破って巨大な二足歩行の兵器が現れ、広場に着地する。逆に折れた特徴的な脚部と、翼のようなヒレのパーツが二つ、腕のようについていた。兵器は上半身をもたげ、金属の軋む音を咆哮のように発する。
「これは……」
ヒレの付け根にあるバルカンが火を噴き、零は猛烈な速度の後ろ歩きで後退し、更に方向転換して壁を走り避ける。兵器は続けて口の装甲を開き、炎のレーザーを発射する。城壁が燃え上がり、爆発する。零は広場に着地する。
「(これを上手く使えば、あそこの扉を無視して奥へ行けるかも……)」
そう思っていると、兵器の頭部から映像が投影される。
「来須さん」
そこに映るツインテールの少女を見て、零は呟く。
『おはよう、零さん』
来須は微笑む。
『これはね、水陸両用二足歩行戦車・蒼龍だよ。シフルを試験的に使った、人類初の巨大兵器さ。ロマンあるでしょ?』
上機嫌に話しかけられるが、零は仏頂面で黙っている。
『脚部、そして多目的ロングペイロードの付け根にあるバルカンは怨愛の炎が詰まった特製ナパーム、そして頭部から発される熱線は怨愛の炎そのものを照射するぶっとび兵器なんだよねー!』
なおも饒舌に語る来須を前に、零は居眠りを始める。
『正直シフルの研究はまだまだ始まったばかりで、変換効率やどれだけ元のシフルを搭載してどれくらいのサイズに落とし込むかとか、色々苦労したんだけど……現状最高にバランスがいいのはこの蒼龍!この陣原は殆ど水没したからちょうどいいし、福岡は洞海湾から遠賀川、堀川と続いているし、川を辿ればだいたいのところに襲撃に向かわせられ……って、零さん聞いてる?』
その声で零は眠りから覚める。
「聞いてる聞いてる」
『まあとにかく!零さんはここで終わりだよ!』
映像は途切れる。蒼龍は歩を進める。
「何はともあれ、これの相手をせねばどうしようもない」
蒼龍が右のヒレを持ち上げ、零目掛けて振り下ろす。素早く左に動いて零は躱し、ヒレに飛び乗る。蒼龍は激しくヒレを振るうが、零は巧みな重心移動と、足を凍らせてヒレに張り付けることで耐える。蒼龍の背から多目的対戦車榴弾が発射され、零を掠めて飛び回る。飛んできた一発を後ろに仰け反ることで躱し、正面から来た一発をトンファーで弾く。左のヒレのバルカンを破壊し、蒼龍は零を振り払う。零は広場に三点着地し、次の挙動に入る蒼龍を見る。蒼龍は左のヒレを包むように展開された炎の刃を零へ振り下ろし、広場の石床を燃やす。零は再び右のヒレのバルカンのあったところまで飛び、トンファーの杭を叩き込んで穴を空け、そこに手を捩じ込んで無理矢理ヒレを引き千切る。ヒレを抱え、蒼龍の炎の刃と打ち合う。そして蒼龍の炎の刃を押し切り、蒼龍は倒れる。炎の刃が消えた左のヒレを抱え、零はハンマー投げの要領でぐるぐる回転し、城に向かって投げつける。城壁が豪快に崩れ、蒼龍は沈黙する。
「これでよし」
零は崩れた城壁から中に入る。ちょうど先程の機械仕掛けの扉の先を壊したようだ。零はまた行き止まりまで歩き、また同じように大きな門へ辿り着く。今度は容易に開き、その先にはまたもや大橋があった。零は橋を渡り、高い塔の麓に着く。正面の扉を開き、中へ入る。塔内部は城よりも豪華な、白を基調とした装飾がなされていた。その装飾と同じ純白の鎧に身を包んだ騎士が三人現れ、更には二足歩行の小型兵器も複数現れる。
「……。生気は感じられないけど、意思はある……」
騎士は自身を覆い隠せるほどの巨大な盾と、自身の二倍はある槍を構えて零へにじり寄る。小型兵器は前腕部にマウントされたマチェットを掴み、軽快に零へ接近する。最接近した一体が零へマチェットを振り下ろすが、零は素手でそれを受け止める。
「いい包丁だ」
