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本編

3.道具屋にて

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 はあ、食った食った。異世界グルメ、堪能しました。腹も満ちたところで、さっき女将さんに聞いた道具屋に行ってみることにする。

「こんにちは~」

 挨拶しながら店に入ると、若い女の子が店番をしていた。

「いらっしゃいませ。そこの宿にお泊まりの旅人さん、ですよね。女将さんから話は聞いています。ツノウサギの素材と、魔石もお持ちなんだとか」

 あのモンスターの名前は、ツノウサギで合ってたのか。ま、地球のトカゲとかも結構見たまんまの名前だったりするし、そんなもんだよな。

「ええと、他にもいくつかあるんだけど、見てもらえるかな」

「はい、こちらに出していただけますか?」

 女の子に促されるまま、カウンターの横の机に収集品を並べていく。ちなみに、これらは一旦店の外でアイテムボックスから出して、借りてきた袋に入れてある。

「え、聞いていたよりずいぶん多いですね……手荷物もなかったって聞きましたけど、どうやってこんなに持ち運んでいたんですか? ……もしかして、アイテムボックスが使えるんですか⁉︎」

 げ、あっさり見抜かれちまった。でも、こんな田舎の子でもアイテムボックスの存在を知ってるってことは、そんなに特別じゃないのかも。
 一か八か、話してみるか。

「あ、うん、実はそうなんだ。内緒にしててくれるかな……?」

「はい、もちろんです。お客さんの秘密をよそで話したりしたら、商業ギルド参加店として失格ですから」

 ほっ、よかった。てか、ギルド制があるんだな。それなら冒険者ギルドとかもあるのかも。そのうち探してみよう。

「じゃあ、早速鑑定をお願いできるかな」

「はい、お任せください」

 そんなこんなで待つこと数分。女の子は興奮した様子で結果を伝えてきた。

「この魔石、暴れグマと赤イノシシのものじゃないですか! それにこっちのは鬼ヘビ……どうやって倒したんです? 他にお仲間さんがいるんですよね?」

 ああ、そんな名前だったのか、あのモンスター達。確かに結構強そうだったんだけど、魔剣の前じゃバターみたいにスパスパいけちゃったので、見掛け倒しで大したことないのかと思ってた。

「あー、拾ったりもしたからね。そんないいものだったとは! いや、ラッキーだ、うん!」

「そ、そうですか。そんなほっとかれることなんてないと思うんですけど、気にしないことにします。薬草や毒消し草も素晴らしい保存状態ですし、代金を払いきれるかどうか……いえ、こんないい物を見逃すわけには……必ず払いますので、少々お待ちください」

 女の子はそう言って、店の奥に引っ込んでいった。すぐ戻ってくると、隣にはよく似たおじさんが。お父さんかな?

「どうもどうも。なんでも、素晴らしい品をお持ちとか……あー、あー、これは確かに……大変恐縮なんですが、こちら、ギルド手形での買取ではいかがでしょう?」

 手形制度もあるのか。ま、そんな大変だったわけでもないから、万が一騙されたとしてもいいや。てか、こんなしっかり店を構えてて巨額の詐欺とか、逆に無理だろうしな。

「分かりました。ところで、手形って初めてなんですが、どこで換金できますか?」

「一番近い所なら、この村の西にある街の商業ギルド支部ですな。もちろん、他の街の支部でも大丈夫ですので」

 でかい取引が成立しそうだと思ったのか、親父さんはホクホク顔で教えてくれる。

「では、それで結構です」

「ありがとうございます! ぐ、ぐふふ! 失礼、こんな大きな取引は何年もなかったものでして……いやいや、商人冥利につきますな!」

 変な笑い方すんなよおっちゃん。でも、店番をやっていた女の子も目をキラキラさせて成り行きを見ている。そんなに嬉しいもんなのか。
 はからずも大ごとになってしまったが、上手くいってよかった。

 それからお茶を出してくれたので、商売のことについてなどをさりげなく色々聞き出す。
 もう十分かなと思ったところで切り上げ、握手をして店の外に出ると、もう暗くなりつつあった。

「ただいま戻りましたーー!?」

 宿屋に戻ると、なぜかあの女将さんがやたら際どい服を着て出迎えてくれた。

「あらぁ、お帰りなさい。よいご商談ができたんですってね! お祝い……させていただけるかしら」

 いつの間に聞いたんだ? ああ、話の途中、道具屋の親父さんが一瞬だけ席を外した時か……
 若干腰が引けながらも、せっかくなので歓待を受け入れることにする。
 それで、秘蔵の酒をお酌してもらいつつ、どうやって魔石を手に入れたのかとか、さっきの店でどんなやり取りをしたとかの話を、夜遅くまでして過ごしたのだった。
 ちなみに、女将さんは思ったより若かった。この宿は数年前に亡くなった両親から引き継いだそうで、まだ独り身らしい……いやいや、ごちそうさまでした。

【イヌイは セクシーな魅力 を身に付けた!】
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