力を込めてへし折り、瞬時に組み伏せて、小型兵器のもう片方の腕にマウントされたミニガンを奪い取り、小型兵器の頭を砕く。ミニガンを発射し、小型兵器は次々とスクラップになっていく。騎士が接近を終え、槍で攻撃してくる。一番手前にいる騎士目掛けて小型兵器を叩きつける。盾に砕かれるが、頭に飛び乗り、そのまま首を振らせて槍を他の騎士にぶつけ、怯んだ右の騎士に向けて乗り掛かっていた騎士を叩きつける。槍を奪い、最後に残った騎士へ投げつける。騎士は俊敏な動きで避けるも、眼前に迫った零のトンファーの一撃で沈黙する。
「中身は人か……」
零は兜の外れた騎士の死体を検める。苦悶の表情で絶命している人間が中に入っていたようだが、腐敗などは進んでいない。
「人間の死体なんて初めて見た」
死体を漁るのを止め、零は塔を登り始める。
―――……―――
尖塔の頂上から先程の蒼龍の戦いを眺めていた明人とトラツグミは、零の戦いっぷりに感心していた。
「ほらな、トラツグミ。俺の言った通り、あの人は完璧だろ?」
「確かに、明らかに素人の挙動ではありませんでした。それが、明人様があの方に執着する理由ですか?」
「まあそれも一つではある。でもあの人の魅力で、憎たらしいところはあんなもんじゃない。もっと近くで見ようぜ、トラツグミ」
明人はねだるようにわざとらしく両手を広げる。トラツグミは黙々と明人を横抱きにして、奥に見える塔へ飛ぶ。
零は大橋を渡り、巨大な城門の前に立つ。どこからともなく零の身長ほどもある大きな兎が現れ、零へ敵意を向ける。
「血の気の多いウサちゃん」
飛びかかってきた兎を躱し、腹にトンファーを叩き込んで気絶させる。そして杭が兎の背中を破り、凍りつかせる。
「さよなら」
そして兎を湖へ放り投げる。
「……。これだけの城をどうやって……」
零は城門を押し開き、中へ入る。薄暗い廊下を零は歩き、機械仕掛けの巨大な門の前に辿り着く。
「ん?何かしらの条件があるってことかな……」
来た道を引き返し、廊下から繋がる部屋に片っ端から入っていき、食堂のゴミ箱から鍵を拾い上げる。
「古い鍵……どう考えてもあれを開けるためのものじゃない」
鍵の使える場所を探して彷徨っていると、鍵の掛かった古い扉を見つけ、鍵を使って開く。扉を開けると、そこは湖が見える広場だった。
「収穫無し。こうなったらここから上に上がるか……」
そう呟いていると、零は湖が少し膨らんでいるように感じた。目を凝らす。先程のバハムートのように、水面を突き破って巨大な二足歩行の兵器が現れ、広場に着地する。逆に折れた特徴的な脚部と、翼のようなヒレのパーツが二つ、腕のようについていた。兵器は上半身をもたげ、金属の軋む音を咆哮のように発する。
「これは……」
ヒレの付け根にあるバルカンが火を噴き、零は猛烈な速度の後ろ歩きで後退し、更に方向転換して壁を走り避ける。兵器は続けて口の装甲を開き、炎のレーザーを発射する。城壁が燃え上がり、爆発する。零は広場に着地する。
「(これを上手く使えば、あそこの扉を無視して奥へ行けるかも……)」
そう思っていると、兵器の頭部から映像が投影される。
「来須さん」
そこに映るツインテールの少女を見て、零は呟く。
『おはよう、零さん』
来須は微笑む。
『これはね、水陸両用二足歩行戦車・蒼龍だよ。シフルを試験的に使った、人類初の巨大兵器さ。ロマンあるでしょ?』
上機嫌に話しかけられるが、零は仏頂面で黙っている。
『脚部、そして多目的ロングペイロードの付け根にあるバルカンは怨愛の炎が詰まった特製ナパーム、そして頭部から発される熱線は怨愛の炎そのものを照射するぶっとび兵器なんだよねー!』
なおも饒舌に語る来須を前に、零は居眠りを始める。
『正直シフルの研究はまだまだ始まったばかりで、変換効率やどれだけ元のシフルを搭載してどれくらいのサイズに落とし込むかとか、色々苦労したんだけど……現状最高にバランスがいいのはこの蒼龍!この陣原は殆ど水没したからちょうどいいし、福岡は洞海湾から遠賀川、堀川と続いているし、川を辿ればだいたいのところに襲撃に向かわせられ……って、零さん聞いてる?』
その声で零は眠りから覚める。
「聞いてる聞いてる」
『まあとにかく!零さんはここで終わりだよ!』
映像は途切れる。蒼龍は歩を進める。
「何はともあれ、これの相手をせねばどうしようもない」
蒼龍が右のヒレを持ち上げ、零目掛けて振り下ろす。素早く左に動いて零は躱し、ヒレに飛び乗る。蒼龍は激しくヒレを振るうが、零は巧みな重心移動と、足を凍らせてヒレに張り付けることで耐える。蒼龍の背から多目的対戦車榴弾が発射され、零を掠めて飛び回る。飛んできた一発を後ろに仰け反ることで躱し、正面から来た一発をトンファーで弾く。左のヒレのバルカンを破壊し、蒼龍は零を振り払う。零は広場に三点着地し、次の挙動に入る蒼龍を見る。蒼龍は左のヒレを包むように展開された炎の刃を零へ振り下ろし、広場の石床を燃やす。零は再び右のヒレのバルカンのあったところまで飛び、トンファーの杭を叩き込んで穴を空け、そこに手を捩じ込んで無理矢理ヒレを引き千切る。ヒレを抱え、蒼龍の炎の刃と打ち合う。そして蒼龍の炎の刃を押し切り、蒼龍は倒れる。炎の刃が消えた左のヒレを抱え、零はハンマー投げの要領でぐるぐる回転し、城に向かって投げつける。城壁が豪快に崩れ、蒼龍は沈黙する。
「これでよし」
零は崩れた城壁から中に入る。ちょうど先程の機械仕掛けの扉の先を壊したようだ。零はまた行き止まりまで歩き、また同じように大きな門へ辿り着く。今度は容易に開き、その先にはまたもや大橋があった。零は橋を渡り、高い塔の麓に着く。正面の扉を開き、中へ入る。塔内部は城よりも豪華な、白を基調とした装飾がなされていた。その装飾と同じ純白の鎧に身を包んだ騎士が三人現れ、更には二足歩行の小型兵器も複数現れる。
「……。生気は感じられないけど、意思はある……」
騎士は自身を覆い隠せるほどの巨大な盾と、自身の二倍はある槍を構えて零へにじり寄る。小型兵器は前腕部にマウントされたマチェットを掴み、軽快に零へ接近する。最接近した一体が零へマチェットを振り下ろすが、零は素手でそれを受け止める。
「いい包丁だ」
力を込めてへし折り、瞬時に組み伏せて、小型兵器のもう片方の腕にマウントされたミニガンを奪い取り、小型兵器の頭を砕く。ミニガンを発射し、小型兵器は次々とスクラップになっていく。騎士が接近を終え、槍で攻撃してくる。一番手前にいる騎士目掛けて小型兵器を叩きつける。盾に砕かれるが、頭に飛び乗り、そのまま首を振らせて槍を他の騎士にぶつけ、怯んだ右の騎士に向けて乗り掛かっていた騎士を叩きつける。槍を奪い、最後に残った騎士へ投げつける。騎士は俊敏な動きで避けるも、眼前に迫った零のトンファーの一撃で沈黙する。
「中身は人か……」
零は兜の外れた騎士の死体を検める。苦悶の表情で絶命している人間が中に入っていたようだが、腐敗などは進んでいない。
「人間の死体なんて初めて見た」
死体を漁るのを止め、零は塔を登り始める。
―――……―――
尖塔の頂上から先程の蒼龍の戦いを眺めていた明人とトラツグミは、零の戦いっぷりに感心していた。
「ほらな、トラツグミ。俺の言った通り、あの人は完璧だろ?」
「確かに、明らかに素人の挙動ではありませんでした。それが、明人様があの方に執着する理由ですか?」
「まあそれも一つではある。でもあの人の魅力で、憎たらしいところはあんなもんじゃない。もっと近くで見ようぜ、トラツグミ」
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